稲盛和夫(5)


人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力




言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、現代日本を代表する経営者である稲盛和夫氏の言葉です。
企業経営者として「全従業員の物心両面の幸福」を追求し、「人類社会の進歩発展」に貢献するという思想の根源は、「人として何が正しいかという判断基準」に拠っている極めてシンプルにしてプリミティブなものだと稲盛氏は述べています。


「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」
これは、稲盛氏自身が考案した公式であり、ご本人の経験則に裏打ちされたものだけに強い説得力があります。『心を高める、経営を伸ばす』(PHP研究所)で、稲盛氏は述べます。
「能力とは、頭脳のみならず健康や運動神経も含みますが、多分に先天的なものです。しかし、熱意は、自分の意志で決められます。この能力と熱意はそれぞれ0点から100点まであり、それが積でかかると考えると、自分の能力を鼻にかけ、努力を怠った人よりも、自分には頭抜けた能力がないと思って誰よりも情熱を燃やして努力した人の方が、はるかに素晴らしい成果を残すことができるのです」



そして、稲盛氏は一番重要なのは「考え方」であると以下のように述べます。
「考え方とは、人間としての生きる姿勢であり、マイナス100点からプラス100点まであります。つまり、世をすね、世を恨み、まともな生き様を否定するような生き方をすれば、マイナスがかかり、人生や仕事の成果は、能力があればあるだけ、熱意が強ければ強いだけ、大きなマイナスとなります。素晴らしい考え方、つまり人生哲学を持つか持たないかで、人生とは大きく変わってくるのです」


稲盛和夫の論語

稲盛和夫の論語

稲盛氏は、第2回「孔子文化賞」を受賞しておられます。
経営コンサルタントで歴史研究家の皆木和義氏は、著書『稲盛和夫論語』(あさ出版)において、稲盛氏の教えには『論語』との共通点が多く、読書家として知られる稲盛氏が孔子の教えを血肉化しているという事実を論証しました。
同書には、稲盛氏の公式は『論語』の次の言葉の影響を受けていると指摘しています。
「子曰く、位なきことを患えず、立つ所以を患う。
己を知ること莫きを患えず、知らるべきことを為すことを求るなり」
孔子は言った。「地位がないことを心配せず、その地位に立つべき理由を気にせよ。自分を認める人がいないのを気にかけず、人に認められるような行動ができるように努力せよ」と。



組織のリーダーには何が必要か。それは、なによりも「人間性」であり、世に認められるには「人間尊重」という確固たる信念に基づいた日々の実践が大事であると孔子は説きました。その孔子の教えと稲盛氏の公式は同一であると皆木氏は指摘しているのです。
わが社は、創業時より「人間尊重」を大ミッションとして掲げています。
社長を務めるわたし自身、稲盛氏の公式が正しいことを強く実感しています。
なお、今回の稲盛和夫氏の名言は『龍馬とカエサル』(三五館)にも登場します。

龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

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2013年12月30日 佐久間庸和