国際情報同好会講演

22日の九州は、非常に激しい雨が降り続けました。
23日の朝には晴れましたが、わたしは午前10時から講演を行いました。
北九州市内在住の高齢者による自主的な年長者の勉強会である「国際情報同好会」の主催でした。場所は北九州市立年長者大学校穴生学舎です。


穴生学舎の前で



穴生学舎を訪れたのは初めてですが、公式HPには以下の概要が書かれています。
北九州市は、全国平均を上回る速さで高齢化が進んでおり、平成24年度で高齢化率は、25.5パーセントと4人にひとりという高齢社会になっています。このため本市においては、高齢化対策を市政の重要課題として取り上げ、市民一人一人が人間として尊重され、高齢者だけでなく若者も含めた全ての人々に魅力のある『高齢化社会モデル都市』を実現するため『北九州市高齢化社会対策総合計画第二次実施計画』に基づき、現在、様々な施策が取り組まれています。なかでも約9割を占める元気な高齢者が、多くの仲間とともに趣味やボランティア活動等の社会参加をとおして、いつまでも生き生きと輝いて過せるよう、『生きがい対策』の充実は、予防的福祉の観点からも、特に重要なものとなっています。『穴生学舎』はこうした生きがい対策の一環として、増大かつ多様化する高齢者の学習ニーズに応えるため『周望学舎』につづき、平成6年9月にあらたな福祉と生涯学習の拠点として西部地区に設置されました。『穴生学舎』では“生きがい・健康・ふれあい”を基本理念に21世紀の自立した高齢期の生き方を学ぶとともに、高齢者の活力を社会に還元する仕組みとして、これまで培ってきた豊富な経験や技能の活かし方を学び、ボランティア活動を通じて高齢者の社会参加を促進する事業を推進しています」


穴生ドーム(左)と穴生学舎(右)



穴生学舎を訪れたのは初めてですが、隣接する「穴生ドーム」は2011年11月1日に訪れました。ブログ「グラウンド・ゴルフ大会」に書いたように、わが社の「グラウンド・ゴルフ決勝大会」が開催されたのです。ブログ「シルバーカラオケ大会」で紹介したイベントと並ぶ、サンレー創立45周年記念のイベントでした。あのときは北九州市内各地、またその周辺地域において全19回にわたって予選会を行い、合計で2000名以上の方々が参加されました。お元気な高齢者の方々の姿を見て、わたしは「人は老いるほど豊かになる」と思ったものでした。


穴生学舎で講演しました

みなさん、おはようございます!



そして、穴生学舎で開かれた本日の講演テーマはも、「人は老いるほど豊かになる」でした。もともとは拙著『老福論』(成甲書房)のサブタイトルですが、わたしは、もう何百回もこのテーマで講演を行ってきました。


老い」の価値について語りました



老い」は人類にとって新しい価値です。自然的事実としての「老い」は昔からありましたし、社会的事実としての「老い」も、それぞれの時代、それぞれの社会にありました。しかし、「老い」の持つ意味、そして価値は、これまでとは格段に違ってきています。これまで「老い」は否定的にとらえられがちでした。


人は老いるほど豊かになる


仏教では、生まれること、老いること、病むこと、そして死ぬこと、すなわち「生老病死」を人間にとっての苦悩とみなしています。現在では、生まれることが苦悩とは考えられなくなりました。でも、まだ老病死の苦悩が残ります。わたしたち人間が一個の生物である以上、老病死は避けることのできない現実です。日本人の「こころ」には仏教の他に、神道儒教も強い影響を与えています。「老い」とは、神道では神に近い翁となることであり、儒教では人間的完成の過程です。それならば、いっそ老病死を苦悩ととらえない方が精神衛生上もよいし、前向きに幸福な人生が歩めるのではないでしょうか。


老い」の豊かさについて述べました



すべては、気の持ちようであり、苦悩や不幸はすべて人間の心が生みだすものです。ですから、これからは「人は老いるほど豊かになる」という魔法の呪文をいつも心の中で唱えて下さいと訴えるのです。すると、必ず、そうなるから不思議です。
あと二つ、魔法の呪文をみなさんにお伝えしました。「おめでとう」と「ありがとう」です。みなさん、とても真剣に聴いて下さいました。みなさんの想いが、わたしの心にも響きました。老人大国である日本、その中でも最も高齢化が進む北九州市において高齢者の方々に「老い」の豊かさについてお話することは自分の大きな使命だと思っています。


超高齢社会をどうとらえるか

高齢者をとらえなおす



それから、北九州市の未来についてもお話ししました。わたしは、全国の独居老人には、どんどん北九州に移住してほしいと真剣に願っています。もともと、わたしは北九州市を「高齢者福祉特区」にするべきだと訴え続けてきました。


禍を転じて福となす

強みを生かし、逆転する



近代工業社会はひたすら「若さ」と「生」を謳歌し、讃美してきました。
しかし、高齢化社会では「老い」と「死」を直視して、前向きにとらえていかなければなりません。今こそ幸福な「老い」と「死」のデザインが求められているのです。
日本は世界でもっとも高齢化が進行している先進国ですが、その中でも北九州市はもっとも高齢化が進行している政令指定都市です。つまり、北九州市は世界一の超高齢化都市と言っても過言ではないでしょう。高齢化が進む日本の諸都市、世界各国の大都市にとって北九州市とは自らの未来の姿そのもの。ぜひ、高齢者が多いことを「弱み」ではなく「強み」ととらえていくべきです。かつて、公害都市から環境都市へと見事に変身した北九州市なら、世界一の高齢者先進都市に生まれ変われるはず。「禍転じて福となす」の発想で、人が老いるほど豊かになるという世界一の「老福都市」をつくりたいものですね。


