論語とマネジメント

11日の夜、「齋藤アカデミー」で特別講義をしました。
社会起業大学・九州校が主催する、これからのリーダーを育成する私塾です。
受講生のほとんどがMBAの取得者です。ブログ「真のリーダーとは?」で紹介した「知のダンディ」こと齋藤貞之先生が座長を務めておられます。


会場は旦過市場のすぐ近くでした

社会起業大学が入居するビルの前で

社会起業大学・九州校の入口にて

開始前に齋藤先生と打ち合わせ



会場は、北九州市小倉の中心部にある旦過市場のすぐ近くの社会起業大学・九州校でした。
わたしは18時20分頃に現地に到着し、齋藤先生と簡単な打ち合わせをしました。
齋藤アカデミー」のチラシにはチラシには「マネジャーから真のリーダーへ〜MBAを超えて〜」として、以下のように書かれています。
北九州市立大学名誉教授齋藤貞之と各界のTOPリーダーとが語るNEXTリーダーとは・・・マネジメントとは、サイアンスであるとともにアートである。マネジメントがアートであるがゆえに、リベラル・アーツを欠いたエグゼクティブは真のリーダーたりえない。今回の『齋藤アカデミー』は、専門的な管理技法を学ぶビジネススクール(MBA)では学べないリベラル・アーツを中心にリーダーとはなにか、真のエグゼクティブに求められる資質とはなにかを徹底した議論をとおして学ぶことを課題とする」



ゲスト講師陣は、以下の通りです。
●哲学・思想・宗教  安田登(下掛宝生流ワキ方能楽師
●環境・情報  熊野英介(アミタホールディングス(株)代表取締役会長)
●マネジメント  岩崎卓也
        (ダイヤモンド社ハーバードビジネスレビュー』元編集長)
●文学・歴史  林田暢明(TAO CAFE代表)
論語とマネジメント  佐久間庸和((株)サンレー代表取締役社長、作家)
表象文化論  吉川哲郎(北九州市立大学国語学部教授)
●文学  今川英子北九州市立文学館館長)
生態学生命誌  中村桂子(JT生命誌研究館 館長)
●工学・工業化学  松永守央
         (北九州産業学術推進機構 理事長、元・九州工業大学学長)
●ケースメソッド  齋藤顕一((株)ForeSight&Company代表取締役
●マネジメント  齋藤貞之
        (夢追いサポートセンター理事長、北九州市立大学名誉教授)


講義スタート!

サンレーとは

S2M」についても

ハートフル」とは

禮=ハートフル

情報とは何か

孔子ドラッカー

論語ドラッカー思考



講義は18時40分からスタートしました。講師紹介もないままに、わたしは「論語とマネジメント」をテーマに話しました。事前に拙著『孔子とドラッカー 新装版』(三五館)を読んでもらった上での特別講義です。冒頭、わたしは、サンレーという社名の意味から説明しました。その意味は「SUNRAY(太陽の光)」「産霊」「讃礼」と3つあります。そして、わが社の経営理念である「S2M」、さらには、わがキーワードである「ハートフル」についても説明しました。


ハートフル・ソサエティ』を書いた理由



また、若い経営者の方が多かったので、以下のような話をしました。
2001年10月に社長に就任して以来、経営学ピーター・ドラッカーの全著作を精読し、ドラッカー理論のもとに会社を経営していると自負している。彼の遺作にして最高傑作である『ネクスト・ソサエティ』(ダイヤモンド社)に感動し、これをわたしへのドラッカーからの問題提起ととらえ、『ハートフル・ソサエティ』(三五館)というアンサーブックを上梓したくらい彼をリスペクトしている。


孔子を学ぶ理由

孔子からのメッセージ

「孝」について

「悌」について



また、40歳を直前にして「不惑」たらんとし、その出典である『論語』を40回読んだ。古今東西の人物のなかでもっとも尊敬する孔子が開いた儒教の「礼」の精神を重んじ、「礼経一致」をもって会社経営にあたっている。
今から約2500年前、中国に人類史上最大の人間通が生まれた。
言わずと知れた孔子である。孔子は、「人の道」としての儒教を開いた。
ドラッカーが数多くの経営コンセプトを生んだように、孔子は「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」といった人間の心にまつわるコンセプト群の偉大な編集者であった。孔子の言行録である『論語』は東洋における最大のロングセラーとして多くの人々に愛読された。特に西洋最大のロングセラー『聖書』を欧米のリーダーたちが心の支えとしてきたように、日本をはじめとする東アジア諸国の指導者たちは『論語』を座右の書として繰り返し読み、現実上のさまざまな問題に対処してきたのだ。


ドラッカー思考について

マルクスvsドラッカー



「マネジメントの父」とも呼ばれたドラッカーは、世界最高の経営思想家でした。経営学そのものの創始者でもあります。ウィーン生まれですが、ナチスを嫌ってアメリカに移住し、長らくカリフォルニア州クレアモント大学の大学院で教授を務めていました。20世紀において、世界のビジネス界に最大の影響を与えた思想家であり、東西冷戦の終結、転換期の到来、社会の高齢化をいち早く知らせるとともに、「マネジメント」という考え方そのものを発明しました。また、マネジメントに関わる「分権化」「目標管理」「経営戦略」「民営化」「顧客第一」「情報化」「知識労働者」「ABC会計」「ベンチマーキング」「コア・コンピタンス」、そして「選択と集中」などの理念の生みの親で、それらのコンセプトを発展させました。


