わたしは、これまで多くの言葉を世に送り出してきました。
この際もう一度おさらいして、その意味を定義したいと思います。
今回は、「生きる覚悟・死ぬ覚悟」という言葉を取り上げることにします。
政治・経済・法律・科学・医療・哲学・芸術・宗教などなど人類の営みにはさまざまなジャンルがありますが、それらの偉大な営みが何のために生まれ、発展してきた かというと、それはすべて「人間を幸福にするため」という一点に集約されるのではないでしょうか。
そして、人間の幸福について考えて考えて考え抜いたとき、その根底には「死」という問題が厳然として在ることを、わたしたちは思い知るのです。
「死」の 問題を抜きにして、人間の幸福は絶対にありえません。
- 作者: キェルケゴール,斎藤信治
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1957/01/01
- メディア: 文庫
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「死」の問題を突き詰めて考えた哲学者にキルケゴールがいます。1849年に彼が書いた『死に至る病』は、後にくる実存哲学への道を開いた歴史的著作ですが、ち ょうど100年後の1949年に、かのピーター・ドラッカーがキルケゴールについてのすぐれた論文を書きました。タイトルは「もう一人のキルケゴール〜人間 の実存はいかにして可能か」です。
- 作者: P.F.ドラッカー,P.F. Drucker,上田惇生,林正,佐々木実智男,田代正美
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 1994/11/01
- メディア: 単行本
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現在、この画期的な論文は、『すでに起こった未来』上田惇生 + 佐々木実智男 + 林正 + 田代正美訳(ダイヤモンド社)に収録されています。
ここでドラッカーは、人間の社会にとって最大の問題とは「死」であると断言し、 人間が社会においてのみ生きることを社会が望むのであれば、その社会は、人間が絶 望を持たずに死ねるようにしなければならないと述べています。そして、人間の思考の極限まで究めたこの驚くべき論文の最後に、「キルケゴールの信仰もまた、人に死ぬ覚悟を与える。だがそれは同時に、生きる覚悟を与える」と記しています。
- 作者: 一条真也
- 出版社/メーカー: 三五館
- 発売日: 2013/09/20
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来るべき「心の社会」とは、「死」を見つめる社会であり、人々に「死ぬ覚悟」と「生きる覚悟」を与える社会にほかなりません。それは「死」という人類最大の不安か ら人々が解放され、真の意味で心ゆたかになれる、大いなる「ハートフル・ソサエティ」です。また、仏教では「生老病死」を苦悩とみなしています。「生きる覚悟」と「死ぬ覚悟」は、「老いる覚悟」と「病む覚悟」にもつながっていることを忘れてはなりません。わたしは、ドラッカーからの問いかけに対する自分なりの答えとして、『ハートフル・ソサエティ』(三五館)を書きました。
*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。
2013年11月28日 佐久間庸和拝