還暦と年祝い

東京に来ています。21日の14時半から、國學院大學の渋谷キャンパス「常磐松ホール」において第4回「國學院大學オープンカレッジ特別講座〜人生儀礼への取組みをより深く知る」が開催され、わたしも参加しました。ブログ「國學院大學オープンカレッジのお知らせ」で紹介した講座で、一般社団法人全日本冠婚葬祭互助協会と互助会保証株式会社の共催です。


國學院大學の渋谷キャンパスにて

國學院大學オープンカレッジ特別講座が行われました



ブログ「人生儀礼の世界」で紹介したように、第1回目の特別講義は5月20日に開催されました。テーマは「豊かに生きる:人生儀礼の世界」で、國學院大學教授の石井研士先生によって、1時間半にわたり中味の濃い講義を受けました。
またブログ「誕生と生育」で紹介したように、第2回目の特別講義は6月24日に開催され、「生まれる:誕生と生育」のテーマで、宗教民俗学者の田口祐子氏が講義を行いました。
さらにブログ「成人式と結婚式」で紹介したように、第3回目の特別講義は7月15日に開催され、「大人になる:成人式と結婚式」のテーマで石井先生が講義を行いました。


第4回特別講義のようす

講義する新谷先生



そして第4回目の今回のテーマは「老いる:還暦と年祝い」で、國學院大學教授の新谷尚紀先生が特別講義を行いました。新谷先生は日本民俗学の第一人者で、テレビ番組などにもよく出演される人気教授です。伊勢神宮出雲大社の研究家としても知られています。


日本経済新聞」2010年9月5日朝刊



新谷先生といえば、ブログ「葬儀めぐる議論」で紹介したように、2010年9月5日の「日本経済新聞」の「SUNDAY NIKKEI」で、新谷先生は拙著『葬式は必要!』を写真入りで取り上げて下さいました。また、ブログ『暮らしの中の民俗学1 一日』ブログ『暮らしの中の民俗学2 一年』ブログ『暮らしの中の民俗学3 一生』で紹介した本の監修者でもあります。



さて、新谷先生の特別講義は以下のような構成で行われました。
1.算賀と還暦 (1)算賀(2)還暦(3)厄年
2.定年と年金 (1)定年と恩給(2)国民年金制度(3)介護保険制度
3.高齢社会の到来
4.村隠居と宮座と長老 (1)60歳で村隠居(2)宮座の世代構成(3)長老衆の役割


聴講生たちに問いかける新谷先生

わたしも真剣に聴きました



新谷先生は「この中で正月にはマイカーに注連縄を飾る人は何人いますか?」あるいは「喜寿の祝いをされた方を知っている人はいますか?」などと次々に質問して、聴講生たちに挙手を求められました。新谷先生いわく、年中行事や通過儀礼というのはすべからく「緊張する」時に存在するとのこと。たとえば正月ですが、去年までは良かったけれど今年は悪いものが入ってくるかもしれないとういうことで、正月飾りなどを行うわけです。厄年なども同じ理屈ですね。七五三や長寿祝いも同様です。


動画を使って説明して下さいました

沖縄の「トーカチ」を紹介する動画



新谷先生は、動画を使って「宮座」や「米寿」などを紹介して下さいました。
非常に興味深かったのは、沖縄の「トーカチ」という儀礼です。これは一種の生前葬で、元気な老人が横たわって死んだフリをします。死者を装っている老人の周囲に家族が集まって泣き声をあげると、そこで老人が起き上がるというものです。これには、「私はもう死んだのだから、後は残されたあなたたちがきちんとやりなさい」という意味と「もう、いつ死んでもいい。死ぬには怖くない」という意味の両方があるそうです。


第4回特別講義のようす

第4回特別講義のようす



わたしは「トーカチ」の動画を観ながら、長寿祝いとは「死を恐れずに前向きに生きるための儀式」であることを確認しました。かつて、「日本民俗学の父」である柳田國男は太平洋戦争での敗戦直前に『先祖の話』を書きました。そこで柳田は、「過去の伝統を参考にしないで新しいものだけに飛びついても混乱するだけである」と喝破しています。


國學院は日本民俗学のメッカです!



柳田國男といえば折口信夫と並んで日本民俗学創始者として知られています。
2人は、ともに國學院大學の教授でした。國學院は日本民俗学のメッカということで、そのへんの話も興味深かったです。社会学や人類学といった欧米から入ってきた学問は帝国大学が受け皿となってきましたが、民間伝承学の延長線上にある日本民俗学は私学である國學院から産声を上げました。昭和10年、國學院大學からついに日本民俗学が誕生しました。


佐久間会長のことを考えました



わたしは、実の父でもあるサンレーグループ佐久間進会長のことを考えました。佐久間会長は國學院の出身ですが、日本民俗学が誕生した昭和10年にこの世に生を受けています。また、佐久間会長は亥年ですが、柳田國男折口信夫の2人も一回り違う亥年であると、新谷先生の講義で初めて知りました。わたしは、佐久間会長が國學院で学び、日本民俗学のまさに中心テーマである「冠婚葬祭」を生業としたことに何か運命的なものを感じました。


内容の非常に充実した講義でした



次回の特別講義は、いよいよ第5回目の最終回です。
11月11日(火)の14時半から16時まで、「終活を考える」と題して互助会保証株式会社の藤島安之社長とわたし一条真也が登壇いたします。なお、司会は石井研士先生に務めていただきます。実り多き連続講義の締め括りとして、また未来につながる伏線となる問いかけを目指して、一生懸命務めさせていただきます。


常磐松ホール前で、新谷尚紀先生と



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2014年10月22日 佐久間庸和