九国大で孔子を語る

ブログ「九州国際大学の客員教授に就任しました」に書いたように、わたしは今年から九州国際大学九国大、KIU)の客員教授となりました。「教養特殊講義」を担当するのですが、その第1回目の講義が8日の16時20分から行われました。


九州国際大学のキャンパスで



この日は、学年を超えた受講希望者を対象に「孔子研究」の講義を行いました。
わたしは北陸大学の客員教授ですが、同大学が遠方にあるため、ずっと講義を行っていませんでした。久々に大学の教壇に立ち、新鮮な感覚を覚えました。
なかなか面構えの良い学生さんたちが受講してくれました。


冒頭、堀田学長から挨拶がありました

野村副学長からプロフィールを紹介していただきました



冒頭、九国大の堀田泰司学長が挨拶をされ、「地元を代表する企業の経営者として、佐久間先生を本学の客員教授に迎えることができ、喜んでいます。ぜひ、実際の経験に基づいた貴重なお話を学んでいただきたいと思います」と述べられました。続いて、野村政彦副学長によるプロフィール紹介がありました。過分なご紹介を受けて恐縮しつつ、わたしは九国大での客員教授活動をスタートしました。


みなさん、はじめまして!

「世界の四大聖人」について

孔子を学ぶ理由

人類社会の流れを俯瞰する



わたしは、パワーポイントを使って講演しました。
まず、孔子の人物紹介や世界史的位置づけから説明しました。
孔子は、紀元前551年に中国の山東省で生まれました。
ブッダとほぼ同時期で、ソクラテスよりは八十数年早い誕生でした。
孔子ブッダソクラテスにイエスを加えて、世界の「四大聖人」です。
孔子は学問に励み、政治の道を志しましたが、それなりのポストに就いたのは50歳を過ぎてからでした。試みた行政改革が失敗に終わって、「徳治主義」という自らの政治的理想を実現してくれる君主を求めて、諸国を流浪したのです。
春秋戦国時代の末期であった当時は、古代中国社会の変動期でした。
つねに「天」を意識して生きた孔子は、混乱した社会秩序を回復するために「礼」の必要性を痛感し、個人の社会的道徳としての「仁」が求められると考えました。
多くの弟子を教えた孔子は、74歳で没します。
死後、彼の言行録を弟子たちがまとめたものが『論語』です。
そして、なぜ孔子を学ぶのか、その理由を説明しました。


現代日本の問題点について

人間と人間学について



それから現代日本に話題を移し、「無縁社会」の話をしました。年間に3万2000人が無縁死し、3万人が自殺する社会に日本がなってしまった大きな原因は、血縁と地縁が弱まったことです。そして、その結果、あらゆる人間関係が希薄化しました。
わたしたちが生きる社会において、最大のキーワードは「人間関係」だと思います。
社会とは、つまるところ人間の集まりです。そこでは「人間」よりも「人間関係」が重要な問題になってきます。そもそも「人間」という字が、人は一人では生きてゆけない存在だということを示しています。人と人との間にあるから「人間」なのです。
だからこそ、人間関係の問題は一生つきまといます。  


孔子の偉大さを訴える

孔子にとっての人生の価値

論語について

五倫五常について



わたしは、人類が生んだあらゆる人物の中で孔子をもっとも尊敬しています。
孔子こそは、人間が社会の中でどう生きるかを考え抜いた最大の「人間通」であると確信しています。その孔子が開いた儒教とは、ある意味で壮大な「人間関係学」です。
孔子は「仁」「義」「礼」「智」といった人間の心にまつわるコンセプト群の偉大な編集者でした。彼の言行録である『論語』は千数百年にわたって、わたしたちの先祖に読みつがれてきました。意識するしないにかかわらず、これほど日本人の心に大きな影響を与えてきた書物は存在しません。特に江戸時代になって徳川幕府儒学を奨励するようになると、教養の中心となりました。そうして儒学は、武士階級のみならず、庶民の間にも普及したのです。


八犬伝が伝えた孔子の8つのメッセージ



そして江戸時代の日本において、『論語』で孔子が述べた思想をエンターテインメントとして見事に表現した小説が誕生しました。滝沢馬琴が書いた『南総里見八犬伝』です。江戸の大ベストセラーになりました。その中に登場する八犬士が持っていた玉には、それぞれ「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」の文字が浮かび上がりました。
この8つの文字こそ、孔子儒教思想のエッセンスとしてまとめたコンセプト群であり、わたしたち日本人が最も大切にした「人の道」のキーワードでした。


まずは「仁」について説明しました

「義」では実際の事件を取り上げました

「礼」についての大いに語りました

「忠」ではブランド・ロイヤリティに言及



今日は、「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」についての話をしました。
「義」の項目では、ブログ「サンダーバード」に書いた忌まわしい事件のことを話しました。「礼」の項目では、孔子は高貴な人にだけでなく、障害者や高齢者などをはじめ、あらゆる人に礼を尽くしたことを述べました。そして、「礼」とは「人間尊重」であると訴えました。「忠」の項目ではブランド・ロイヤリティに言及し、「忠誠」を尽くすのはあくまで“人から人へ”であると訴えました。


学生さんから質問を受けました

鋭い質問に考えさせられました

女子学生からも質問が・・・・・・

質問には真摯にお答えしました



講義の後は、質疑応答です。学生さんたちから「孔子の教えをサンレーの経営にどのように生かしているのか?」「学生たちに最も伝えたいことは何か?」「無縁社会の原因をどのように考えるか?」「いつ、孔子の思想と出合ったのか? ドラッカーとの出合いとどちらが先か?」「どうして、孔子ドラッカーの共通点を発見できたのか?」などの質問が相次ぎました。わたしは、それらの問いのひとつひとつに真摯に答えさせていただきました。
今日は初めての講義でしたが、学生さんは想像以上に真剣でした。
中には社会人の方もおられ、実際に起業している人もいるそうです。
今日の講義が、彼らがこれから生きるうえで何かのヒントになれば嬉しいです。久しぶりに教壇に立ちましたが、いいものですね。本やブログを書くのもいいですが、やっぱりライヴは最高です。どうか、孔子からのメッセージが彼らの人生を豊かにしてくれますように・・・・・・
次回の講義は29日になります。今度のテーマは「ドラッカー研究」です。
講義を終えたわたしは、八幡にある九国大を後にして、「新北九州を考える会」が開かれている小倉の松柏園ホテルへと急ぎました。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2014年10月8日 佐久間庸和