たった一字に深い意味を秘めている文字は、世界でも漢字だけです。そこには、人のこころを豊かにする言霊が宿っています。その意味を知れば、さらに、こころは豊かになるでしょう。今回ご紹介するハートフル・キーワードは、「続」です。


あきらめてはいけません。
それを痛感させるエピソードを紹介しましょう。1849年、ゴールドラッシュ時代のアメリカのこと。デービーという新聞記者が自分の職を投げうって、金の鉱脈探しに没頭しました。泥にまみれ、汗にまみれて、朝から晩まで掘り続けました。しかし、デービーは、金の鉱脈を掘り当てることはついにできませんでした。彼はあきらめて、採掘権を売りました。そして街に戻りました。


街に戻った彼は、驚くべきニュースに遭遇します。それは「カリフォルニアで大金鉱脈発見」というものでした。金鉱脈が発見されたことにデービーは驚いたのではありません。発掘された場所です。そこは、ついこの前までデービーが掘っていた場所だったのです。もし、あと数メートル掘り続けていたら・・・・・・デービーは、悔やんでも、悔やんでも、悔やみきれませんでした。あきらめが、彼の夢を阻んだのです。彼は、信念を持って掘り続けることができなかったのです。
 

「あきらめが肝心」とよく言われます。たしかに実際の企業経営においては、不採算事業にかなわぬ夢を託し続け、撤退時期が遅れて命取り、つまり倒産してしまうというケースはよくあります。わが社にしても、そういった不採算事業から思い切って撤退したおかげで、今日があります。しかし、それはあくまで本業ではない関連事業ばかりでした。本業に関するものでは一切あきらめていません。エリアにしても、本社所在地ということもありますが、冠婚葬祭業の世界で最も競争が激しいといわれる北九州市での営業を続け、現在もシェア・トップの座を守っています。


あきらめないということは、信念を持つということに等しいでしょう。わたしが敬愛する政治家、ウィンストン・チャーチルは信念の人でした。彼は子どもの頃、友人と人生について議論していて、少年なりのニヒリズムゆえか、「人間はすべて虫けらみたいなものだ」という結論に達したといいます。虫というのが、わたしには吉田松陰の「志なき者は虫(無志)なり」を連想して興味深いです。ところがチャーチルは、「みんながみんな虫だ。しかし僕だけは蛍だ」と言ったというのです。


生涯、彼は、自分が蛍であると信じ続けたそうです。
つまり、チャーチルは死ぬまで自分は特別な人間、何事かを成し遂げる人間であると信じて疑わなかったのです。チャーチルは晩年、母校での講演したとき、彼の若い後輩たちに「ネバー・ギブアップ!」と何度も繰り返して壇上を去ったそうです。「ネバー・ギブアップ」という言葉はチャーチルの人生哲学そのものだったのでしょう。


とにかく、あきらめてはいけません。続けることが大事。
そう、信念と継続とは一体なのであると知りましょう。
なお、「続」については、『龍馬とカエサル』(三五館)に詳しく書きました。


*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。


2016年6月23日 佐久間庸和