空海とハリー・ポッター


東京にいます。これからスターフライヤーに乗って北九州へ帰ります。
今回は、北九州→東京→シンガポール→東京→北九州という行程でした。
1週間にわたる長い出張でしたが、非常に有意義で実りがありました。
さて、今日の「毎日新聞」朝刊に第34回目となる「北九州発 ハートフル通信」が掲載されました。今回のタイトルは、「空海ハリー・ポッター」です。



毎日新聞」5月29日朝刊



ゴールデンウィークが明けた頃、高野山を訪れました。ちょうど高野山開創1200年を記念して、4月2日から5月21日まで50日の間、弘法大師空海が残した大いなる遺産への感謝を込めて、絢爛壮麗な大法会が執り行われており、わが訪問はその最中でした。
わたしは昨年末に『超訳 空海の言葉』(KKベストセラーズ)を監訳しました。現代人の心にも響く珠玉の言葉は、まさに「永遠の真言」と言えるでしょう。



空海は「お大師さま」あるいは「お大師さん」として親しまれ、多くの人々の信仰の対象ともなっています。宗教家や能書家にとどまらず、教育・医学・薬学・鉱業・土木・建築・天文学・地質学の知識から書や詩などの文芸に至るまで、実に多才な超天才でした。



「即身成仏」の思想を追い求めていた空海は、最後の奇跡を体現させるために、長い五穀断ちをして瞑想後に入定したといいます。真言宗では1000年以上たった今でも、空海高野山奥の院の石室で生きているとされ、毎日食事が進上され続けています。姿の見えなくなった空海が、今なお瞑想を続けているとされているのです。神秘と謎の光に包まれ、加持祈祷で有名な稀代の魔術師でもあった空海は、死後「弘法大師」の称号を受けました。
弘法大師伝説」の言葉通り、空海ほど伝説に彩られた人物はいません。



高野山に登った翌日、わたしは大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を久しぶりに訪れました。ここは昨年オープンした「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」の話題で持ちきりです。映画「ハリー・ポッター」シリーズを知らない人はいないはず。シリーズの全作品が、世界中で爆発的なヒットを記録しました。原作はJ・K・ローリングによるファンタジー小説です。1990年代のイギリスを舞台に、魔法使いの活躍を描いています。



その魔法の世界を再現したテーマパークを大いに堪能しながら、昨日の高野山にどことなくムードが似ている気がしました。思えば、空海ハリー・ポッターも偉大なる魔術師です。空海が平安日本のハリーなら、ハリーは現代イギリスの空海なのかもしれません。両者の背景には、伝説やファンタジーといった豊かな物語世界があります。



「魔法」とは正確にいうと「魔術」のこと。西洋の神秘学などによれば、魔術は人間の意識、つまり心のエネルギーを活用して、現実の世界に変化を及ぼすものとされています。
ならば、冠婚葬祭などのセレモニーも魔法になりうるわけで、わたしは多くの方々を幸せにする「白魔術師」になりたいと思いました。


超訳 空海の言葉』を持って高野山金剛峯寺の正門に立つ

USJ「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」にて



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2015年5月29日 佐久間庸和