天道館の孔子祭

6月18日、早朝から松柏園ホテルの神殿で月次祭を行いました。
その後、天道館に場所を移して、「孔子像除幕祭ならびに孔子の木植樹祭」を行いました。略して「孔子祭」です。待ちに待った「孔子祭」ですが、あいにくの雨でした。


月次祭のようす

孔子祭のようす



ブログ「天道館の竣工式」で紹介したとおり、昨年9月26日、サンレーグループ佐久間進会長の満78歳の誕生日に合わせ、「天道館」という施設が竣工しました。ニックネームは「平成の寺子屋」です。皇産霊神社の瀬津隆彦神職による神事の後、サンレーグループの佐久間会長と社長であるわたしが孔子像除幕と孔子の木植樹を滞りなく終えました。


孔子像除幕祭のようす

佐久間会長とともに幕を引きました

その全貌が姿を現す・・・・・・

ついに天道館にも孔子像が!

じつに素晴らしいお顔です

これが天道館孔子像だ!!



ブログ「湯島聖堂」ブログ「足利学校」で紹介した施設には、大きな孔子像があります。
天道館に設置された孔子像は大きなものではありませんが、「北九州のミケランジェロ」と呼ばれる名工・三島平三郎氏に作っていただきました。ブログ「オリンポスの神々に見守られて」ブログ「七福神」ブログ「河童」で紹介した珠玉の彫刻群もすべて三島氏の手による作品です。このたびの孔子像は、「礼の社」の歩みを今後も見守ってくれることでしょう。


孔子の木植樹祭のようす

孔子の木に水を3回かけました



孔子の木とは「楷の木」のことです。中国山東省にある孔子廟には、その弟子たちが孔子を偲んで植樹した楷の木が繁っています。この木は中国原産の落葉喬木で、葉の生じ方や枝振りが直角に整然としているところから、「楷書体」の語源ともなっています。孔子木とも呼ばれる楷の木は、日本においても湯島聖堂足利学校閑谷学校多久聖廟など、孔子に由来する史跡などに植樹されている木なのです。


天道館に植樹された「礼の木」

孔子の木」の説明プレート



学問の木としても貴ばれるこの木は、孔子の教えに鑑みれば「人間尊重の木」、「慈礼の木」と称するべきでしょう。天道館の「孔子の木」は5本あり、それぞれ「仁」「義」「礼」「智」「信」の木となっています。そう、儒教の「五倫」にちなんでいるのです。


足利学校の「釋奠」の儀式資料



ちょうど今から100年前、湯島聖堂足利学校閑谷学校、それから佐賀県多久市にある多久聖廟の4カ所に楷の木すなわち「孔子の木」が植えられました。それらの四大聖廟では「釋奠(せきてん)」という儀式が執り行われています。
「釋奠」とは儒教の祖である孔子と、その弟子たちをまつる儀式です。「釋奠」という言葉には「供え物を置く」という意味があります。わたしは尊敬する孔子を祀る「釋奠」という儀式に強い興味を覚え、いずれは天道館でも執り行えるように、調査・研究を始めています。


わたしは、冠婚葬祭互助会を経営しながら、大学で孔子の思想などを教えています。講義では、特に孔子が説いた「礼」について重点的に説明します。「礼」は儀式すなわち冠婚葬祭の中核をなす思想ですが、平たく言うと「人間尊重」であると思います。そして、「礼」を形にしたものが「儀式」です。孔子は「社会の中で人間がどう幸せに生きるか」ということを追求した方ですが、その答えとして儀式の重視がありました。人間は儀式を行うことによって不安定な「こころ」を安定させ、幸せになれるのです。その意味で、儀式とは幸福になるテクノロジーです。カタチにはチカラがあるのです!


