東アジアに礼の思想を!

今日の「毎日新聞」朝刊に第7回目の「北九州発 ハートフル通信」が掲載されました。
今回のタイトルは、「東アジアに礼の思想を!」です。



毎日新聞」4月5日朝刊



ブログ『海賊とよばれた男』で紹介した本が大きな話題を呼び、ベストセラーにもなっています。『宮本武蔵』や『竜馬がゆく』のような青春歴史小説であり、歴史経済小説でもありますが、主人公のモデルは、出光興産の創業者・出光佐三です。
出光興産は、北九州市の門司からスタートしました。現在は内科・小児科医院となっている創業の地は、わが社の「門司港紫雲閣」のすぐ近くです。本当に歩いて数分の距離で、近くには「出光美術館」もあります。  



地元・北九州に縁の深い実業家・出光佐三の名は幼少の頃から知っていました。
何より、わが社の創業者である佐久間進会長が深く尊敬していました。
その影響で「人間尊重」というわが社のミッションが決めらたという経緯があります。
「人間尊重」とは出光佐三が終生口にし続けた言葉だからです。
詳しくは、名言ブログ「出光佐三(1)」をお読み下さい。


出光商会創業の地で



『海賊とよばれる男』は、太平洋戦争で日本が敗戦する場面から始まります。大東亜共栄圏を築くという大日本帝国の野望は無惨に消滅しましたが、じつはそれ以前に出光佐三は東アジアに一大ネットワークを構築していたのです。
1929年(昭和4年)の出光商会(出光興産の前身)の支店別売上高を見ると、1位が大連で2位が下関、以下は京城、門司、台北、博多、若松の順になっています。満州、韓国、台湾の各都市の支店と北九州の支店が並んでいるリストを見て、わたしの胸は高まりました。出光がいち早く東アジアに進出できたのは、門司に本店を置いていたからです。



福岡県には、福岡市と北九州市という2つの政令指定都市があります。
ともに朝鮮半島やアジア大陸に近いという地理的、歴史的背景から「アジアの玄関口」と呼ばれ、アジア諸国との交流に力を注いでいます。
交通も非常に便利で、飛行機ならソウルまで1時間10分、上海まで1時間30分、台北まで2時間20分で飛べます。これは、それぞれ、関西空港、東京、札幌に行くのと同じ所用時間です。これほど近い東アジアですが、昨今の日本と中国、韓国との関係は良好であるとは言えません。いや、尖閣諸島竹島の問題をめぐって険悪そのものです。北朝鮮に至っては脅威の対象でしかありません。 



しかし、わたしは思うのです。日本も含めて東アジア諸国はいずれも儒教国であり、国民には孔子の「礼」の思想が流れているはずです。
もともと「礼」は他国の領土を侵さない規範として古代中国で生まれました。今こそ、究極の平和思想としての「礼」を思い起こす必要があります。ちなみに、わたしは「礼」と「人間尊重」は同義語であると思っています。



この連載エッセイが掲載された今日、わたしは門司港にある「出光美術館」を訪れました。同館で開催される「花鳥のしらべ〜琳派・文人画から放菴まで」の開会式に参加するためです。そこで、図らずも出光佐三翁のご長男である出光昭介氏(出光興産名誉会長・出光美術館館長)、お孫さんである出光佐千子氏(出光美術館学芸員青山学院大学准教授)にもお会いできて望外の喜びでした。同館内にある「出光史料館(門司)」では佐三翁の偉業を学ぶこともでき、非常に充実した時間を過ごしました。同館の売店では、『人間尊重五十年』出光佐三著(春秋社)をはじめ、たくさん本や展覧会カタログを購入しました。



そして帰社すると、なんと新刊『徹底比較!日中韓 しきたりとマナー』(祥伝社黄金文庫)の見本が送られてきており、その偶然に驚きました。まさに、シンクロニシティ
このような意味のある偶然の一致があったときは、宇宙から何らかのミッションが与えられているそうです。それは、やはり「礼=人間尊重」を基軸とした東アジアの平和に貢献せよということでしょう。『人間尊重五十年』と出来上がったばかりの『徹底比較!日中韓 しきたりとマナー』を交互に眺めながら、そのように思いました。


シンクロニシティで結ばれた2冊



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年4月5日 佐久間庸和