世界一の老福都市

今日の「毎日新聞」朝刊に第8回目の「北九州発 ハートフル通信」が掲載されました。
今回のタイトルは、「世界一の老福都市を!」です。



毎日新聞」5月3日朝刊



「老人漂流社会」という言葉をよく聞きます。
今年1月に放映されたNHKスペシャルの番組名ですが、高齢者が自らの意志で「死に場所」すら決められない現実が広がっているというショッキングな内容でした。
 一人暮らしで体調を壊し、自宅にいられなくなった高齢者。しかし、病院や介護施設も満床で入れません。そのために、短期入所できるタイプの一時的に高齢者を預かってくれる施設を数か月おきに漂流し続けなければならないといいます。超高齢社会を迎えた日本では、一人暮らしの高齢者、いわゆる「単身世帯」が500万を突破する勢いです。「住まい」を追われて漂流する高齢者があふれ出す異常事態が、すでに起き始めています。



わたしは、全国の独居老人には、どんどん北九州に移住してほしいと真剣に願っています。
もともと、わたしは北九州市を「高齢者福祉特区」にするべきだと訴え続けてきました。
そして「人は老いるほど豊かになる」というコンセプトに基づく「老福都市」をイメージし、そのモデルとして高齢者複合施設であるサンレーグランドホテル北九州市の八幡西区に作りました。いわゆるセレモニーホールと高齢者用のカルチャーセンターなどが合体した前代未聞の施設として話題になりました。
昨年からは高齢者介護事業にも進出、「隣人館」をオープンしました。現在、日本一のローコスト有料老人ホーム運営をめざしています。「隣人館」の1号店は飯塚市に作りましたが、これからは北九州市内にも展開する予定です。



近代工業社会はひたすら「若さ」と「生」を謳歌し、讃美してきました。
しかし、高齢化社会では「老い」と「死」を直視して、前向きにとらえていかなければなりません。今こそ幸福な「老い」と「死」のデザインが求められているのです。
日本は世界でもっとも高齢化が進行している先進国ですが、その中でも北九州市はもっとも高齢化が進行している政令指定都市です。つまり、北九州市は世界一の超高齢化都市と言っても過言ではないでしょう。



高齢化が進む日本の諸都市、世界各国の大都市にとって北九州市とは自らの未来の姿そのもの。ぜひ、高齢者が多いことを「弱み」ではなく「強み」ととらえていくべきです。
かつて、公害都市から環境都市へと見事に変身した北九州市なら、世界一の高齢者先進都市に生まれ変われるはず。「禍転じて福となす」の発想で、人が老いるほど豊かになるという世界一の「老福都市」をつくりたいものですね。


老福論―人は老いるほど豊かになる

老福論―人は老いるほど豊かになる

*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年5月3日 佐久間庸和