徳は「得」である
言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、陽明学者・安岡正篤の言葉です。
安岡正篤は、何よりも「徳」というものを重んじた人でした。
彼によれば、「徳」とは宇宙生命より得たものであり、人間はもちろん一切のものは徳のためにあるとしました。そして、徳は「得」であると喝破したのです。
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安岡によれば、わたしたちの徳の発生する本源、己れを包容し超越している大生命を「道」と言います。ですから道とは、これによって宇宙や人生が存在し、活動している基本となるもの、これなくして宇宙も人生も存在することができない、その本質的なものが道で、それが人間に発して徳となります。これを結んで「道徳」と言うのです。したがって、その中には単に道徳のみならず、政治も宗教もみんな含まれています。
「徳」とは、非常に幅の広い言葉なのです。
徳で大事なことは「陰徳」を積むということです。古代中国の学者・淮南子の言葉に「陰徳ある者は必ず陽報あり、陰行ある者は必ず昭名あり」というのがあります。人知れず善行を積んだ者には、必ず天があらわに幸福を報い授ける。
また隠れた善行のある者は、必ずいつかは輝く名誉があらわれてくるのです。
陰徳を積むとは、心を貯金することです。「心に貯金」ではなく、「心を貯金」。
わたしたちの心そのものを、つまり人間の元金を積んでいくことです。
黙々と人知れず徳を積んでいくと、誰かが手伝ってくれるようになります。すると、自分が努めた以上に「徳高」が知らない間に上昇していることを感じるのである。
人のみでなく、事業もしかり。『菜根譚』には「徳は事業の基なり。
いまだ基の固からずして、棟宇の堅久なるものはあらず」という言葉があります。
事業を発展させる基礎になるのは、その事業者の徳です。
基礎が不安定な建物が堅固であったためしはありません。1人ひとりが立派な人間になるために「個人の徳積み」をするように、事業にも「徳積み」が求められます。仕事や事業を成功させ、社会に貢献する。すべての経営者は、自己のみならず事業の徳を積み、広く世間から尊敬されるような徳のある事業、すなわち「徳業」をつくらなければならないのです。
なお、今回の安岡正篤の言葉は、『孔子とドラッカー新装版』(三五館)にも登場します。
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*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。
2013年9月8日 佐久間庸和拝