佐久間庸和です。
「佛教タイムス」といえば、仏教界で最大の影響力を持つ新聞ですが、その最新号に『死者とともに生きる』一条真也著(産経新聞出版)の書評記事が掲載。一読して、達意の文章に唸りました。こんな書評が一番嬉しいです!
「佛教タイムス」2025年9月25日号
記事には、以下のように書かれています。
「『わが魂の義兄 鎌田東二の御霊に捧げる』
本書の冒頭に掲げられた言葉である。
宗教学者の鎌田氏は本年5月30日に帰幽。著者と鎌田氏には『満月交感』『満月交心』『グリーフケアの時代』といった共著がある。終戦80年に旅立ったのは、なにかしらの縁があるのだろう。
冠婚葬祭事業を手がけるサンレーの経営者である著者は、いわば生死の最前線に位置する存在だ。本書は第1部『死者が生まれる』と第2部『死者はそこにいる』で構成。第1部では、沖縄、広島、長崎、靖国など戦争と深くかかわる地に足を運び、犠牲者を懇ろに供養。それは頻発する災害地にもおよび、能登半島を繰り返し訪れている様子も伝わってくる。さらにオウムの地下鉄サリン事件、日航機事故にも思いを巡らす。第1部はまさに体験を踏まえた上での『死者が生まれる』場の検証であり、顕彰である。
能登半島を訪れた場面をこう叙述する。『わたしは、風になったと思うのも良ければ、お墓の前で泣くのも良いと思います。死者を偲ぶ「こころ」さえあれば、その「かたち」は何でもありだと思っています。その上で、地震で倒壊したお墓を見るのは、それを寄りどこをとする「こころ」たちが行き場を失ったようです』
注目したいのは『こころ』たちが行き場を失ったようだという指摘である。生者からの視点だけではなく、じつは死者の『こころ』も含意していると理解できる。
第2部は、古今東西の生死に関する著作から、宗教学的な視座を交えて生死を検討していく。こちらは生死論の学問編と言えるだろう。
あとがきにも興味深い言葉がある。『死者を忘れて、生者の幸福などありません』がそれである。宮沢賢治は『世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない』と言った。著者の言葉は、これと共鳴している。生きていれば鎌田東二氏も共感するだろう」
2025年9月30日 佐久間庸和拝
