誕生と生育

24日の14時半から、國學院大學の渋谷キャンパス「常磐松ホール」において第2回「國學院大學オープンカレッジ特別講座〜人生儀礼への取組みをより深く知る」が開催されました。ブログ「國學院大學オープンカレッジのお知らせ」で紹介した講座で、一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会と互助会保証株式会社の共催です。


國學院大學の正門前で内海さんと

特別講義が行われた常盤松ホールの前で



ブログ「人生儀礼の世界」で紹介したように、第1回の特別講義は5月20日に開催されました。テーマは「豊かに生きる:人生儀礼の世界」で、國學院大學教授の石井研士先生によって、1時間半にわたり中味の濃い講義を受けました。石井先生の講義は、「お祝いの文化」を再考するものでした。前回同様、今回も「出版寅さん」こと内海準二さんが参加してくれました。内海さんは『決定版 冠婚葬祭入門』(実業之日本社)、『葬式は必要!』、『ご先祖さまとのつきあい方』(ともに双葉新書)など多くの拙著を編集していただいたエディターです。


宗教民俗学者の田口氏が講義しました



今回の第2回目のテーマは「生まれる:誕生と生育」で、宗教民俗学者の田口祐子氏が講義を行いました。田口氏はもともと心理学や福祉が専門だったそうです。今日は「儀礼とは?」「子どもに関する儀礼の意義〜いま・むかし〜」「現在の儀礼の実態からみえてくること」の3つのポイントで講義を進めました。


「子どもに関する儀礼」について語る田口氏



田口氏は「儀礼とは、社会への道筋を示すもの」と述べ、「子どもに関する儀礼の意義〜いま・むかし〜」を説明しました。「むかし」は以下の通りです。
・神からの加護  →  高い乳幼児死亡率
・社会的承認   →  社会の秩序の維持、バランス
・霊魂の更新   →  「生まれ変わる」「生命力の更新」



また、子どもに関する儀礼の意義における「いま」は以下の通りです。
・神からの加護  →  乳幼児死亡率は劇的に低下したが・・・
・家族の確認   →  「社会的承認」に代わるもの?
・霊魂の更新については、乳幼児期と霊魂をつなげて考えることができなくなった。
・現在の多くの子どもに関する儀礼について「記念に残す」「思い出作り」という意義は大変大きいものとなっている。


「子ども写真館」について動画で紹介



田口氏によれば、現在の子どもの儀礼の形・内容に影響を与えているものとして、儀礼産業の存在、働きかけがあるそうです。特に七五三が顕著な例で、子ども写真館の存在が現在の七五三全体を覆うほどとのこと。その影響力は大変なものだというのです。
田口氏は、「子ども写真館」についてのニュース動画を流しました。そして、現代人は儀礼を通じて伝統や社会とのつながりを希求していると指摘しました。「きちんとした」「ちゃんとした」「まちがいのない」儀礼の実施を求めているというのです。そして、儀礼によって「お墨付き」をもらうことで、人生や社会における自己の再確認や確かな位置づけが可能になるというのです。それは例えば、親としての自分に対する再確認といったようなことです。


当別講義のようす



興味深かったのは、新しい儀礼の事例として「二分の一成人式」が紹介されたことでした。
これは10歳になったことを祝う儀礼で、東京都内の小学校が10年ぐらい前から行い、今では全体の半数が実施しています。小学4年の国語の教科書に登場するそうで、10年後には大人になる子どもたちに「大人って何だろう」「大人になるためには?」などのテーマについてみんなで考え、多くは「親への感謝」ということに気づくそうです。「二分の一成人式」の子どもたちは、檀上で1人ずつ発表したり、歌にして合唱したりするといいます。このように「二分の一成人式」とは成長儀礼であり、かつ家族儀礼なのです。田口氏は「学校主導というのが珍しい」と述べていました。


儀礼産業の影響について話しました



講義の終了後は、司会進行を担当された國學院大學大学院博士課程(後期神道学・宗教学専攻)の松本昌子氏との質疑応答の時間が設けられました。松本氏は水天宮などで行われている安産儀礼について質問し、それに対して田口氏が答えました。1時間半にわたって、田口氏は「人生儀礼とは?」についての考えを述べましたが、講義を聴きながら、わたしはブログ『暮らしの中の民俗学3 一生』で紹介した本の内容を思い出しました。
最近、東京都議会で女性議員に対して「産めないのか」という心ない野次が飛ばされました。セクハラとして大問題になりましたが、わたしたちはもっと女性が子どもを産み、育てることの意味を考えなければいけないように思います。次回の特別講義も楽しみにしています。


次回の特別講義も楽しみです!



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2014年6月24日 佐久間庸和