たった一字に深い意味を秘めている文字は、世界でも漢字だけです。
そこには、人のこころを豊かにする言霊が宿っています。
その意味を知れば、さらに、こころは豊かになるでしょう。
今回ご紹介するハートフル・キーワードは、「熱」です。



誰でも成功を願わない人はいないでしょう。成功するための条件はいろいろとあるでしょうが、何よりもまず「熱意」というものが求められることに異論はないといます。イギリスの歴史家トインビーは「無気力を克服できるのは熱意のみである」と語り、アメリカの思想家エマーソンは「偉大なことで熱意の力なしで成し遂げられたものは一つもない」と言っています。



熱意とは、明りをともす火力発電機のようなもので、人間を動かし、偉大な業績へと導くものです。眠っているエネルギー、才能、活力を揺り起こし、目標に向かって突進させる力であり、内から溢れ出る力です。人生で熱意を動力源として使う秘訣、それはまず熱意のあるように行動することです。熱意を習慣化してしまうのです。



熱意のある人間は、驀進する蒸気機関車です。あのエネルギーを出すためには、車庫で休んでいるときでも、釜が冷えないようにせっせと石炭を燃やし続ける必要があります。
エドワード・B・バトラーは「誰でも、ときには熱心になるものである。ある人は熱意を持つのがたった30分間であり、ある人は30日間である。しかし、人生で成功するのは30年間の熱意を持ち続ける人間である」と指摘しました。



30年間といわず、もっと長期間にわたって熱意を持ち続け、大成功した人が松下幸之助です。彼は、よく成功の第一条件に「熱意」をあげました。熱意などという平凡な条件こそが、成功するための第一歩であり、同時に最も大切なものであると考えていたのです。
PHP総合研究所社長で現在は参議院議員江口克彦氏によれば、松下幸之助はよく次のように言っていたといいます。
「仕事をする、経営をするときに、何が一番大事かと言えば、其の仕事を進める人、その経営者の、熱意やね。溢れるような情熱、熱意。そういうものをまずその人が持っておるかどうかということや。熱意があれば知恵が生まれてくる」



たとえば、何としてでもこの2階に上がりたいという熱意があれば、ハシゴというものを考えつきます。ところが、ただ何となく上がってみたいなあと思うぐらいでは、ハシゴを考え出すところまで行きません。「どうしても、何としてでも上がりたい。自分の唯一の目的は2階に上がることだ」というくらいの熱意のある人間が、ハシゴを考えつくのです。



松下幸之助が成功した理由は、決して1つに帰することができるものではりません。しかし、もしあえて1つだけ挙げよと言われたら、江口氏は「熱意」であると断言できるそうです。松下幸之助の振る舞いは、いつも熱意というものを頂点として、それを「素直な心」と「誠実さ」が下支えしていたそうです。


これは、「成功へのトライアングル」にほかならないと思います。成功へ至るプロセスを1つのシステムであるとしたら、そのシステムを作動させるものが「成功へのトライアングル」であり、中でも「熱意」はエンジンを動かす火力発電機なのです。
なお、「熱」については、『龍馬とカエサル』(三五館)に詳しく書きました。


龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

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*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2016年6月3日 佐久間庸和