グリーフケアへの取り組み


21日の13時から業界誌の取材がありました。
総合ユニコムが発行している「月刊フューネラルビジネス」の取材です。
取材のテーマは「グリーフケアへの取り組みについて」でした。


「月刊フューネラルビジネス」の取材のようす

真剣な表情で取材されました



「月刊フューネラルビジネス」編集部の小見喜保課長と井村直樹さんの2人がサンレー本社を訪問、ムーンギャラリー小倉本店で取材を受けました。
お二人とも屈強な体格の持ち主で、しかも非常に真剣な顔で取材をされるので、正直言って、ちょっと怖かったです。(笑)まるで、鬼刑事の取り調べを受けているようでした。(苦笑)


グリーフケアについてお話しました



冗談はともかく、まずは「グリーフケアに取り組もうとしたきっかけは何ですか?」と質問されました。「釈尊」ことブッダは、「生老病死」を4つの苦悩としました。わたしは、人間にとっての最大の苦悩は、愛する人を亡くすことだと思っています。老病死の苦悩は、結局は自分自身の問題でしょう。でも、愛する者を失うことはそれらに勝る大きな苦しみではないでしょうか。配偶者を亡くした人は、立ち直るのに3年はかかると言われています。幼い子どもを亡くした人は10年かかるとされています。こんな苦しみが、この世に他にあるでしょうか。
一般に「生老病死」のうち、「生」はもはや苦悩ではないと思われています。
しかし、ブッダが本当に「生」の苦悩としたかったのは、誕生という「生まれること」ではなくて、愛する人を亡くして「生き残ること」ではなかったかと、わたしは思います。


愛する人を亡くした人へ ―悲しみを癒す15通の手紙

愛する人を亡くした人へ ―悲しみを癒す15通の手紙

それでは、ブッダが苦悩と認定したものを、おまえごときが癒せるはずなどないではないかという声が聞こえてきそうです。たしかに、そうかもしれません。でも、日々、涙を流して悲しむ方々を見るうちに、「なんとか、この方たちの心を少しでも軽くすることはできないか」と思いました。そして、「 親を亡くした人は、過去を失う。 配偶者を亡くした人は、現在を失う。子を亡くした人は、未来を失う。恋人・友人・知人を亡くした人は、自分の一部を失う」という真実に気づきました。それぞれ大切なものを失い、悲しみの極限で苦しむ方の心が少しでも軽くなるようお手伝いをすることが、わが社の使命ではないかと思うようになったのです。
そして、わたしは『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)を書きました。さらに2010年6月21日、愛する人を亡くした人たちの会である「月あかりの会」を発足させたのです。
月あかりの会」では、「癒し(癒しのカウンセリング)」、「集い(合同慰霊祭など)」、「学び(カルチャー教室やセミナー、講演会)」、「遊び(旅行レクリエーション)」を通じて悲しみを癒すきっかけと、自分らしく元気に歩んで行くお手伝いをする会を催しています。


月あかりの会」の取り組みを説明しました



月あかりの会」の現状ですが、入会費・年会費は無料です。会員数は7476名(H26・4・20現在)で、男女比は男性3割、女性7割と女性が多く、年齢層はやはり死亡者が高齢の場合が多いため、その連れあいの方やお子さんの世代が多いです。活動内容としては2ヶ月に1回のバスハイク(希望者制・有料)などが中心で、平均年齢は78歳です。
また、ムーンギャラリー主体として、体操・カラオケのカルチャー教室などを開催しています。NPO法人ハートウェル21としても、54講座・600名参加のカルチャー教室を開いており、こちらは3000名以上の会員さんがいます。ムーンギャラリーは、グリーフケアの活動・情報の発信基地としての役割とともに、遺族が集える場所の提供を行っています。
このような活動をふまえて、2011年11月には『のこされた あなたへ』を上梓しました。


グリーフケア社員教育とどう取り組んでいるか?」という質問もありました。
わが社の葬祭部門では、愛する人を亡くした人に対して何ができるのかどのような言葉をおかけすればよいのかを全社員が毎日考えています。でも、必要以上に言葉に頼ってはなりません。もちろん、通夜や告別式で、悲しんでおられるお客様に慰めの言葉をかけることは必要なことです。しかし、自分の考えを押し付けたり、相手がそっとしておいてほしいときに強引に言葉をかけるのは慎むべきです。ただ、黙って側にいてさしあげるだけのことがいいこともある。共感して、一緒に泣くこともある。微笑むことがいいこともある。いまだ理想には程遠いですが、なんとか「愛する人を亡くした人へ」のメッセージをお届けする会社にしたいです。
なお、わが社には214名の1級葬祭ディレクターが在籍していますが、現在は上級心理カウンセラーの資格取得にも力を入れており、こちらは42名が取得しています。


多くの質問を受けました



グリーフケアの課題と限界」についても質問されました。わたしたちは、さまざまな催しや企画を行い、遺族の方々に参加していただくことによって、新たな気持ちで社会に参加できるきっかけを提供させていただきたいと思っています。しかしながら、「故人を忘れてしまうのではなく、新しい意味を見つけたい」などの希望に対し、具体的な解決策を与えることができるかといえば、それは大変難しいことであり、フューネラル業者だけでは限界があります。そのため、フューネラル産業だけでなく、医療界や宗教界などとも連携していく必要があります。東京大学医学部大学院教授で東大病院救急部・集中治療部長の矢作直樹先生との対談本『命には続きがある』(PHP研究所)の刊行は、その第一歩であると考えています。


命には続きがある 肉体の死、そして永遠に生きる魂のこと

命には続きがある 肉体の死、そして永遠に生きる魂のこと

「フューネラル産業がグリーフケアに取り組まなければならない理由・必要性」についても質問されました。これまで、冠婚葬祭業は労働集約型産業として見られていた。しかし、知識集約型産業への転換を計っていかなければ葬儀の価値の創造を行っていけません。多様化する顧客のニーズにこたえるためには旧態然とした構造では対処できません。そのため、わが社では知識労働者を育成するために、ISOや1級葬祭ディレクターなどの継続学習を行ってきました。しかし、さらに高品質なサービスの提供のために「思いやり」「感謝」「感動」「癒し」などのポジティブな心の働きが集約された精神集約型産業へ進化しなければならないと考えます。その中の「癒し」を提供するものとして、グリーフケアは必須のものであり
葬祭業として取り組んで行かなければならないとお答えました。「精神集約型産業」という言葉を初めて聞いたという小見課長は、たいそう大きな声を上げて驚かれていました。



各種の資料を示しながら説明しました

最後に、「フューネラル産業はグリーフケアとどう取り組んでいけばよいのか」という質問がありました。それは、どうすれば現状の葬儀施行の流れの中で遺族の方々の悲しみを軽くするお手伝いができるかを考え、実践していくことが必要になってきます。通夜・葬儀・出棺、そしてグリーフケアを一連の流れとして行っていく体制作りが必要です。そのための人員の育成に必要な継続学習や企画立案、様々な専門機関・宗教者などとの協力体制を整えていくことなどが必須だと言えるでしょう。今日は、そのようなお話をさせていただきました。
このインタビュー記事は、来月号の「月刊フューネラルビジネス」に掲載されます。
また、6月25日にパシフィコ横浜で開催される「フューネラルビジネスフェア2014」のセミナーで、わたしが講演させていただくことになっています。



終始、笑顔の絶えないインタビューでした



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2014年4月21日 佐久間庸和