包摂社会シンポジウム

28日は、午前11時から北九州市観光協会の理事会が小倉北区鍛冶町のパークサイドビルで開催され、参加しました。夜は、小倉リーセントホテルで開催されたシンポジウムに出演しました。「人権文化をつくる北九州市民の集い2013」というシンポジウムで、テーマは、「『排除する社会』から『包摂する社会』へ〜『若者の就労支援』の現場から〜」です。
会場には、250名近い多くの方々が訪れて下さいました。


ホテルの入口にて

シンポジウムのようす



主催は、北九州人権フォーラム21でした。
2013年度北九州人権フォーラム21の第2回市民講座としてのシンポジウムでした。
出演者は、北九州市立大学基盤教育センターの稲月正教授、特定非営利活動法人・北九州ホームレス支援機構の奥田知志理事長、そして、わたしの3人でした。
北九州ホームレス支援機構では、2011年度より「若年者に対する伴走型就労支援事業」の取り組みを始めました。その趣旨に賛同したため、わが社も協力させていただいてきました。
奥田理事長らとともに、北九州市庁舎で記者会見に臨んだこともあります。
詳しくは、ブログ「就労支援記者会見」およびブログ「脱生活保護へ・・・」をお読み下さい。また、ブログ「就労支援シンポジウム」で紹介したように、3月25日に開催されたシンポでも稲月教授および奥田理事長と御一緒しました。


250名近い方が訪れてくれました




3月のシンポでコーディネーターを務められた奥田理事長によれば、今回の就労支援を実施する中で、若い生活保護受給世帯が抱える就労困難要件は、「仕事がない」ことのみではないそうです。就労以前の「生活自立」や「社会的自立」にあることが明らかとなってきたというのです。そもそも経済的困窮が社会的孤立を生み、そのような中で「働く意義」や「生きる意味」などを見失いつつある、大変深刻な事態が彼らを通して見えています。
また、貧困のスパイラル(連鎖)という現実もあり、保護世帯の25%が親の世帯も保護世帯であったことが判明しています。
このような現状においては、従来のハローワークで求職活動をし、一般就労を目指すという枠組みでは、解決できないケースが多く見受けられる事態となっているのです。


若年生活困窮者の状況について



今回のシンポにおいても、その目的は、一般就労へと向かうための「手前の就労」の構築を議論し、模索する場としたいとのことでした。パネルディスカッションが行われましたが、以下の2点に焦点を当てて、議論が進められていきました。
(1)いま、なぜ「伴走方支援なのか」
(2)「若者の就労支援」をはかる企業の活動


「人間尊重」を訴えました



わたしはパネルディスカッションの冒頭で、わが社が就労支援事業に関わらせていただくことになった理由を述べました。もちろん奥田理事長のこれまでの活動に感銘を受け、また共感させていただいたこともありますが、今回の若年者の就労支援については、現在大きな問題となっている生活保護の問題も含めて、北九州市そして日本の未来に不安を感じたからです。わが社のミッションは「人間尊重」ですが、北九州市や日本の未来が「人間尊重」に反する方向に流れているのではないかという不安を感じたのです。


「企業市民」としての責任を述べました



わが社は冠婚葬祭という市民のみなさまに密着した仕事をさせていただいています。一般的に企業とは経済的な利益をあげることにより永続的な存在となることを目指す存在です。わたしは、企業は単に経済的な利益をあげることだけでは永続的な存在にはなれないと考えています。「企業市民」という市民としての立場で、一般の市民がボランティアなどの社会活動を行うように、企業も社会のための活動を行う必要があります。そうして社会に認められる存在になられなければ永続的存在にもなれないのではないでしょうか。


「互助」について、会場に問いました


「会社は社会のもの」とは敬愛するドラッカーの言葉ですが、社会にとって必要不可欠な存在にならなければ会社も存続できないのです。つまり、この就労支援事業は企業としてぜひやらなければならない事業であると思っています。
そして、この事業に関わらせていただき、その思いはさらに強くなっています。国や自治体にお願いすることももちろん必要ですが、お上に頼るだけでなく、企業市民を含む市民全体もさらに積極的に取り組まなければなりません。
わたしは国や自治体による「扶助」、市民による「互助」、そして実際に働く若年者の「自助」という3つの「助」が欠かせないと確信します。わが社は互助会を営む会社でもあり、ぜひ「互助」の部分で協力させていただきたいと思います。


生活困窮者のキーワードは「迷惑」?



無縁社会のキーワードは、「迷惑」という言葉ではないでしょうか。
みんな、家族や隣人に迷惑をかけたくないというのです。
「残された子どもに迷惑をかけたくないから、葬式は直葬でいい」「子孫に迷惑をかけたくないから、墓はつくらなくていい」「失業した。まったく収入がなく、生活費も尽きた。でも、親に迷惑をかけたくないから、たとえ孤独死しても親元には帰れない」「招待した人に迷惑をかけたくないから、結婚披露宴はやりません」「好意を抱いている人に迷惑をかけたくないから、交際を申し込むのはやめよう」。すべては、「迷惑」をかけたくないがために、人間関係がどんどん希薄化し、社会の無縁化が進んでいるように思えてなりません。



そもそも、家族とはお互いに迷惑をかけ合うものではないでしょうか。
子どもが親の葬式をあげ、子孫が先祖の墓を守る。当たり前ではないですか。
そもそも“つながり”や“縁”というものは、互いに迷惑をかけ合い、それを許し合うものだったはずです。「迷惑をかけたくない」という言葉に象徴される希薄な“つながり”。日本社会では“ひとりぼっち”で生きる人間が増え続けていることも事実なのです。


奥田理事長の意見を聴く



就労支援についてですが、何よりも大切なことは、わが社の現場を就労者が「ぜひ、働いてみたい!」と思えるような魅力ある職場にすること。そのためには、普段から社員が生き生きと輝いて働ける職場にしなければならないと思います。今日は、以上のようなことを申し上げました。ブログ「助け合い日本一の街」に書いたように、北九州市は「助け合い都市」を目指すべきだと確信します。そして今、日本という国は大きな岐路に立たされていると思います。
今後は、弱者切捨てのない市政や国政を切に希望いたします。


わが社の取り組みを紹介しました



また、若者の就労支援の他にも、わが社は無縁社会を乗り越えて、さまざまな試みを行っています。たとえば、高齢者の食事会である「隣人祭り」の開催サポートです。
また、「隣人館」という有料老人ホームを展開中です。いずれは年金の範囲内で入居できる施設を各地に展開することを目指しています。
隣人祭り」および「隣人館」は、孤独死を減らす力を持っています。
さらには、月あかりの会というグリーフケア自助グループのお世話をさせていただいています。グリーフケアは、愛する人を亡くした人の自殺を防ぐことができます。


書籍販売コーナー



日本人の「孤独死」と「自殺」を少しでも減らしたいというのが、わたしの願いです。
それは、「人間尊重」というわが社のミッションに直結しています。
わが社では心ゆたかな社会としての「ハートフル・ソサエティ」の実現を目指していますが、それはそのまま「包摂社会」の実現ということでもあります。
これからも、企業市民という立場からベストを尽くしたいと思います。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年10月29日 佐久間庸和