『老人クラブ、カーネギーで歌う』  

連載100回達成記念に、過去の「ハートフル・ブックス」をご紹介しています。
第46回目は、「サンデー新聞」2011年12月3日号に掲載されました。
わたしは、『老人クラブカーネギーで歌う』小島修著(岩波書店)を紹介しました。


「サンデー新聞」2011年12月3日号



わたしが社長を務める株式会社サンレーが創立50周年を迎えました。
創立45周年のときも、50周年のときも、「シルバーカラオケ大会」という周年記念イベントを行いました。各地で予選を行い、1000名を超える方々が参加、文字通り「北九州で一番歌がうまい」高齢者を決定するという内容でした。



その決勝大会は小倉の松柏園ホテルで開催され、わたしも立ち合わせていただきました。
好きな歌を歌われる時の高齢者の方々の幸せな顔が印象に残りました。「人は老いるほど豊かになる」はわが持論ですが、そこには歌の存在が欠かせないと思った次第です。



今回ご紹介する本は、まさに歌によって人生を豊かにした高齢者たちの実話です。
著者は、元新聞記者やフリーライターとして活躍した人です。大学時代から男声合唱団の委員長で、副指揮者として鳴らした人でもあります。その著者は、神奈川県川崎市老人クラブの会長に就任し、合唱を始めます。 そのとき、「将来の夢は、カーネギーホールですね」という冗談を言うのですが、それが4年後に本当に実現してしまったという内容です。



もちろん、簡単に実現できるような夢ではありませんでした。
基礎からの歌と踊りの特訓、旅行社との値下げ交渉、地域と行政への支援要請などなど、本書にはさまざまな苦闘ぶりが描かれています。ひたむきに求めた「夢舞台」の感動的な体験は、さらに三世代交流へとつながります。開かれた明日の「シニアクラブ」像を提唱し、高齢者が幸せに生きることができる社会への提言でした。




著者は、老人クラブの会長として、会員たちを引き連れて渡米しました。
そして、あのカーネギーホールの舞台に立って歌ったのです。世界最高の音楽の殿堂で開かれた、著者たちのシニアクラブ・コーラスを主体とする日米音楽親善演奏会には2000人ものお客様がつめかけてくれました。その上、満員の聴衆から大声援が送られました。



この「カーネギーの奇跡」について、著者は述べています。
「それは、ひたむきに音楽を追い求め、彼の地の人々と心を通わせようとした者たちへの『天上からの贈り物』といっていいほどの現象であった。この感動的な夢舞台を通じて、私は音楽や踊りが国境とともに年齢を超え、人と人とをつなぐ、かけがえのないものであることを改めて全身に刻みつけた」
人は老いるほど豊かになる。そして、ひたむきな人には贈りものがあるのです。
本書は、前向きに生きる意欲が湧いてくる本です。


老人クラブ、カーネギーで歌う――奇跡はこうして実現した

老人クラブ、カーネギーで歌う――奇跡はこうして実現した


*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2017年3月15日 佐久間庸和