抱樸受賞報告会

12日(日)の夜、わたしは松柏園ホテルに向かいました。
隣人愛の実践者」こと奥田知志さんが理事長を務める「NPO法人 抱樸」さんがこのたび、読売福祉文化賞と第1回賀川豊彦賞をW受賞され、その受賞報告会が開催されたのです。


NPO法人 抱樸」の受賞報告会のようす

ずらりと並べられた表彰状の数々



奥田理事長はわたしと同年齢でもあり、これまでに何度も対談やシンポジウムなどでご一緒しました。「無縁社会」を乗り越えるための同志、戦友だと思っています。そんな奥田理事長が「賀川豊彦」の名を冠した賞を受賞されたことが本当に嬉しくてなりません。
ブログ『死線を越えて』などで紹介したように、賀川豊彦は、生涯にわたって社会的弱者の側に立ち、神戸のスラム街に住みつつ伝道と救貧活動を展開した社会運動家であり、作家です。「友愛、互助、平和」を国内外で説きながら、国内では生活協同組合運動や農業協同組合運動をはじめ、さまざまな社会改革運動の先駆者として活躍しました。


第1回賀川豊彦賞の賞状


世界最大の生協である「コープこうべ」や「JA共済」の創始者であるといえば、少しはその偉大さがおわかりでしょうか。しかし、著者の素晴らしさはそれだけではありません。
なんと、ノーベル文学賞候補(1947・48年)に2回、さらにはノーベル平和賞候補(1954〜56年)に3回も、それぞれなっているのです。
また、シュヴァイツアーやガンディーと並ぶ「20世紀の3大聖人」とも呼ばれたこともあります。日本よりも海外での知名度が圧倒的に高く、特に戦前のアメリカでは「ヒロヒトとトヨヒコ」、つまり昭和天皇とともに「二大日本人」として並び称せられたほどです。


抱樸の歴史を紹介する映像でスタート!

絆は傷を含む

「開会あいさつ」をする森松専務理事

「来賓あいさつ」をする北橋市長



第一部の報告会は、「NPO法人 抱樸」の28年間の歴史を紹介する映像でスタートしました。最初は世間の無理解もあり、想像を絶するような苦労をされたようですが、今では抱樸のみなさんの活動は広く理解を得ています。
映像が終了すると、森松長生専務理事による「開会あいさつ」があり、それから北九州市北橋健治市長をはじめとする「来賓あいさつ」がありました。北橋市長は「抱樸のみなさんの活動は、北九州市民にとっての励みです」と言われました。


「記念講演」のようす

講演する山粼先生



その後、報告会の中で「記念講演」が行われました。
講師は北九州市ホームレス自立支援推進協議会会長で北九州市立大学名誉教授である山粼克明先生でした。山粼先生は、「受賞内容」、「抱樸とはなにか」として団体名称および活動内容の変遷、活動の特徴、抱樸の強みなどについて、わかりやすく説明して下さいました。


報告会の最後に挨拶する奥田理事長



報告会の最後には、奥田理事長が登壇しました。奥田理事長は参加者のみなさんに丁重な感謝の言葉を述べ、「これは、わたしたちだけで頂いた賞ではありません。ホームレスのみなさん、そして支援者のみなさま全員で頂いた賞です」と述べました。


感謝の言葉を述べました



それから奥田理事長は「今年で活動を始めてから28年になりますが、これまで本当に大変でした」と語り、多くの方々の名前を挙げて感謝の言葉を述べました。そして、「最後に、わたしたちに心を開いて下さらず、尊い命を落とされたホームレスの方々に感謝の祈りを捧げたいと思います。オッチャンたち、天国でまた会おう!」と感動的な挨拶を結ばれました。それを聴いて、わたしの胸は熱くなりました。


パーティーの冒頭で挨拶しました



第二部はパーティーです。冒頭、株式会社サンレーの社長として、わたしが挨拶をさせていただきました。わたしはまず、「奥田理事長をはじめ、抱樸のみなさま、受賞まことにおめでとうございます。とても嬉しいです」と述べました。それから、拙著『隣人の時代』(三五館)では賀川豊彦を詳しく紹介したこと、「現代の賀川豊彦」だと思っていた奥田理事長がその名を冠した賞を受賞され、「こんなに嬉しいことはありません」と申し上げました。


