ドラッカー(3)


自らの強みを生かせ




言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、ピーター・ドラッカーの言葉です。
人は自己啓発によって、成長していきます。
自らの成長のために、最も優先すべきことは何でしょうか。それは、他人より優れているところ、つまり「強み」を見つけて、それを伸ばしていくことです。
少し難しい言葉でいうと、卓越性の追及です。「弱み」の克服にいたずらに時間をかけるより「強み」をさらに強化した方がよいとうのがドラッカーの主張です。たとえば、受験生がセンター試験の総得点を上げたいのなら、不得意科目の点数を上げるよりも得意科目の点数を上げる方が早くて確実だということです。もっとも程度にもよりますが・・・・・。


明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命

明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命


「強み」の思想は、ドラッカーが長年訴えてきたものです。
『明日を支配するもの』(上田惇生訳・ダイヤモンド社)においても次のように述べています。
「何かを成し遂げられるのは、強みによってだけである。弱みによって何かを行なうことはできない。もちろん、できないことによって何かを行なうことなど、とうていできない。」
また、次のようにも述べています。
「不得手なことの改善にあまり時間を使ってはならない。自らの強みに集中すべきである。無能を並みの水準にするには、一流を超一流にするよりも、はるかに多くのエネルギーと努力を必要とする」



さらに、わたしは個人としても、ドラッカーの「強み」の思想を生かしてきました。
わたしは、社長になる前は本を書いていました。作家業です。
じつは、この経験が経営者としてマイナスになるのではないかと思っていました。
文章を書くことと、実際に人を使うことは全然違うことだからです。
周囲の人、父からも、商売をするのなら商売に徹しなくてはならない、物書きの人生はやめて、1からやり直さなくてはいけないといわれました。
わたし自分もそのつもりで、商売にどっぷりとつかったのです。
結果、10年間、わたしは1冊も本を書きませんでした。



そんな時、ある方からは「本を書けるということは、あなたの武器ですよ。それを封印するのはもったいないですよ。」とのアドバイスを受けました。
そして、ドラッカーの「強みを生かす」という考え方を知りました。
自分の強みとは、やはり自分の好きなこと、得意なことから生まれてくるはずです。
そこで私は、「自分は何が好きで、何をしている時に生きがいを感じるのだろうか」と考えてみました。するとやはり、書くことなのです。この自分の強み、生きがいでもある「書く」ということを、なんとか経営に生かすことはできないかと思いました。



わたしの会社は冠婚葬祭互助会で、そこには会員さんがいます。
さまざまなメッセージを発信して、会員さんを集めるわけです。
ある意味で、政党における選挙、宗教団体における勧誘に近い部分があります。ということは、本を書いていろんなところで自分の考え方を発表し、それをわかっていただければ会員さんも増えて、会社の経営にもよいのではないかと考えました。
そして、思い切って執筆を再開しました。おかげさまで好評を得ることができました。
いろんな新聞、雑誌からも連載の依頼が相次ぎ、現在では月に10本ぐらい連載を抱えていますし、著書もたくさん書くことができました。



それを読んで、わが社の互助会に入りたいという人も増えました。
わが社の施設で、結婚式や葬儀をあげたいという人も増えてきました。
結局、わたしは本を書くという強みを生かして、本業にもメリットを与えるることができました。
ドラッカーの考えに巡り合わなければ、いつまでも本を書くことは経営者にとってマイナスだと思い込み、でも本当は書くことが好きだから大きなストレスを抱えながらも、書かずに日々の経営に打ち込んでいたと思います。つまり、今ほどの効果は得られなかったと感じています。その意味で、わたしはドラッカーに心の底から感謝しています。


*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年6月27日 佐久間庸和