5日の朝、神戸のホテルで目覚めたわたしは、JR新神戸駅に向かい、新幹線で小倉に帰りました。今日は、ブログ「笹野高史講演会のお知らせ」で紹介したイベントが開催されるのです。
台風18号の影響で延期も検討されましたが、笹野さんにお願いして、前日に北九州入りしていただきました。そのおかげで、なんとか無事に開催することができました。
11月18日、わがサンレーは、いよいよ創立50周年を迎えます。それを記念して、本年より「サンレー文化アカデミー」をスタートし、各種の文化事業・文化イベントを展開していくことになりました。ブログ「五木寛之講演会」、ブログ「ジュディ・オング講演会」で紹介したイベントに続き、第3回サンレー文化アカデミーは、俳優の笹野高史さんをお招きしました。
死を乗り越える映画ガイド あなたの死生観が変わる究極の50本
- 作者: 一条真也
- 出版社/メーカー: 現代書林
- 発売日: 2016/09/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『死を乗り越える映画ガイド』が販売されました
おかげさまで大好評でした
笹野さんに本をプレゼントしました
自分が大の映画好きであることを打ち明けました
映画についての想いを述べました
講演に先立って、サンレー本社の貴賓室で笹野さんとお会いしました。
まずは、わたしの最新刊『死を乗り越える映画ガイド』(現代書林)を贈呈させていただきました。笹野さんは「へえ〜、社長さんが書かれたんですか!」と興味深そうに手に取られ、パラパラと流し読みをされていました。同書の中には、ブログ「おくりびと」やブログ「海難1890」で紹介した映画をはじめ、笹野さんが出演された映画も取り上げられています。そして、最後にはブログ「裸の島」で紹介した新藤兼人監督の名作も登場します。
じつは今、某大手冠婚葬祭互助会と弊社のコラボで「裸の島」をリメイクしようかという話が出ています。そのこと笹野さんに申し上げると、「素敵なプランですね」と言って下さいました。
笹野さんが「キャスティングは考えておられますか?」と訊かれたので、わたしは「あくまでも希望ですが、『おくりびと』の本木雅弘さんと広末涼子さんのコンビに夫婦役をやっていただければ最高ですね!」と答えました。すると、笹野さんは「おお、けっこう若いですね!」と言われました。実現したら、ぜひ笹野さんにも出演していただきたいです。僧侶役で・・・・・・。
冠婚葬祭についても意見交換しました
終始にこやかな会談でした
人間性の素晴らしい方でした
笹野高史さんと
笹野さんとは、結婚式や葬儀についても語り合いました。わたしが「高倉健さんなどの俳優さんが亡くなってからしばらく経って死亡報道があるのは違和感があります。長いあいだ応援してきたファンからすれば、亡くなったその日に逝去を知って悲しみたいし、葬儀で焼香もしたいはずではないでしょうか」と申し上げると、笹野さんは俳優さんの立場からの考えをおっしゃいました。それは、じつに説得力のある話でした。また、笹野さんの人間性の素晴らしさを感じさせる内容でした。わたしは、ますます笹野さんのファンになりました。
講演会は、18時半から開催されました。
冒頭、わたしが登壇して以下のような主催者挨拶をいたしました。
「みなさん、こんばんは。株式会社サンレー代表取締役社長を務めております、佐久間でございます。本日は『第3回サンレー文化アカデミー 笹野高史講演会』にご来場いただきまして、誠にありがとうございます。この文化アカデミーは、が今年サンレー11月に創立50周年を迎えるにあたり、地域の皆様へこれまでのお礼の意味を込めて創設し、第1回は3月に五木寛之さん、第2回は7月にジュディ・オングさんをお迎えして、それぞれ講演会を行いました。そして本日は、第3回として俳優の笹野高史さんをお呼びいたしました」
それから、わたしは笹野さんについて以下のように紹介させていただきました。
「笹野さんといえば、『男はつらいよ』シリーズや『釣りバカ日誌』シリーズなど数多くの映画にご出演されています。真面目な役からコミカルな役まで、また近代劇から時代劇まで何でもこなす、『日本一の名脇役』と言っていいでしょう。特に、わたしが印象深いのは、8年前にアメリカのアカデミー賞外国語映画賞を受賞した『おくりびと』の火葬場の職員さん役です。笹野さん演じる男性が死について語るシーンは今でも脳裏に強く残っています。その男性は『死は門』であり、自分は『門番』であると言いました。そして故人1人1人に『いってらっしゃい、また会おうの』と声をかけて点火するのです。実際に死者を送る者の言葉として重みがありました。笹野さんは、テレビでもNHK大河ドラマに何度も出られているほか、最近ではバラエティ番組に登場する機会も増え、CMでも活躍されています。笹野さんは『日本一の名脇役』どころか『日本一の名優』です!」
そして、わたしはこの日の講演テーマに言及しました。
「今日の講演のテーマは『待機晩成』ですが、待機晩成のタイキが大きな器ではなく、待つ機会の待機というのがミソですね。これまで苦労された人生についてのお話は、ご来場の皆様方にも大いに参考になると思います。どうぞ、最後までじっくりとお聞きください。
なお、この文化アカデミーの第4回は来年1月28日に北九州芸術劇場で『古事記』の舞台公演が決まっておりまして、お手元の袋の中にチラシを入れております。今後もサンレー文化アカデミーをよろしくお願いいたしまして、主催者挨拶といたします」
登壇した笹野さんは盛大な拍手で迎えられました。
冒頭、「わたしは68歳なのですが、よく見た目より若いじゃないかと言われます。高校3年生のときから年上に見られ、今でも年上に見られます」と言われ、満場の聴衆の笑いを誘っていました。わたしはつねに実年齢よりも年上の役を演じた名優・笠智衆を思い浮かべました。笹野さんは、「最近はけっこう忙しいです。人生のピークかもしれません。本当はもっと体力ある若い時期にピークを迎えたかった」と言われていました。
国民的人気者だけあって、超満員でした!
