オランダの思い出

昨年9月4日から10日まで、冠婚葬祭互助会業界の仲間たちとヨーロッパ視察に行ってきました。互助会保証さんの主催で、訪問国はオランダとベルギーです。
プロテスタントの国・オランダの人口は1669万人、カトリックの国・ベルギーの人口は1095万人です。この両国は、もともとルクセンブルクを加えて「ネーデルラント王国」を形成していました。「ネーデルラント」とは「低地地方」という意味です。成田からANAでミュンヘンへ、そこからルフトハンザに乗り換えて、オランダの首都アムステルダムに入りました。
オランダは、長崎にある「ハウステンボス」に本当にそっくりでした(笑)。


オランダの街並み



オランダの伝統的葬送は、埋葬、すなわち土葬です。
ドイツやフランスといった周辺国が火葬を容認していくのに対し、オランダでは火葬の導入が遅れましたが、1874年に「火葬を代替方法とするための王立協会」が設立され、火葬の容認と火葬場建設を推進する運動がスタートしました。
40年後の1913年、オランダで初めての火葬場がついに建設されました。
埋葬の代替方法としての火葬は、1968年の「遺体処理法」制定で公認されました。



2011年現在、オランダ国内には95の火葬場があり、その約3割が埋葬墓地も併せ持っています。火葬が公認されると、今度は遺灰処置の問題が出てきます。オランダでは遺灰の埋葬地が足りず、火葬した上で埋葬するというコストのダブル負担に遺族の不満が大きくなってきました。そこで、散骨という方法が注目されました。オランダの立法府は、1991年に遺体処置法の改訂を行い、散骨の公認に踏み切ったのです。
近年は散骨を希望する国民も増えており、オランダの埋葬場でも遺灰の墓地埋葬や散骨が行えるように敷地の再配分がなされています。


DELA社のホール

椅子の緑色のグラデーションが美しい

花の飾りつけのようす



わたしたちは、アムステルダムに本社のあるDELA社、PC Hooft社という2つの葬儀社を訪問しました。DELA社はオランダとベルギーで葬祭業および保険業を展開していますが、ヨーロッパ全体でも最大手の葬儀社です。
1937年の創業で、もともとは葬儀の協同組合でした。DELAとは「みんなの負荷を各自が負担し合う」という意味のオランダ語の略語だそうです。その精神は「相互扶助」そのものであり、わたしは日本の冠婚葬祭互助会とルーツは同じだと感じました。



DELA社は現在では300万人以上の会員を有し、オランダで30000件、ベルギーで18000件、合計48000件の葬儀施行を誇る欧州最大手の葬儀社にまで発展しました。ベルギーにはアメリカ最大手の葬儀社SCIが進出していたのですが、数年前に撤退し、代わりにDELAがベルギー市場に参入したそうです。ガリバーの参入を恐れたベルギーの葬儀業界は国を挙げてDELAの成長に歯止めをかけているようです。


PC Hooft社のホール

本格的なパイプオルガンつき



一方、PC Hooft社はオランダの葬儀業界で中堅のトップに位置します。 同社は、アムステルダム郊外に「Westgaade」というセレモニーホールを所持していますが、ここは緑豊かな最高のロケーションでした。ここで年間2900件の葬儀が行われるそうです。
実際に葬儀が行われるホールは天井が高く、自然光が入るようになっていました。
祭壇脇には、本格的なグランドピアノが置かれていました。
さらに客席の上手にはパイプオルガンも備えられ、まるで近代的な教会のようでした。
弔問客の数は20人〜500人で、平均は約100人とのこと。 平均単価は、4500〜5000ユーロ。日本円では50万円というところでしょうか。 遺族の希望通りに葬儀が行われ、中にはパワーポイントを使って故人の生涯をプレゼンテーションする遺族もいるそうです。


棺が電動で地下へ降りていく

簡単に屋外埋葬地に棺が運べる



驚いたのは、棺が電動で地下へ降りていくシステム。棺はそのまま施設内の火葬場へと移動し、火葬に処されます。また土葬の場合には、棺の横の巨大な扉が開き、そこから屋外の埋葬地へと棺を運び出すことができます。 火葬・土葬の両方に対応した最新システムに、オランダ人特有の合理性と、ある種の「ホスピタリティ」を痛感しました。
オランダは複合民族国家ですが、ここ最近は無宗教の葬儀が増えているそうです。またオランダはプロテスタントの国として知られますが、教会と無縁の人々が多くなってきているというのです。一方、イスラム教徒の数は増加しているといいます。 現在のオランダでは、宗教によらず「自分でやりたいようにやる」という葬儀スタイルが目につき始めています。
わたしは、日本における「お別れ会」に近い内容ではないかと感じました。


オランダの霊園

いろいろと話を伺いました



オランダは複合民族国家ですが、ここ最近は無宗教の葬儀が増えているそうです。またオランダはプロテスタントの国として知られますが、教会と無縁の人々が多くなってきているというのです。一方、イスラム教徒の数は増加しているといいます。現在のオランダでは、宗教によらず「自分でやりたいようにやる」という葬儀スタイルが目につき始めています。日本における「お別れ会」に近い内容ではないかと感じました。
わたしは、これまでアメリカやヨーロッパ、または韓国のセレモニーホールを回ってきましたが、今回のオランダおよびベルギーの葬祭施設には多大なインパクトを受けました。オランダとベルギーのセレモニーホールは、とにかく美しい!


ライフアート・コフィンのエジプト風棺



オランダでは、その名も「ライフアート・コフィン」という棺会社も訪問しました。
この会社では植物や廃棄物を利用した棺を製作するのですが、その棺はアートそのもので、じつに美しいのです。エジプトのファラオのような棺や花柄のもの、その他、故人の人なりを表現した個性的な棺が大量に並んでいました。
さすがはレンブラントをはじめとした偉大な芸術家を多数輩出した地方です。
芸術大国の葬儀空間は、まさに美術館そのものでした。1人の人間の人生を締めくくる「人生劇場」としてのセレモニーホールは「人間美術館」でもあります。今後の日本のセレモニーホールが「人間美術館」を目指さなければならないことは言うまでもありません。


コンパクトな結婚式場

男同士で模擬結婚式しました

もとは西インド会社の本社でした

西インド会社跡を使った式場のバンケット



もちろん、葬儀だけでなく、冠婚関係の視察も行いました。西インド会社の本社だったという建物を再生した「West Indisch Huis」では、男同士で模擬結婚式をしました。その他、オランダでは砂糖会社を再生した披露宴会場「House Of Holland」などを視察しましたが、やはり冠婚よりも葬儀の視察において収穫が多かったです。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年3月26日 佐久間庸和