武田信玄(1)


人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり




言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、戦国武将の武田信玄の言葉です。
信玄といえば多くの名言を残していますが、中でも「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」という言葉が最も有名でしょう。これは「人材こそが強固な守りになる。情けは人の心をつなぐことが出来る。しかし仇が多ければ結局は国を滅ぼす事になることになってしまう」という意味ですが、まさに日本的マネジメントの清華であると思います。


人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり(信玄)



「仁政」という言葉があります。人を生かす政=まつりごとのことです。景気をよくしたり、所得を多くしたり、あるいは公共の施設を充実させたり、国民が限りなく生成発展し、進歩向上してゆくように導く政治、これを仁政と言うのです。
江戸時代中期の傑僧として知られる白隠禅師は、甲州の武田家を絶賛していました。
白隠禅師によると、甲州が強固になったのは「武力」ではなく「仁政」にあったといいます。


風林火山の帝王学 武田信玄 (プレジデント・クラシックス)

風林火山の帝王学 武田信玄 (プレジデント・クラシックス)


「仁」という字は人偏と二から成っています。これはどういう意味かというと、人は一人だけでは生きてゆくことはできない。もう一人の他人があってはじめて人の世界は成り立っている。親子、兄弟、師弟、友人同士、すべて人と人との相互依存関係である。同様に企業には経営者と従業員があり、企業と取引先や株主といったステークホルダーとの関係がある。
国も一国だけでは存在せず、他の国があってはじめて世界が成り立っているというのです。
何事も一つだけでは成り立たず、二つあってはじめて成り立つのです。その二つがうまく調和し、共栄共存したときに生まれるものこそ「仁」です。よって仁政とは、政を司る者と民との関係がうまくいっていることで、武田信玄は自らの国司という立場と武将、足軽、民との関係をきっちり作り上げていきました。この根底に仁があったのです。
信玄は常に「仁」という言葉を口にしていました。


人は石垣! 企業は人!



白隠禅師はまた「乱りに他国へ兵を動かすのは、強盗武士の常にするところである」と述べている。この基準によれば、ブッシュやフセインなども強盗武士であり、他社のシマを平気で荒らして強引な営業戦略をとる企業などにも当てはまるでしょう。 
仏教の「慈悲」やキリスト教の「愛」にも通じる「仁」は、優しく、母のような徳であると言えます。その徳を備えた組織や集団こそは無敵であることを示した言葉こそ、「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」ではないでしょうか。
なお、今回の武田信玄の名言は『孔子とドラッカー新装版』(三五館)にも登場します。


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2013年6月2日 佐久間庸和