してみせて 言ってきかせて させてみる
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、上杉鷹山の言葉です。大いなる率先垂範の人であった鷹山は、「してみせて 言ってきかせて させてみる」という有名な言葉を残しています。
上杉鷹山の経営学―危機を乗り切るリーダーの条件 (PHP文庫)
- 作者: 童門冬二
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戦国時代において、少ない布陣で大軍に向かっていったような場合、総大将が先頭になって敵陣に突っ込んでいき、勝利を収めるというようなケースがありました。
桶狭間の戦いにおける信長は、まさにその代表例でしょう。
総大将が後方にいて、ただ命令を下すだけでは士気があがらず、ここぞというときには総大将自らが刀や槍をふるわなければ人はついてきません。逆に言えば、ここぞという戦いで、自ら先陣となって突っ込んでいける者こそ、真のリーダーなのです。
わたしは、リーダーシップの真髄とは「率先垂範」という言葉に極まるように思います。
部下や周りの者にやらせ、自分は何もしないでは、人は絶対についてきません。
上杉鷹山は、破産寸前だった米沢藩の財政再建を見事に成し遂げた名君ですが、「リストラの神様」として知られます。それまで50人もいた奥女中を9人に削減したり、大名行列の人数を半分以下にしたり、とにかく冗員の整理を徹底的にやりました。もちろん、リストラが藩における財政再建の大きな柱であったことは事実ですが、それだけで奇跡の財政再建を実現できたわけではありません。
鷹山の施策として注目されるものは、節倹と農村復興です。ともに目新しいものではありませんが、他藩では徹底されず失敗に終わることがほとんどでした。他藩で節倹が徹底しなかったのは、家中の侍や領民に節倹を命じておきながら、藩主やその家族は特別扱いされているケースが多かったからです。殿様やその家族だけが美食を楽しみ、贅沢三昧をしていれば節倹など実現するはずがありません。現代でも、社員にはボーナスも出さずに、自分だけ高級車に乗ってゴルフ場や高級クラブに通う社長が実在します。そんな社長がいくら節約を社員に呼びかけても効果ゼロ!
ところが、鷹山は自ら、食事は一汁一菜、衣服も木綿で通したのです。
農村復興においては、普通は現場の責任者にすべてを任せ、藩主はタッチしません。
しかし、鷹山は違いました。自ら現場に足を運び、本人も鍬をふるっているのです。
士・農・工・商の身分制度が厳格な江戸時代に、武士が農業経営に携わるということは考えられませんでした。「武士も農民と一緒に従事しろ」と命令されても、農村復興事業に本心から加わってくる者はいなかったはず。それが、藩主である鷹山が自ら鍬をふるい、全家臣に決意のほどを示したことによって米沢藩の農村復興は成功したと言えるでしょう。
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鷹山の「してみせて 言ってきかせて させてみる」に改良を加えたのが、山本五十六の「やってみて、言ってきかせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」です。この言葉を山本五十六のオリジナルだと思い込んでいる人が意外に多いですが、ぜひ上杉鷹山がルーツであることを覚えておいていただきたいと思います。もっとも、「ほめてやらねば人は動かじ」を最後に加えた山本五十六のセンスもさすがですが・・・・・。
なお、今回の鷹山の名言は『龍馬とカエサル』(三五館)にも登場します。
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*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。
2013年7月28日 佐久間庸和拝