孔子(2)


君子は和して同ぜず
     小人は同じて和せず




言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、『論語』に出てくる孔子の言葉です。
いま、村上春樹氏の新刊『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(講談社)を読んでいるのですが、主人公の多崎つくるが地元の仲良しグループの4人の親友から絶交されて絶望するという冒頭のくだりを読んで、友人との「和」について考えました。
「和」といえば日本文化のキーワードとされていますが、『論語』には「和」が出てくる有名な語句があります。「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」です。


論語 (岩波文庫 青202-1)

論語 (岩波文庫 青202-1)


40歳を前にして、わたしが『論語』を読んだときにも同様の不思議な感覚を味わいました。孔子の言葉の1つひとつが、すべて当時のわたしが抱えていた問題に触れており、しかもその解決策を明快に示しているような気がしたのです。
実例を1つあげれば、当時の私は悪友との飲酒の習慣に悩んでいました。悪友たちとつるんでいたら、仕事の時間が削られてしまうが、腐れ縁はなかなか断ち切りがたいものです。どうしようかと非常に悩みました。そんなとき、『論語』を開くと、「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」と書いてあったのです。



「和」とは、自分の主体性を堅持しながら他と協調すること。
そして「同」とは、付和雷同のことです。
したがって、この言葉の意味は「君子は協調性に富むが、無原則な妥協は排斥する。小人は逆である。やたらと妥協はするけれども、真の協調性には欠けている」となります。
わたしは結局、和と同を混同していたのです。和が重視され、強調されるのは、それ自体は結構なことです。でも、その前提として、1人ひとりの主体性がしっかりと確立されていなければなりません。それがあって、初めて本物の和が生まれてくるのです。そのことを悟ったわたしは、きっぱりと悪友との関係を断ち切りました。



わたしは、『論語』によって道を踏み外さずに済んだように思います。
わたしの考え方の基本にあるものは、やはり『論語』です。
もっと、当ブログで『論語』に書かれた孔子のメッセージを紹介したくなりました。

孔子とドラッカー 新装版―ハートフル・マネジメント

孔子とドラッカー 新装版―ハートフル・マネジメント

*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年4月15日 佐久間庸和