自己実現について



ドラッカーは、「自己実現」の大切さを強調してきました。そして、そのための「自己刷新」や「自己啓発」の大切さを説きました。わたしは、よく講演などで若いビジネスピープルに「自己刷新」という考え方を伝えています。「あなたは何によって記憶されたいか?」「あなたは何をしているのですか?」「あなたは何になりたいですか?」といった問いを投げかけ、自己刷新・自己啓発自己実現の重要性を訴えました。


マネジメントについて



それから、「マネジメント」について語りました。
「マネジメント」という考え方は、ドラッカーが発明したものとされています。
ドラッカーが発明したマネジメントとは何でしょうか。
ドラッカーは、『新しい現実』(上田惇生訳・ダイヤモンド社)で、こう述べています。
「マネジメントとは、人にかかわるものである。その機能は人が共同して成果をあげることを可能とし、強みを発揮させ、弱みを無意味なものにすることである。」
「マネジメントとは、ニーズと機会の変化に応じて、組織とそこに働く者を成長させるべきものである。組織はすべて学習と教育の機関である。」
このように、マネジメントとは一般に誤解されているような単なる管理手法などではなく、徹底的に人間に関わってゆく人間臭い営みなのです。
そして「会社は社会のもの」というドラッカー思考のキモを説明しました。


わが社が提供するもの


ドラッカーは、企業の2つの基本的機能として、マーケティングイノベーションを定めました。また、「顧客の創造」としてのマーケティングと「価値の創造」としてのイノベーションを、マネジメントに不可欠の2つの要素と位置づけてもいます。ドラッカーいわく、マーケティングとは「顧客の創造」である。では、顧客とはいったい誰でしょうか。顧客とは、企業にとっては製品やサービスを買ってくれる消費者であり、病院にとっては患者であり、大学にとっては学生です。
ドラッカーいわく、マーケティングは顧客からスタートします。すなわち顧客の現実、欲求、価値からスタートするのです。「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」と問うことが重要なのです。顧客を満足させることこそ、会社の使命であり、目的です。そして、自社が何の会社であるかを明らかにできるのは顧客のみです。自社がどのような顧客の欲求に対応し、どのような顧客満足に貢献しようとしているのかによって定められるのです。わたしは、自身が経営するサンレーが何を売っているかということも話しました。


イノベーションは知識から!



それから、「イノベーション」について話しました。
ドラッカーは、企業の2つの基本的機能として、マーケティングイノベーションを定めました。また、「顧客の創造」としてのマーケティングと「価値の創造」としてのイノベーションを、マネジメントに不可欠の2つの要素と位置づけてもいます。ドラッカーの師である経済学者シュンペーターは何よりも「イノベーション」という考え方を重視しました。
資源を陳腐化した古いものから新しい生産性の高いものへと移すイノベーションこそ、経済の本質であると主張し、その基盤となる「起業家精神」の存在を重視しました。
起業家の行なう不断のイノベーションが経済を変動させるというのです。


リーダーシップについて



そして、「リーダーシップ」について語りました。
ドラッカーが唱えた「チェンジ・リーダー」についての説明を行い、人類史上最大の社会的イノベーションとしての「明治維新」についても自説を展開しました。


未来創造について



それから、「未来創造」について語りました。
ドラッカーによれば、未来を知る方法もまた2つしかないといいます。
1つの方法は、すでに起こったことの帰結を見ること。未来を知るもう1つの方法は、自分で未来をつくることです。具体的には、子どもを1人つくれば、人口が1人増えるといった話です。これなら、誰でも未来をつくることができますね。それと同じように、たとえ小さな会社でも何か事業を起こせば、世の中を変えてしまう可能性をもつのです。歴史はそうやってつくられるのだとドラッカーは言います。歴史とは、ビジョンを持つ1人ひとりの起業家がつくっていくものだというのです。そして、90分の講演を終えると、大きな拍手をいただき、感激しました。


講義のトークセッションのようす

齋藤先生と激論を交わしました




講義の後は休憩を挟んで、齋藤先生とのセッショントークの時間です。
お互いに昔からよく知っている仲ですので、齋藤先生とわたしはガチンコで経営や社会についての意見を交わしました。その根底には、ともに「人間尊重」への想いがあったのではないでしょうか。受講生の方々からも多くのガチンコ質問が出ました。


一流の人間とはどういう人間ですか?」

礼儀正しい人間です!

サンレーのV字回復の秘密は?

実践したドラッカー理論について説明しました



「ずばり、一流の人間とはどういう人間ですか?」という質問には、わたしは「真の教養を持っている人間です。すなわち、礼儀正しい人間です」と答えました。
「リーダーに最も必要なものは何だと思いますか?」という質問には、わたしは「M&Aです。ただし、企業買収ではなく、Mission(使命)&Ambition(志)です」と答えました。
さらには、「サンレーのV字回復の秘密は?」というど直球の質問もあり、わたしは「選択と集中」「イノベーション」「知識化」などのドラッカー理論を具体的に実践した話をしました。すべての質問に真摯にお答えました。トークセッションを終えると、すでに22時を過ぎていました。勉強熱心な経営者の方々、そして齋藤先生と語り合ったことは大きな刺激になりました。
「齋藤アカデミー」の今後の御発展をお祈りいたします。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2017年4月12日 佐久間庸和