たくさん質問を受けました

マイクがないので聴き取りにくかったです



講演は10分の休憩を挟みましたが、前半の終了後に質問が相次ぎました。
今日はマイクなしだったので、わたしも声を張り上げましたが、質問をされる高齢者の声も聞き取りにくく、そのうえ誰かが質問しているときに私語が多くて、ますます聴きにくかったです。このような講演にマイクが必要なことは常識ですが、他の人が質問をしているときに私語をするマナーの悪さには悲しくなりました。東京都議会のセクハラ・ヤジもいただけませんが、講演での私語も良くないですね。あと、ふだんは講演の最中にもバンバン質問するというので驚きました。それでは、話が前に進まないでしょう。大学のゼミではないのですから、まずは講師の話を先に聴き、最後に質問をされたほうが良いと思います。


サンレーの高齢者イベント

長寿祝いについて

自分の葬儀を想像する

「隣」とは何か



後半は、「人は老いるほど豊かになる」というコンセプトに基づく「老福都市」のモデルであるサンレーグランドホテルについて説明しました。これはいわゆる高齢者複合施設で、セレモニーホールと高齢者用のカルチャーセンターなどが合体した前代未聞の施設として話題になりました。さらにわが社が展開している高齢者イベント、長寿祝いなどについて話し、「自分の葬儀を想像する」ことについて述べました。それから「隣人祭り」の経緯や可能性を語り、最後は「隣とは何か」についてお話しました。後半終了後もいつくつかの質問が出ましたが、教養と常識にあふれ、質問のマナーも素晴らしいものばかりでした。



ブログ「座右の銘は『人間尊重』」でも紹介した「財界九州」6月号の記事を読まれたという男性もおられ、「出光佐三の哲学を象徴する『人間尊重』が佐久間社長の座右の銘であり、サンレーさんのミッションにもなっていることを知り、感銘を受けました。心より敬意を表します。実際、紫雲閣の方々のサービスに触れると、その精神が浸透していることを感じます」と言われ、非常に感激しました。また、毎日新聞を購読されているという女性の方からは「『ハートフル通信』をいつも愛読しています。今日は、また素晴らしいお話を直に聴くことができて感謝しております」と言われ、こちらも大変感激いたしました。



しかしながら、ちょうど時間となって終わりというときに、最後に手を挙げた人がいました。もう時間を過ぎていましたが、これが質問する態度もなっておらず、その内容もじつに下らなく、失礼千万だったので、不愉快な気分になりました。ブログ「仏教連合会パネルディスカッション」で紹介したように、つい先日もキレたばかりだったので、今日はなんとか自制しました。それで、主催者との昼食会も断って帰りましたが、謝礼も全額お返しました。



わたしは講演の中で香典辞退に触れ、「香典を辞退するというのは、あなたとは縁を切ります」という意味になるといった説明をしたのですが、わたしは生まれて初めての謝礼辞退をしました。ということで今日は完全ボランティアでしたが、とにかく葬儀という営みを貶めるような言動は看過できません。本当はセクハラやじを認めて東京都議会の塩村議員に謝罪した鈴木議員のように謝ってほしかったのですが、まあ、そういう人は自分が失礼なことを言ったことさえわからないのでしょうね。もっと詳しく書けば大反響になると思いますが、個人攻撃が目的ではないので、このへんにしておきます。




国際情報同好会のメンバーは全員60歳以上で、平均年齢約70歳(最高88歳)だそうです。みなさん素晴らしい方々ばかりでしたが、中に非常識な人もいて、それが幹部の方というのでちょっと驚きました。これまで、その方がどのような企業に勤め、どのような人生を歩んでこられたのかは知りませんが、人に質問するマナーも知らないようでは悲しい人生ですね。今日は「人は老いるほど豊かになる」という話をしましたが、この世には「いくら老いても豊かにならない」人もいるのだという事実を知り、大変良い勉強になりました。自分が学ばせていただいたのですから、謝礼をお返しするのは当然ですね。(笑)


講演終了後穴生学舎のエントランスで



今日は1時間半以上、マイクなしで大声でしゃべったので、喉がカラカラになりました。
終了後、わたしは車で北九州空港へ移動し、スターフライヤーに乗って東京へ飛びました。翌日は、ブログ「人生儀礼オープンカレッジ」で紹介した國學院大學オープンカレッジの第二回「生まれる:誕生と生育」に参加します。また、ブログ「宇宙葬」で紹介したエリジウム・スペース社のトーマスCEOとの初対面が予定されています。さらに、25日にはパシフィコ横浜で開催される「フューネラルビジネスフェア2014」のセミナーで、わたしが講演させていただくことになっています。本当に目の回るような慌ただしさですが、「天下布礼」の使命を果たすために頑張ります!


老福論―人は老いるほど豊かになる

老福論―人は老いるほど豊かになる

*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2014年6月23日 佐久間庸和