わたしも聴かせていただきました
笹野さんは、淡路島の「笹野酒造」という造り酒屋の生まれだそうです。
幼くしてお父さまを亡くされ、11歳のときにお母さまも亡くされたそうです。
両親を早くに亡くされたために、「大きくなったら何になるの?」と聞かれることもなく、笹野少年は大きくなったら、みんな何かになるものだということも知らなかったそうです。しかし、映画好きだったお母さまの影響で、「映画俳優になろう」と思ったとか。
少年時代の思い出を話す笹野さん
聴きながら、メモを取らせていただきました
どうすれば映画俳優になれるのかわからなかった笹野少年は、少年雑誌の通信販売で見つけた『映画俳優になる方法』という本などを求めたりもしたそうです。そして、日大芸術学部に映画学科というものはあることを知り、入学します。その後、自由劇場のメンバーとなりますが、佐藤B作さんや柄本明さんらと知り合います。
その後、笹野さんは「人生の師」ともいえる渥美清さんに出会ったのでした。
渥美清さんの思い出を語る笹野さん
渥美清さんは、いわゆる「ワンシーン俳優」だった笹野さんに「兄さん、良いシーンだけパパッと撮って、サッと帰れるなんていいねぇ」と言ったとか。それは不遇の若手役者に対する「文句を言わず、ふて腐らず、がんばれ!」といった激励のメッセージでした。
その励ましを胸に、笹野さんは舞台「上海バンスキング」や「男はつらいよ」のレギュラーなどを経て、出世作である「武士の一分」に出演します。この作品で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞をはじめ、数多くの賞を受賞し、笹野さんの運命は激変します。
「天地人」の思い出を楽しそうに語る笹野さん
その後は売れっ子俳優となり、NHK大河ドラマの「天地人」では秀吉を演じました。
秀吉の臨終シーンでは、北政所役の富司純子さん、淀君役の深田恭子さん、石田三成役の小栗旬さんらに囲まれ、NHKならではの豪華キャスティングに感無量だったとか。
笹野さんは小学生のときに教科書で見た秀吉の顔が自分によく似ていたことから、「日本広しといえども、秀吉を演じるのは俺しかいない」と思っておられたそうです。わたしも「世界広しといえども、『儀式論』を書けるのは俺しかいない」と思っていましたので、笹野さんの言葉が胸に沁みました。
「おくりびと」のオスカー獲得に涙したエピソードを披露
そして、あの「おくりびと」に出演して、アカデミー賞授賞式から戻った滝田洋二郎監督や本木雅弘さんからオスカーを見せられ、手に取ったときは感激のあまり涙が出たそうです。「おくりびと」のリハーサルでは、本木さんの納棺夫の作法や所作があまりにも完成されていたので、それに感動するとともに、「この映画は成功する」と確信されたといいます。
「祈りは大切です! 願いは通じます!」と訴える笹野さん
最後に、笹野さんといえば、好感度ナンバーワンの超人気CMであるau「三太郎」シリーズで花咲爺に扮されました。最初に「三太郎」のCMを見たときに非常に気に入られ、ツイッタ―で「花咲爺の役なんかで出してもらえないかな」とつぶやかれたそうです。それを、たまたまauのお偉いさんが見て、夢が実現したのだとか。笹野さんは「祈りは大切」「願いは通じる」と訴えておられました。笹野さんは「花咲爺が無理なら、こぶとり爺さんでも、おむすびころりんの爺でもいいと思っていました」。それを聞いたわたしは、「ならば、『三太郎』シリーズの次は『三爺』シリーズも面白いな」と思いました。いかがですか、auさん?
笹野さんは身振り手振りや豊富な声色も含め演技力満点で、わたしがこれまで聴いたあらゆる講演の中で最高の講演でした。満場のお客さまもみなさん満足されたことと思います。
笹野さん、素晴らしい御講演をありがとうございました!
*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。
2016年10月6日 佐久間庸和拝