儀式とは何か

ブログ「秋季例大祭」に書いた神事と朝粥会の後は、「平成心学塾」を開催しました。
最初に、佐久間進会長による訓話が行われました。
佐久間会長は、ブログ「全互協40周年記念式典」に書いたように、全互協の初代会長として40周年記念祝賀会で挨拶を行う予定でしたが、とんでもない儀式テロリストが一方的に式次第を変更し、せっかくの会長の挨拶が台無しになりました。儀式を壊す人に、儀式産業をやる資格はありません。政治家は選挙によって、また時流や運によって大きく立場が移ろいますが、その人が行った儀式テロは後世まで語り継がれることでしょう。


平成心学塾のようす



本日の平成心学塾では、そのときの初代会長挨拶が改めて述べられました。
まず会長は、協会の草創期の思いでを語った後、「経営理念をしっかり持ち、志を曲げずにやっていけば必ず花は咲く」と述べました。
そして、「この年齢になって、改めてこの冠婚葬祭互助会事業に誇りを感じるようになった。この事業は、日本人を幸せにする力を持っている」と語りました。



いま話題の出光佐三の「人間尊重」や「互譲互助」について触れた後、日本人の「和」の精神の大切さを訴えました。自分の利益だけを考えず、どう社会に役立つか。どのように社会貢献をするか。そのヒントを聖徳太子の「憲法十七条」や、『古事記』や『日本書紀』のルーツではないかともいわれる謎の書物である『秀真伝(ホツマツタエ)』の内容などを紹介しながら、他人のために尽くすこと、他人の幸せを優先することの大切さについて説明しました。


冠婚葬祭互助会事業への想いを述べる佐久間会長



最後は、戦後の経済的困窮から生まれた冠婚葬祭互助会は、「無縁社会」などと呼ばれる現代日本人の精神的困窮を救うことができると述べました。非常に格調高く素晴らしい訓話で、わたしも聴きながら感動をおぼえました。この内容の豊かなメッセージが40周年記念祝賀会の場できちんと語られなかったことは返す返すも残念です。
なお、祝賀会でしっかりと伝えることができなかった佐久間会長のメッセージは、互助会保証株式会社様のご好意により同社のメールマガジン9月号(9月1日発信)の冒頭で掲載していただけることになりました。互助会保証様のご厚情に心より感謝いたします。
サンレーグループ関係者は、ぜひ保証会社のメルマガをお読み下さい。


わたしも訓話をしました

儀式とは魂のコントロール術である



佐久間会長に続いて、わたしも訓話をしました。今日は、ブログ「儀式文化創造シンポジウム」で述べたような儀式に関する話などを以下のようにしました。
まず、わたしは、人間というのは3つの要素からできていると思います。「肉体」と「精神」と「霊魂」です。「BODY」と「MIND」と「SOUL」です。この魂(SOUL)をコントロールするというのが、儀式の本来の役割ではないかと思います。結婚式とは新郎新婦の魂を結ぶこと、葬儀とは故人の魂を送ることです。そのパワーは確実に効果があります。
そう、「カタチ」には「チカラ」があるのです。
魂を扱うという意味で、結婚式や葬儀をはじめとする人生儀礼は、宗教と切っても切り離せません。日本人の「こころ」は神道・仏教・儒教という3つの宗教が支えていますが、最近の結婚式の流れを見てもわかるように、キリスト教もそこに加わっているかもしれません。宗教と切り離されたセレモニーは単なるイベントであって、けっして儀式ではないと思います。


「カタチ」には「チカラ」がある



儀式の果たす主な役割は、まず「時間を生み出すこと」にあります。
日本における儀式あるいは儀礼は、「年中行事」と「人生儀礼」の二種類に大別できますが、これらの儀式はその意義として「時間を生み出す」役割を持っていました。
そして、年中行事が「一年」の生業に基づくのに対して、人生儀礼は誕生から成長を経て死へと向かう、人間の「一生」に基づく儀式です。現代での代表的なものには初宮参り、七五三、成人式、そして結婚式、葬式が挙げられます。
このように、人生儀礼は「時間を生み出す」ことに共通性を有しています。


儀式とは人生を肯定すること



わたしは、「時間を生み出す」という儀式の役割は「時間を楽しむ」に通じるのではな
いかと思います。「時間を愛でる」と言ってもいいでしょう。
日本には「四季」があり、「春夏秋冬」があります。
わたしは、儀式というものも季節のようなものだと思います。
「ステーション」という英語の語源は「シーズン」から来ているそうです。人生とは1本の鉄道線路のようなもので、山あり谷あり、そしてその間にはいくつもの駅がある。季節というのは流れる時間に人間がピリオドを打ったものであり、鉄道の線路を時間に例えれば、まさに駅はさまざまな季節ということになります。
そして、儀礼を意味する「セレモニー」も「シーズン」に通じるのではないでしょうか。七五三や成人式、長寿祝いといった人生儀礼とは人生の季節、人生の駅なのです。
わたしたちは、儀式によって人生という時間を愛でているのかもしれません。そう、季語のある俳句という文化のように・・・・・。そして、それはそのまま人生を肯定することにつながります。そう、儀式を行うとは人生を肯定することなのです。


