おもてなしの時代へ

今日の「毎日新聞」朝刊に第14回目の「北九州発 ハートフル通信」が掲載されました。
今回のタイトルは「おもてなしの時代」です。



毎日新聞」10月18日朝刊



2020年の夏季オリンピックの開催地が東京に決定しました。
アルゼンチン・ブエノスアイレスのIOC総会で東京がプレゼンテーションを行った際、滝川クリステルさんがIOC委員に東京招致を訴えました。
流暢なフランス語にナチュラルな笑顔、彼女はこれ以上ない適役でした。 



滝川さんは、プレゼンで「皆様を私どもでしかできないお迎え方をいたします。それは日本語ではたった一言で表現できます。おもてなし」と述べました。また、「それは訪れる人を心から慈しみ、お迎えするという深い意味があります。先祖代々受け継がれてまいりました。以来、現代日本の先端文化にもしっかりと根付いているのです」と続けました。



滝川さんのプレゼンは完璧なものでしたが、何よりも「おもてなし」を打ち出したところが素晴らしかったです。彼女は「お・も・て・な・し」と1字ずつ印を切るように発声してから、最後に合掌しながら「おもてなし」と言い直しました。
その場面には、わたしを含めた多くの日本人が感動しました。
「おもてなし」こそは、まさにジャパニーズ・ホスピタリティです。滝川さんが合掌した姿に、IOC委員たちは「理想の日本人」を見たのではないでしょうか。



東京の治安が良いこととか、公共交通機関が充実しているとか、街が清潔であるとか、そういった現実的問題ももちろん大事です。
しかし、「おもてなし」という言葉、そして合掌する姿が日本をこれ以上ないほど輝かせてくれました。かつての日本は、黄金の国として「ジパング」と称されました。これからは、おもてなしの心で「こころのジパング」を目指したいものです。



もともと「おもてなし」の心とは、言葉を交さなくても相手の気持ちを察することです。そして、そのルーツは神道の「神祭」にあるように思います。
2011年11月24日に開催された全国商工会議所「観光振興大会in関門」で「新しい時代の観光」と題するパネルディスカッションが行われ、わたしもパネリストを務めました。
滝川さんは東京の「おもてなし」力を華麗にアピールしましたが、当時のわたしは北九州の「おもてなし」力をアピールしたのです。



小倉ゆかりの小笠原流礼法は、「思いやりの心」「うやまいの心」「つつしみの心」という3つに支えられています。礼法とは、相手のことを思いやる「こころ」のエネルギーを「かたち」にして、現実の人間関係に変化を及ぼす「魔法」なのです。
いま、大いなる「おもてなし」の時代に向かって、礼法の見直しが求められるでしょう。


*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年10月18日 佐久間庸和