修    



たった一字に深い意味を秘めている文字は、世界でも漢字だけです。
そこには、人のこころを豊かにする言霊が宿っています。
その意味を知れば、さらに、こころは豊かになるでしょう。
今回ご紹介するハートフル・キーワードは、「修」です。



現在、世の中には「終活ブーム」の風が吹き荒れています。
しかし、もともと「終活」という言葉は就職活動を意味する「就活」をもじったもので、「終末活動」の略語だとされています。正直に言って、わたしは「終末」という言葉には違和感を覚えます。そこで、「終末」の代わりに「修生」、「終活」の代わりに「修活」という言葉を提案しました。「修生」とは文字通り、「人生を修める」という意味です。




よく考えれば、「就活」も「婚活」も広い意味での「修活」であるという見方ができます。
学生時代の自分を修めることが就活であり、独身時代の自分を修めることが婚活だからです。
そして、人生の集大成としての「修生活動」があるわけです。
かつての日本人は、「修業」「修養」「修身」「修学」という言葉で象徴される「修める」ということを深く意識していました。これは一種の覚悟です。いま、多くの日本人はこの「修める」覚悟を忘れてしまったように思えてなりません。



ずいぶん以前から「高齢化社会」と言われ、世界各国で高齢者が増えてきています。
各国政府の対策の遅れもあって、人類そのものが「老い」を持て余しているのです。
特に、日本は世界一高齢化が進んでいる国とされています。しかし、この国には、高齢化が進行することを否定的にとらえたり、高齢者が多いことを恥じる風潮があるようです。それゆえ、高齢者にとって「老い」は「負い」となっているのが現状です。人は必ず老い、そして死にます。「老い」や「死」が不幸であれば、人生はそのまま不幸ということになります。
これでは、はじめから負け戦に出るのと同じではないですか。


人生の修め方

人生の修め方

人生の修活ノート

人生の修活ノート

そもそも、老いない人間、死なない人間はいません。
死とは、人生を卒業することであり、葬儀とは「人生の卒業式」にほかなりません。老い支度、死に支度をして自らの人生を修める。この覚悟が人生をアートのように美しくするのではないでしょうか。わたしは、『人生の修め方』(日本経済新聞出版社)において、「豊かに老いる」そして「美しく人生を修める」ヒントのようなものを書きました。それを実践するための新エンディングノートが『人生の修活ノート』(現代書林)です。ともに、ぜひ、ご一読を!



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2017年5月8日 佐久間庸和