新しい儀式の創造について



また、先のシンポジウムのテーマであった「儀式文化創造」に焦点を当てました。
そして、これからの新しい儀式の創造について話しました。
まず最初に、儀式の創造には以下の3つのポイントがあると述べました。
1.よく知られた儀式のイノベーション(七五三、成人式、長寿祝いなど)
2.あまり知られていない儀式の紹介(十三祝い、清明祝い、元服式など)
3.まったく新しい儀式の創出(1万日祝い、3万日祝いなど)



そしてこの中では、1の「よく知られた儀式のイノベーション」が一番可能性を持っていると思います。七五三・成人式・長寿祝いに共通することは、基本的に「無事に生きられたことを神に感謝する儀式である」ということ。いずれも、神社や神殿での神事が欠かせません。最近、神事を伴わない衣装・写真・飲食のみの「七五三プラン」や、同級生との飲み会に過ぎない「成人式プラン」などがありますが、こんなものは儀式でも何でもなく単なるイベントです。


儀式文化で「感謝」の心を呼び起こす



わたしは、「おめでとう」という言葉は心のサーブで、「ありがとう」という言葉は心のレシーブであると思っています。現在の成人式では「おめでとう」(サーブ)と言われるばかりですね。しかし今後は、これまでの成長を見守ってきたくれた神仏・先祖・両親・そして地域の方々へ「ありがとうございます」という感謝を伝える(レシーブ)場を提供していくことが必要だと考えます。ぜひ、サーブとレシーブ、「おめでとう」と「ありがとう」が活発に行き交うような社会づくりのお手伝いをしたいです。そのような社会こそ、「ハートフル・ソサエティ」なのです。
まずは、「命を与えられ、これまで生かしていただいたことに感謝する」こと。
儀式文化のイノベーションは、「感謝」の心を呼び起こすことでもあるのです。


七五三や成人式のイノベーションを語りました



それから具体的な儀式イノベーションの例として、まず「七五三」があります。以前、わが社が事業展開していた千葉県や茨城県の一部地域では七五三を盛大に祝うことで知られています。ホテルなどで行う結婚披露宴のように盛大な七五三の披露宴で、費用が総額100万円を超えるお祝いもあります。着物からドレスやタキシードへのお色直し、千歳飴を配るキャンドルサービス、ケーキ入刀などが行われとても豪華なパーティスタイルもあります。
七五三の今後については、(金額的にも)透明性の高い「神事の提供」がテーマでしょう。
気軽かつ意義のある「機会の創出」がポイントだと思います。
七五三本来の意味(価値)の啓蒙が必要ではないでしょうか。



次に、「成人式」のイノベーションです。成人式は、第二次大戦後に国民の祝日として制定されました。この日は「大人になったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝い励ます」とされます。儀式としての伝統は浅いのです。
成人式の現状ですが、「荒れる成人式」というのはもはや代名詞になった感があります。
最近では同窓会的意味合いが強く、成人式が「七五三現象」しています。2000年以降は、学齢方式を成人の対象にする自治体が多くなったため、事実上中学・高校の同窓会的な意味合いとなっています。会場では久しぶりに会った友人との談笑に熱中する余り式典自体が騒がしくなり、本来一人前の大人としての決意をすべき場である成人式がかえってモラル低下を露見させる場となっています。この現象を「七五三現象」というのです。
経済的にも独立していない現代の20歳の若者へ「着物を着せて写真を撮らせる」といった行為は、親にとっては「七五三」と同じような感覚なのかもしれません。したがって成人者自体が「社会人としての自覚を促す」といった本来の意義に気づかないのかもしれませんね。



成人式について考察すると、現在は神事を行うというよりも、振袖を着て式典の場に行き友人と語らうといった側面が大ですが、やはり成人したことに対する感謝の場としても神事は必要でしょう。一方、日本人の民族衣装である着物(振袖)を着る機会を創出しています。
荒れる成人式」といった問題点ばかりが多数マスコミに取り上げられますが、その際に本来の成人式のあり方や、意義について再確認する良い機会になっているのも事実です。
実際に、ブログ「沖縄の新成人」に書いたように、沖縄においては国際通りを自主清掃する新成人者の姿も報道されており、この中にはわが社の社員もいました。成人式では、人が集うという「冠婚葬祭」の意義はすでにクリアできています。戦後生まれの新たな日本の伝統文化の一つとして、成人式は未来へつながる可能性は高いと言えるでしょう。