四大聖人について述べました



それから、わたしは「みなさんは四大聖人というのをご存知ですか。ソクラテス孔子ブッダとイエスという4人の偉大な聖人です。わたしは、この4人が現代日本に生きていたら、何をするかということをいつも考えます」と述べました。わたしは「今の世の中を見たら、ソクラテス反知性主義へと流れる世界を嘆くでしょう。孔子孤独死をなくす隣人交流の運動を行うでしょう。ブッダ自死をなくすために、グリーフケアを行うでしょう。そしてイエス・キリストは、確実にホームレスの方々、被災者の方々、困窮者の方々を支援する活動を展開すると思います。最近、『沈黙−サイレンス−』という隠れ切支丹の映画を観たのですが、沈黙するキリスト教の神に強い違和感を感じました。でも、現代日本においては神は沈黙せず、使徒たちが困窮者の支援に励んでいます。神に救いを求める人々たちを、神に代わって使徒たちが救っています。抱樸のみなさんのことです!」と述べました。


抱樸の活動は、北九州市民の「誇り」です!

儀式論』を紹介しました

奥田理事長へ『儀式論』を贈呈しました

奥田理事長と壇上でツーショット



そして、わたしは「抱樸のみなさんがホームレス支援によって地域社会を明るくしているように、わが社は成人式などの儀式の正常化をお手伝いすることで地域社会に貢献させていただいています。わが社は冠婚葬祭業ですので、儀式によって世の中を明るくしたいです」と述べました。わたしは拙著『儀式論』(弘文堂)を紹介し、「抱樸さんは儀式を大切にしておられます。身よりのない方々の看取り、葬儀、納骨まできちんと責任をもってサポートされていることに心より敬意を表します。わが社のミッションである『人間尊重』そのものです」と述べ、奥田理事長に『儀式論』を贈呈させていただきました。会場からは割れるような拍手が起こりました。最後に、わたしは「北橋市長は『抱樸のみなさんの活動は、北九州市民にとっての励みです』と言われましたが、わたしにとっては『励み』というよりも『誇り』です。本当におめでとうございました!」と結びました。


儀式論』の内容について説明しました



わたしの拙い挨拶を、奥田理事長はとても喜んで下さいました。
また、『儀式論』を嬉しそうに手に取って眺めておられました。
理事長に請われて、わたしは本にサインをさせていただきました。
わたしは、日本酒好きの奥田理事長に大吟醸の「華鳩」を差し入れしました。


カンパ〜イ!

パーティーのようす

記念演奏のようす

野口石油の野口代表と

記念講演をされた山粼先生と



その後、北九州市保健福祉局の工藤局長による乾杯の音頭でパーティーは華やかに幕を開けました。ヴァイオリニストの谷本仰さんによる記念演奏もありました。各界の方々からの「励ましのことば」も檀上で披露され、パーティーは和気あいあいと進んでいきました。


生笑一座のみなさん



そして、「生笑(いきわら)一座」のみなさんが檀上にあがられました。
路上生活から、さまざまな困難を乗り越えた素晴らしい方々です。
代表の方がお話をされましたが、「昔、わたしたちは絶望していました。でも、支援の手を差し伸べて下さったみなさんのおかげで、なんとか今でも生きています。勇気を出して『助けて』と言ったら、助かりました」と述べられました。それから、「本当に頑張って良かったです。今日は、こんなに美味しい御飯も食べられましたし」と言って下さいました。松柏園の料理をそんなふうに言っていただいて、わたしは感動で涙が出てきました。


最後に奥田理事長が挨拶をされました

奥田理事長の挨拶をしみじみと聴きました

本当に、おめでとうございます!



最後は、奥田理事長が登壇して、感謝の言葉を述べられました。
奥田理事長は「これまでも多くの賞を受賞してきましたが、こんなふうに報告会を行うのは初めでです。ずっと、おこがましいと思ってきました。でも、今日、気づきました。『おこがましい』というのは、自分たちが受賞したのだという気持ちがあったからです。そうではありません。みなさまのおかげで受賞させていただいたのだから、一緒に喜びを分かち合うのが正しいと気づきました。素晴らしい会場やお料理を用意していただいた佐久間社長には心より感謝申し上げます。大吟醸の差し入れもありがとうございました!」と言って下さいました。
20時過ぎにパーティーはお開きとなりましたが、本当に良い会でした。
ということで、「NPO法人 抱樸」のみなさま、本当におめでとうございました!



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2017年2月12日 佐久間庸和