天道館には「人間尊重」と「互譲互助」の額が並びます



サンレーは創業以来、「人間尊重」という企業理念のもと、「互譲互助」の精神で冠婚葬祭事業を営んでまいりました。社名の由来でもある「礼」は孔子の教えであり、「人間尊重」そのものでもあります。事業の継承とは、創業理念の継承にほかなりません。その過程の中で取り組んできた活動が、図らずも孔子及び「論語」思想の普及に繋がっているとして、一般社団法人・世界孔子協会からご評価いただき、平成24年2月には第2回「孔子文化賞」を受賞いたしました。詳しくは、ブログ「孔子文化賞授賞式」をお読み下さい。


平成心学塾」を開きました



今回、天道館孔子像を建立し、孔子の木を植樹することに大きな意義を感じます。
ブログ「平成心学塾で『無縁社会』を語る」で紹介したように、わたしは、石田梅岩二宮尊徳の思想を受け継ぎたいと願っています。そのため、「平成心学塾」という世直しのための私塾を主宰し、毎月、月次祭の後に開講しています。通常は松柏園ホテルで開講しているのですが、天道館においても、平成心学塾を開く機会をうかがっていましたが、この「孔子祭」の日に合わせて天道館では初となる平成心学塾を開催しました。


最初に佐久間会長が訓話をしました

江戸しぐさの「お心肥し」を説く佐久間会長

老い」について大いに語る佐久間会長

まさに「平成の寺子屋」です!



まず、佐久間会長の訓話がありました。佐久間会長は、「この地には昔、天動塾というものがありました。ここは、わが社の原点です」と述べ、江戸しぐさの「お心肥し」に触れて、「単に知識を学ぶのでなく、生きる方を学ぶ場所にしたい」と言いました。そして、創業時に唱えた「子どもに夢を、若者に希望を、お年寄りに生きがいを」という言葉を紹介し、「みなさんは、ケイロウという字を知っていますか?」と問いかけ、「敬老」「軽老」「刑老」という字をホワイトボードに書きました。そして、「トシを取ってみて、初めてわかることばかりです。これからも『老い』の意味を考えていきたい」と述べました。


わたしも講話を行いました

雨と儒教の関係を話しました



佐久間会長の後に登壇したわたしは、講話を行いました。まず、「今日はあいにくの雨ですが、じつは孔子には雨が似合います」と述べました。孔子儒教という宗教を開きました。儒教の「儒」という字は「濡」に似ていますが、これも語源は同じです。
ともに乾いたものに潤いを与えるという意味があります。すなわち、「濡」とは乾いた土地に水を与えること、「儒」とは乾いた人心に思いやりを与えることなのです。孔子の母親は雨乞いと葬儀を司るシャーマンだったとされています。
雨を降らすことも、葬儀をあげることも同じことだったのです。雨乞いとは天の「雲」を地に下ろすこと、葬儀とは地の「霊」を天に上げること。その上下のベクトルが違うだけで、天と地に路をつくる点では同じです。母を深く愛していた孔子は、母と同じく「葬礼」というものに最大の価値を置き、自ら儒教を開いて、「人の道」を追求したのです


最近の出来事も話しました

万物に光を注ぐ天道の名をば掲げて礼を広めん



それから、ブログ「第3回『孔子文化賞』授賞式」ブログ「全互連の会長に就任しました」ブログ「仏教連合会パネルディスカッション」ブログ「孔子膳堂オープン」に書いた内容などを話しました。その後、ブログ「孔子像」ブログ「孔子の木」に書いた内容も話しました。5本の孔子の木にちなんで、「仁」「義」「礼」「智」「信」の五倫についても簡単に説明しました。最後は、「万物に光を注ぐ天道の名をば掲げて礼を広めん」という道歌を披露しました。


「平成の寺子屋」こと天道館の外観



天道館の設立主旨は主に3つあり、それは以下の通りです。
まず、実践礼道小笠原流の礼儀作法を取り入れて、サンレー社員としての基本的なスキルを学ぶ社員教育の場、また、社員間の意思疎通を図り、目的の共有を図るための社員同士のコミュニケーションの場としての役割を担う施設とするため。それから、サンレー創業の地である上富野周辺の方々に、長くご愛顧いただき、お世話になった感謝の気持ちを込めて、この天道館をご近所の皆様が気軽に集える「公民館」や「市民センター」のようなものとして、ご利用いただける施設とするため。さらに、高齢者社会へと向かう日本において、高齢者同士が隣近所付き合いを活性化させ、共に支え合う社会を目指していく研究所としての役割を果たしていくことを目的とする。
この天道館が、孔子の教えを学ぶ「平成の寺子屋」として、また「人の道(礼道)」を学び実践していく場として、些少なりとも地域に貢献出来る施設となれば望外の喜びです。



さらなる「天下布礼」を!



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2014年6月18日 佐久間庸和