長寿祝いのイノベーションを説明しました



そして、シンポジウムでも大きな反響のあった「長寿祝いのイノベーション」です。
わが社が事業展開している沖縄では、「生年祝い(トゥシビー)」という長寿祝いが行われています。これは、生まれた干支の年に無病息災を願って祝う儀式です。
主なものに「十三祝い(13歳)」「還暦祝い(61歳)」「七十三祝い(73歳)」「八十五祝い(85歳)」「トーカチ/米寿祝い(88歳)」「カジマヤー祝い(97歳)」がある。
97歳のトゥシビーを「カジマヤー」と呼び、地域あげて盛大に祝います。当人に風車を持たせてパレードをすることもあります。カジマヤーの意味は、童心にかえって「カジマヤー」(風車)で遊ぶ儀式から命名されたとする説と、死装束をまとって模擬葬式を行って「カジマヤー」(七つの辻)を回る儀式からつけられたとする説があります。
これらのトゥシビーとは別に「トーカチ」とよばれる88歳(米寿)の祝いもあります。これは米を山盛りにして、斗かき(トーカチ)に見立てた竹筒を立て、酒を振る舞います。



わが社の結婚式場「マリエールオークパイン那覇」では、年間に大小合わせて約200件近くのトゥシビーを施行しています。規模が大きいもので200名を超えます。まあ、100名程度がスタンダードでしょうか。準備から施行までの期間が約3か月程度、50名程度と規模が小さければ1ヵ月程度のものもあります。ありがたいことに、披露宴に次ぐ大きな収益の柱となっています。何よりも長生きをされた高齢者をみんなで祝うことは「人は老いるほど豊かになる」というメッセージを発信することであり、人生を肯定することです。わたしは、この沖縄の生年祝いを日本中に広めたいと心から思っています。


ファミリー・ツリーを提案しました



また、3の「まったく新しい儀式の創出」として、「ファミリー・ツリー」を提案しました。
これは、家族の樹を植えて、新しいファミリー・セレモニーを創造するものです。
現在、樹木葬が注目されているます。わが社でも樹木葬の紹介を行っていますし、さらには「鎮魂の森」というプロジェクトも計画しています。
墓の代用としての樹木だけではなく、新婚のカップルに桜の苗木をプレゼントして植えていただくというサービスも現在計画中です。結婚の記念に新郎新婦が桜の苗木を植え、「○○家の樹」というプレートをかけるというものです。それを毎年、春になると訪れるのだが、だんだん子どもや孫ができて、家族みんなで花見をするわけです。
公園の桜ではなく、自分たちの家族の樹に咲いた桜を花見するなんて素敵ですね!
もともと「ファミリー・ツリー(family tree)」とは、大地に根を張り、受け継がれる家族の系譜という意味で、新しい家族の儀式にふさわしいと言えるでしょう。



最後に、「冠婚葬祭互助会の使命」について以下のように話しました。
わたしは、人間という存在は神話と儀式を必要としていると思います。社会と人生が合理性のみになってしまったら、人間の心は悲鳴を上げてしまうのではないでしょうか。
結婚式も葬儀も、人類の普遍的文化です。多くの人間が経験する結婚というち慶事には結婚式、すべての人間に訪れる死亡という弔辞には葬儀という儀式によって、喜怒哀楽の感情を周囲の人々と分かち合うという習慣は、人種・民族・宗教を超えて、太古から現在に至るまで行われています。この2大セレモニーはさらに、来るべき宇宙時代においても継承されることが予想される「不滅の儀式」であり、人類が存続する限り永遠に行われることでしょう。
しかし、結婚式ならびに葬儀のスタイルは、国により、あるいは民族や宗教によって、きわめて著しい差異があります。それは世界各国のセレモニーというものが、人々の心の支えともいうべき「民族的よりどころ」となって反映しているからです。


儀式こそは「文化の核」である



結婚式や葬儀をはじめとした人生儀礼を総合的に執り行う冠婚葬祭互助会の最大の使命とは何か。それは、日本の儀礼文化を保存・継承し、「日本的よりどころ」を守る、すなわち日本人の精神そのものを守るだと確信します。
その意味で、冠婚葬祭互助会の全国団体である一般社団法人・全日本冠婚葬祭互助協会(全互協)とは、茶の湯・生け花・能・歌舞伎・相撲などの日本の伝統文化を継承する諸団体と同じ役割、いや、儀式というさらに「文化の核」ともいえる重要なものを継承するという点において、それ以上の役割を担っていると思います。
全互協は、一般社団法人になりました。しかし、本来は一番先に公益社団法人の認定を与えられてもおかしくないほど日本人にとって必要不可欠の団体であると思います。
先日、全互協はめでたく40周年を迎えました。今度は50周年に向けて、全互協の加盟互助会すべてが力を合わせて日本の儀式文化を守っていきたいものです。それは、そのまま、日本人の「こころ」を守ることなのです。


互助会が日本人の「こころ」を守る!



平成心学塾」を終えた後は、数件の打ち合わせ、訪問者との面談などをこなしました。
一息ついてホテルの外に出ると、まぶしい陽射しが照りつけてきました。
やはり、まだまだ秋は遠いようです。午後から、神戸に出張します。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年8月17日 佐久間庸和