高齢者への取り組み


22日、東京から大事なお客様が北九州市小倉のサンレー本社に来られました。
経済産業省の商務情報政策局サービス産業室ご一行様で、「安心と信頼のある『ライフエンディング・ステージ』の創出に向けた普及啓発に関する研究会」のメンバーの方々です。
今回の目的は、わが社の諸施設の視察と高齢者ビジネスについての意見交換です。


「FUNERAL BUISINESS」誌で特集されました



なぜ、わが社を視察されたかというと、「月刊 FUNERAL BUISINESS」(総合ユニコム)誌の昨年12月号に掲載された「葬祭業と高齢者ビジネス」という特集の中の、「アクティブシニアとのつながりを礎に低廉な有料老人ホームで介護業参入」というわが社を取り上げた記事を研究会メンバーの方が読まれて、興味を抱かれたそうです。
その記事は3ページにわたるもので、「小規模・低価格を謳う有料老人ホーム」「互助会ならではの結婚式場跡地を有効利用」「ホテルと会館の複合施設で高齢者のファンづくり」「医療・介護・葬儀のワンストップサービス構想も」の見出しで、わが社の有料老人ホーム「隣人館」をはじめ、高齢者複合施設サンレーグランドホテルなどの施設、それに「隣人祭り」や各種高齢者イベントなどが紹介されています。
最後には、「一般的に高齢化が進行すると、労働力や購買力が低下するといわれる。しかしながら、逆に北九州がもつ高齢者の潜在市場をプラスに転化することで、高齢者ビジネスに果敢にチャレンジする互助会サンレーの事業戦略は、日本の行く末を占う先行モデルケースといえるのかもしれない」と書いていただきました。身が引き締まる思いです。


サンレー本社で意見交換しました



まず、みなさんとサンレー本社で意見交換をさせていただきました。
みなさん、『老福論』、『ハートフル・ソサエティ』、『ホスピタリティ・カンパニー』、『礼を求めて』などの拙著をよく読まれていたので、驚きました。まったく、ありがたいことです。


サンレーグランドホテルの前で

ホテル内の「よろず相談所」で



意見交換の後は、わが社の施設見学です。みなさんに小倉紫雲閣グリーフケア・サロンのムーンギャラリー、小倉から八幡に移動してサンレーグランドホテル、そして最後に福岡県飯塚市にある隣人館を見ていただきました。
サンレーグランドホテルでは、ちょうど4件の葬儀が行われていました。また、将棋教室が開かれていて約50名の方々が将棋を楽しんでおられました。同じ施設設内で、アクティブ・シニアのカルチャー活動と葬送儀礼が同時に行われている現実に、みなさんは大変驚かれたようでした。日本人は人が亡くなると「不幸があった」などと言い、死を忌み嫌うとされていますね。しかし、わたしは、やり方次第では死をタブーから解放するというか、死のポジティブ・シフトが可能であると考えています。


葬儀の案内とカルチャー案内が共存



実際、葬儀が行われているのを眺めながら、将棋・囲碁・社交ダンス・フラダンスをはじめ60種類のカルチャー活動を行うアクティブシニアの方々には死をタブー視する方はいません。逆に、ここで他人様の葬儀に立ち会う機会が増えるにつれ、「死ぬのが怖くなくなってきた」という方が多いです。要するに、死に慣れてきたということだと思います。


サンレーグランドホテルで高齢者への取り組みを語る



現代の日本人は、世界一「死を怖がる」民族であると言われます。
そこから、死を怖れ、老いることを憂い、病に絶望するという精神構造、すなわち「こころの負のスパイラル」が生まれます。日本人は、けっして「死」を日常から隠してはなりません。「死」を日常の中に取り込んだほうが絶対に精神衛生上も良いのです。
この世界初ともいうべき高齢者複合施設のサンレーグランドホテルは各方面から注目され、先日もNHKスペシャルのディレクターの方が東京から下見に来られています。



このような施設を作った背景には、わたしの「人は老いるほど豊かになる」「死は不幸な出来事ではない」「葬儀は人生の卒業式である」という信条があります。そして、それらすべての根幹には「生老病死のリ・デザイン」という考え方があります。


飯塚市にある隣人館1号館



今日は、研究会のみなさんから色々と質問もいただきました。
隣人館に関して、「事業を始めたきっかけ・目的を教えて下さい」との質問もありました。
2000年の介護保険開始から高齢者のための住宅は、特養(特別養護老人ホーム)や老健(老人保健施設)、軽費老人ホームなどの公的施設から介護付有料老人ホームやグループホーム高専賃(高齢者専用賃貸住宅)などの民間施設まで様々なかたちで建設され、現在では約140万戸が供給されています。しかし、わが国は急速に高齢化が進んだため、高齢化に合わせた住宅供給が質・量ともに間に合っていません。



肝心の介護付有料老人ホームですが、国の総量規制もあって一向に増えておらず、今後さらに100万戸〜150万戸の高齢者用住宅が必要といわれています。今後増え続ける後期高齢者、2015年には団塊の世代がすべて高齢者になるなど、高齢者が安心して生活できる生活・介護の一体となった住まいが求められています。



しかし、現在の日本高齢者住宅は、民間施設の場合は大規模なものや豪華なものが多く数千万円単位の一時金など高額で金銭的余裕のある人しか入居できません。また、公的施設の場合は比較的安価で金銭的余裕のない人でも入居できますが、待機者が多く入居するまでには相当な年数がかかり、金銭的余裕のない人はなかなか入居できないという実情があります。さらに、高齢者はそれまで暮らしていた愛着のある地域を離れたがらない傾向があり、地域に根ざした施設が必要になっています。



以上のような環境は、わが社が営んでいる地域に密着した冠婚葬祭互助会事業、そして今後将来の方向性につながるものがあり、単なる新規事業としての位置づけではなく、冠婚葬祭事業の付帯事業としての展開が可能であると判断しました。
これからも、わが社は、さまざまな形で高齢者への取り組み方の新しいモデルを提示していきたいと考えています。そして、日本人の「生老病死」を少しでも明るくしたいです。


日本人の「生老病死」を明るくしたいです



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年2月22日 佐久間庸和