インド視察を振り返って

東京に来ています。朝から熊本大地震の報道がすごいです。
このたびの地震で犠牲になられた方々のご冥福を心よりお祈りいたします。
全互連の西尾事務局長からメールがあり、熊本にある加盟互助会は被害がなかったそうです。また、熊本に本社を置くセルモさんの被害も小さかったと知り、ひとまず安心しました。


研究会の冒頭で講話をしました



10時からは神谷町の互助会保証(株)で「アジア冠婚葬祭業国際交流研究会」が開催されました。数日前まで全互協が海外視察研修としてニュージーランドに行っていたのですが、日冠の小泉社長やセレモニーの志賀社長など、ニュージーランド帰りのメンバーも参加していました。彼らはインドに行った後にニュージーランドにも行くなんて元気ですね。今回の研究会では、そのインド視察の総括が行われ、冒頭に副座長であるわたしが講話をしました。


最初にインドの結婚事情に言及しました



わたしは、最初に以下のような話をしました。
インドの結婚事情には深刻なものがあります。というのも、年端もいかない15歳以下の少女が年上の男と強制的に結婚させられているのです。世界保健機関が正式に発表した数字によれば、15歳以下で結婚を強要される少女たちは、なんと毎年1420万人だといいます。この低年齢結婚はインドを中心に、中東やアフリカにも多く見られます。これらの地域では、8歳から15歳の少女が年上の男性と強制的に結婚させられているのです。そして、多くの少女が結婚を理由に教育の機会を奪われています。早過ぎる出産の強制や、それによる死亡例 も多く報告されています。日本のように、七五三や成人式や結婚式で女の子が綺麗な着物を着ることができるとは、なんと幸せなことでしょうか。わたしたちの仕事は、日本人の幸せを支えているのです」と述べました。


ガンジス河の体験を話しました



それから、ガンジス河の視察についても述べました。火葬場からガンジス河に昇った朝日がよく見えました。その荘厳な光景を眺めながら、わたしは「ああ、SUNRAYだ!」と思いました。太陽の光はすべての者を等しく照らします。そんな社名を持つわが社も、「人間尊重」の精神であらゆる人たちを平等に弔うお手伝いをさせていただきたいと心の底から思いました。


「洞窟から儀式が生まれた」と述べました



最後に、若き日のゴータマ・シッダールタが修行した洞窟である「留影窟」の話をしました。ここは、ブッダガヤ郊外にある前正覚山の中腹(ふもとから坂道を約20分)にある小さな洞窟です。わたしはブッダのみならず、空海をはじめとした古今東西の宗教家たつがいずれも洞窟で修行し、身心変容体験をしたことに触れ、洞窟こそが、人類の変身を可能にする原空間にほかならなかったと述べました。それは、人間が生まれ出てくる「母胎」や「産道」のメタファーでした。先日、ブログ「普天間宮」で紹介した普天間基地のすぐそばにある普天間宮の奥宮が祀られている洞窟(ガマ)の中に入ってみました。もう、言葉にできないほどの感動をおぼえました。「儀式も神話も哲学も芸術も宗教も、すべては洞窟の中から始まった!」という直観を得ました。次回作の『儀式論』(弘文堂)では「空間と儀式」という一章を設け、洞窟における儀式の発生について述べたいと思います。この「洞窟から儀式が誕生した」という話にはみなさんも興味を抱いて下さったようです。


講話を行う山田委員



わたしの講話の後は、国立歴史民俗博物館民俗研究系准教授の山田慎也委員が「インドのヒンドゥー教と葬送儀礼」と題する講話を行いました。山田委員は「ヒンドゥーという用語」「日常生活としての宗教」「人生と解脱」「葬儀の過程」「喪の期間」「インドの生活とヒンドゥー教」というテーマごとに、非常にわかりやすく説明して下さいました。こういうプロの研究者の話が聴けるのも、この研究会の魅力です。


今後の研究会の在り方について発言しました



それから、「今後のアジア冠婚葬祭業国際交流研究会について」という議題が出ました。
わたしは、この日欠席されていたラックの柴山社長の「もう一度、インドに行きたい。それも南インドに行きたい」というメッセージを伝えた後、自分の意見を言いました。
それは、年に一度の海外視察の他に、ぜひ国内の視察も行いたいというものでした。かろうじて血縁、地縁が生き残っている東北や沖縄などを視察して、儀式を重んじる土地の文化環境を知る必要があると訴えました。特に、恐山やムカサリ絵馬や死者人形といった土着的な死者供養を研究したいです。そこに、日本的グリーフケアの核心がるように思うからです。日本を知らずして、アジアの冠婚葬祭研究は完成しません!


講話を行う比良理事長

インドの冠婚葬祭について説明して下さいました



その後、在日インド商工協会の比良竜虎理事長が来られて、「インドにおける冠婚葬祭の事情」と題する講話を行いました。インドから日本に帰化されたという比良理事長は、「インド国概況」「インドの魅力」「インドの主な宗教」「ヒンズー教」「イスラム教」「キリスト教」「シーク教」「ゾロアスター教」「伝統的なヒンズー教における結婚式次第と意味」「伝統的様式から変貌するインド結婚市場」「拡大するインド婚礼市場」「急激に拡大するインド中間層人口」「中国が狙うインド婚礼市場」「伝統的なヒンズー教における葬儀の次第と意味」「インドにおける葬儀費用予測」といったテーマに沿って話して下さいました。


よく整理された素晴らしい資料でした

非常に勉強になりました!



その資料はよく整理されていて、素晴らしい内容でした。
たとえば、宗教なら、各宗教における横軸に「儀式」「内容」「列席者」「費用」、縦軸に「誕生」「成人」「妊娠」「死」といったように明確なマトリックスとなっており、インドの儀式文化が一目でわかるようになっています。これは『儀式論』を書く上でも重要な資料になると思いました。ということで、この日の研究会も非常に充実した内容でした。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2016年4月15日 佐久間庸和