ハートピア


わたしは、これまで多くの言葉を世に送り出してきました。
この際もう一度おさらいして、その意味を定義したいと思います。
今回は、「ハートピア」という言葉を取り上げることにします。



「ハートピア」とは、その名の通りに「心の理想郷」です。
そして、心の理想郷としての「ハートピア」には2つの種類があります。1つは天国とか極楽とか呼ばれる、あの世の理想郷のことで、これを「ハートピア・ゼア」と呼びます。


「ハートピア・ゼア」を説いた『リゾートの思想』と『リゾートの博物誌



リゾートの思想』(河出書房新社)および『リゾートの博物誌』(日本コンサルタントグループ)にも書いたように、リゾートをはじめとした地上の空間づくりに関わるとき、最大のヒントになるのはハートピア・ゼアのイメージでしょう。なぜなら、ユートピアやパラダイスの豊富なバリエーションとは異なり、世界中の各民族・各宗教における天国観は驚くほど共通性が高く、それゆえイメージが普遍的だからです。心理学者のユングも言うように、神話は民族の夢であり、天国こそは人々が「かく在りたい」という願いの結晶。その夢や願いを地上に投影したものこそ「理想土」なのです。


理想郷の図式



もう1つの「ハートピア」は、この世でわれわれが創造するべき愛と平和 の波動に包まれた心の共同体で、これを「ハートピア・ヒア」と呼びます。ハートピア・ヒアは幸福な人々がつながった心のネットワークです。 真の心の理想郷は、私的幸福である「ハートフル」と公的幸福である「ハートピア」が調和したときに初めて生まれます。
1996年に生誕100周年を迎えた宮沢賢治は『農民芸術概要綱論』の序論で次のように告げています。 「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない、自我の意識は個人から集団的社会宇宙と次第に 進化する、この方向は古い聖者の踏みまた教へた道ではないか、新たな時代は世界が一の意識になり生物となる 方向にある、正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである、われらは世界の まことの幸福を索ねよう、求道すでに道である」



また、われわれの心は一見バラバラのようでも実は深いところでつながっていることを心理学者のカール・グスタフユングは発見しました。ユングはすべての人間の心に共通する底流があると考え、それを「集合的無意識」と 名付けました。われわれの心が深部でつながっているのなら、賢治のいうように「世界が一の意識になり」 「世界のまことの幸福」を獲得することも夢ではないはずです。そのときこそ、ハートピア・ヒアがわれわれ の前に出現するのです。
この2つの「ハートピア」については、1992年に上梓した『ハートビジネス宣言』(東急エージェンシー)で詳しく説明しました。


2つの「ハートピア」を説いた『ハートビジネス宣言



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2014年6月1日 佐久間庸和