丹羽宇一郎氏講演会

ブログ「丹羽宇一郎氏との再会」に書いたように、伊藤忠商事の元会長・元社長で元中国大使の丹羽宇一郎氏の講演会に行きました。テーマは、「東南アジアにおけるビジネスの展望」でした。主催されたJCBさんの配慮で、わたしは最前列の席を用意していただきました。JR九州の石原進会長、九電工の橋田紘一会長、岩田屋三越の太田垣立郎社長、新出光の出光泰典社長といった経済界の大物の方々も最前列に座っておられました。


講演される丹羽宇一郎



登壇した丹羽氏は、まず「九州は暑いですね!」と開口一番に言われ、続けて「ヒートアップして、まるで日中関係みたいですね」と、笑いを誘っていました。
冒頭から尖閣問題について言及され、「不毛で非生産的な議論を凍結(フローズン・アセット)せよ」という持論を述べられていました。そして、日中両国は、「経済」「青少年」「地域」という3つの交流を推進すべきであると述べられていました。



また現在、中国の習近平国家主席、日本の安倍首相ともどもソッポを向き合っているような状態ですが、G20やAPEC(エイペック)などの国際的舞台で改める必要があるとも言われていました。国際的な場で無視し合うことは礼節に欠けることであり、世界の恥になるからです。領土問題で揉めているといっても、どちらにも言い分がある。どちらか一方が頭を下げるというのではなく、第三国の仲介で三ヵ国が集まって話し合うことが重要だというのです。



丹羽氏は、「日本と中国がともに繁栄しなければアジアの発展はない」と述べました。
1972年の日中共同宣言がなかったら、あのときの田中角栄周恩来の努力がなかったら、アジアの平和も繁栄もありえなかったといいます。
尖閣問題で「核を使わない極地戦争ならやってもいい」と発言する日本人もいますが、実際に日中が戦争状態に入ればアジアは大混乱し、その発展は確実に阻まれるそうです。


経済人としての思いを発言されました



丹羽氏は政治家ではありません。経済人です。
ですから、経済人として「絶対に日中の衝突を避けなければならない」と言われていました。もし中国の経済がひっくり返ったら、日本経済もひっくり返ります。おそらく10年以内に中国は世界最大、日本は世界3位の経済大国となります。経済的な視点で見れば、アジアの隣国として日中は一蓮托生なのです。



さて、日本人の多くは中国共産党は軍事を最重要視しているように思っています。
しかし実際は国防費よりもはるかに多くを教育や社会福祉に費やしており、その割合はなんと47%にのぼります。つまり、中国は国家予算の47%を国民生活を良くするために使っているというのです。これは、わたしも初めて知り、驚きました。
中国の最優先課題は「都市化」であり、2020年までには都市化率60%を目標にしているそうです。現在の中国のGDPは40%強ですが、今後は60%以上になる見込みだとか。



それから、丹羽氏は「チャイナ・リスク」についても話されました。
丹羽氏が中国大使だったとき、大規模な反日デモの嵐が吹き荒れ、日本企業も大きなダメージを受けました。チャイナ・リスクさえなければ、日本企業の多くは中国進出したいはずです。しかし、丹羽氏は「経済は、思想や哲学でやるものではありません。経済合理性でやるものです。中国にリスクがあるならば、リスクのない東南アジアの国に進出しればいいんです」と言い、ベトナムカンボジアラオスミャンマーインドネシアバングラディッシュなどの国々の名を挙げられました。特に、バングラディッシュは猛烈に労働賃金が安く、大いに注目が集まっているそうです。


最前列で拝聴しました



丹羽氏は、アジア諸国への進出について、「経営者は自分の目で見て、自分の耳で聞いて、自分の頭で考えなければダメ。部下に任せてはなりません」と言われていました。
そして経営者は総合的にリスク判断をするわけですが、その際にカギとなるのは「教育」だそうです。よく知られているように、日本の教育力は低下する一方で、先進国では最低レベルです。丹羽氏は「このままでは大変なことになる」と危惧していました。「教育」と「社会福祉」を大切にすることこそが国の発展につながるという考えには大いに共感しました。


パワーポイントで説明されました



最後に、丹羽氏はパワーポイントで日本の40年後の人口構成を説明しました。
40年後、日本では4000万人も減少して、8000万人の人口になるそうです。
丹羽氏は「結婚式よりもずっとお別れ会(葬儀)のほうが多くなるわけです」と言って危機感を訴えていましたが、わたしはこれを聞いて「別に悪いことではないのになあ・・・」と思いました。(微苦笑)開始から約1時間後に講演は終了し、会場から盛大な拍手が起こりました。


JCBの川西社長と

伊藤忠商事の太刀川支社長(中央)、松永部長と



講演会の後は、ヒルトン福岡シーホーク34階の「ペントハウス」で交流会が行われました。
わたしは主催者である(株)ジェーシービー(JCB)の川西孝雄社長、伊藤忠商事九州支社の太刀川和男支社長、企画開発部の松永秀部長をはじめ、多くの方々と歓談しました。
わたしが先程の講演の内容について触れ、「わが社は40年後が楽しみです」と言うと、みなさん笑われていました。あと40年は安心ですね。いや、ほんとに。


講演、お疲れさまでした!

わが社のプロジェクトについてお話ししました

丹羽氏から貴重なアドバイスを頂きました

これからも、よろしくお願いいたします!



そして、講演を終えられた丹羽氏ともお話ししました。
わたしは、「伊藤忠さんの協力もあって、昨年から高齢者介護事業に進出しました。いずれは住のインフラとして、日本中の独居老人に北九州に移住していただきたいと思っています」と「隣人館」プロジェクトについてお話ししました。
また、「中国をはじめとした東アジアには、日本式の冠婚葬祭施設が合うように思います。これからは、ホスピタリティ産業のアジア進出の時代ではないでしょうか」と申し上げたところ、丹羽氏は大いに賛同して下さいました。その他にもいろいろとお話ししたのですが、これ以上は企業秘密ですのでブログには書けません。丹羽氏から「今度、帝国ホテルの事務所に遊びに来て下さい」と言われましたので、ぜひお伺いしたいと思います。
どうぞ、これからもよろしくお願いいたします!



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2013年8月3日 佐久間庸和