九国大ドラッカー講義

天下布礼」に休みなし。ブログ「九州国際大学の客員教授に就任しました」に書いたように、わたしは一昨年から九州国際大学九国大、KIU)の客員教授となりました。「教養特殊講義」を担当しているのですが、その講義が12日の16時20分から行われました。


九州国際大学のキャンパスで

冒頭、松井先生から御挨拶をいただきました



ブログ「九国大の孔子講義」で紹介したように、前回は9月27日に「孔子からのメッセージ」と題した特別講義を行いました。前回の評判がクチコミで広まったようで、この日は前回を上回る数の学生さんが集まってくれました。まず講義に先立ち、就職・進路部長で国際関係学部教授の松井貴英先生から御挨拶がありました。続いて登壇したわたしは、前回の講義に対する学生さんの感想を披露しました。学生さんの感想には胸が熱くなるようなメッセージが込められており、感激しました。わたしは「九国大の学生さんたちが幸せな人生を送るヒントになるような内容のある講義をしなければ」という強い想いが湧いてきました。


やあ、みなさん、お元気ですか?!

ドラッカー思考』の内容に沿って話しました



この日は、『最短で一流のビジネスマンになる!ドラッカー思考』(フォレスト出版)の内容に沿って、「自己実現」「マネジメント」「マーケティング」「イノベーション」「リーダーシップ」「未来創造」という6つのドラッカー思考を紹介し、自分の考えも述べさせていただきました。


ドラッカーとは何者か?

ドラッカー著書と功績を紹介



2001年10月に冠婚葬祭会社の社長に就任して以来、わたしは経営学ピーター・ドラッカーの全著作を精読し、ドラッカー理論のもとに会社を経営していると自負しています。彼の遺作にして最高傑作である『ネクスト・ソサエティ』(ダイヤモンド社)に感動し、同書をわたし個人に対するドラッカーからの問題集ととらえ、『ハートフル・ソサエティ』(三五館)というアンサーブックを上梓したくらい彼をリスペクトしています。そして、2009年のドラッカー生誕100周年の年に『ドラッカー思考』を上梓したのです。


ドラッカーからの問いに答える

ドラッカーに対する熱い想いを述べました



「マネジメントの父」とも呼ばれたドラッカーは、世界最高の経営思想家でした。経営学そのものの創始者でもあります。ウィーン生まれですが、ナチスを嫌ってアメリカに移住し、長らくカリフォルニア州クレアモント大学の大学院で教授を務めていました。
20世紀において、世界のビジネス界に最大の影響を与えた思想家であり、東西冷戦の終結、転換期の到来、社会の高齢化をいち早く知らせるとともに、「マネジメント」という考え方そのものを発明しました。また、マネジメントに関わる「分権化」「目標管理」「経営戦略」「民営化」「顧客第一」「情報化」「知識労働者」「ABC会計」「ベンチマーキング」「コア・コンピタンス」、そして「選択と集中」などの理念の生みの親で、それらのコンセプトを発展させました。


マルクスvsドラッカー

ドラッカー思考(1)自己実現



ドラッカーは、「自己実現」の大切さを強調してきました。そして、そのための「自己刷新」や「自己啓発」の大切さを説きました。わたしは、よく講演などで若いビジネスピープルに「自己刷新」という考え方を伝えています。今日も学生さんに、「あなたは何によって記憶されたいか?」「あなたは何をしているのですか?」「あなたは何になりたいですか?」といった問いを投げかけ、自己刷新・自己啓発自己実現の重要性を訴えました。


ドラッカー思考(2)マネジメント

「マネジメント」について語りました



それから、「マネジメント」について語りました。
「マネジメント」という考え方は、ドラッカーが発明したものとされています。
ドラッカーが発明したマネジメントとは何でしょうか。
ドラッカーは、『新しい現実』(上田惇生訳・ダイヤモンド社)で、こう述べています。
「マネジメントとは、人にかかわるものである。その機能は人が共同して成果をあげることを可能とし、強みを発揮させ、弱みを無意味なものにすることである。」
「マネジメントとは、ニーズと機会の変化に応じて、組織とそこに働く者を成長させるべきものである。組織はすべて学習と教育の機関である。」
このように、マネジメントとは一般に誤解されているような単なる管理手法などではなく、徹底的に人間に関わってゆく人間臭い営みなのです。
そして「会社は社会のもの」というドラッカー思考のキモを説明しました。


ドラッカー思考(3)マーケティング

「事業の定義」とは何か



ドラッカーは、企業の2つの基本的機能として、マーケティングイノベーションを定めました。また、「顧客の創造」としてのマーケティングと「価値の創造」としてのイノベーションを、マネジメントに不可欠の2つの要素と位置づけてもいます。ドラッカーいわく、マーケティングとは「顧客の創造」である。では、顧客とはいったい誰でしょうか。
顧客とは、企業にとっては製品やサービスを買ってくれる消費者であり、病院にとっては患者であり、大学にとっては学生です。


みんながメモをしていました!

わが社が提供するものについて語りました



ドラッカーいわく、マーケティングは顧客からスタートします。すなわち顧客の現実、欲求、価値からスタートするのです。「われわれは何を売りたいか」ではなく、「顧客は何を買いたいか」と問うことが重要なのです。顧客を満足させることこそ、会社の使命であり、目的です。そして、自社が何の会社であるかを明らかにできるのは顧客のみです。自社がどのような顧客の欲求に対応し、どのような顧客満足に貢献しようとしているのかによって定められるのです。わたしは、自身が経営するサンレーが何を売っているかということも話しました。


互助会は「人の道」を売っている!

イノベーション」について語りました



それから、「イノベーション」について話しました。
ドラッカーは、企業の2つの基本的機能として、マーケティングイノベーションを定めました。また、「顧客の創造」としてのマーケティングと「価値の創造」としてのイノベーションを、マネジメントに不可欠の2つの要素と位置づけてもいます。ドラッカーの師である経済学者シュンペーターは何よりも「イノベーション」という考え方を重視しました。
資源を陳腐化した古いものから新しい生産性の高いものへと移すイノベーションこそ、経済の本質であると主張し、その基盤となる「起業家精神」の存在を重視しました。
起業家の行なう不断のイノベーションが経済を変動させるというのです。


イノベーションについて語りました

ブルー・オーシャン戦略について

ドラッカー思考(5)リーダーシップ

チェンジ・リーダーとは何か

社会的イノベーションとしての「明治維新」について

ドラッカー思考(6)未来創造

ドラッカーの法則」を説明しました



そして、「リーダーシップ」について語りました。
ドラッカーが唱えた「チェンジ・リーダー」についての説明を行い、人類史上最大の社会的イノベーションとしての「明治維新」についても自説を展開しました。
それから、「未来創造」について語りました。
ドラッカーによれば、未来を知る方法もまた2つしかないといいます。
1つの方法は、すでに起こったことの帰結を見ること。彼自身の予測についても、すでに起こったことの帰結、つまりすでに起こった未来を知らせたにすぎないそうです。そうやって、さまざまな兆候から、ドラッカーソ連の崩壊を予測し、それを見事に的中させました。
未来を知るもう1つの方法は、自分で未来をつくることです。具体的には、子どもを1人つくれば、人口が1人増えるといった話です。これなら、誰でも未来をつくることができますね。それと同じように、たとえ小さな会社でも何か事業を起こせば、世の中を変えてしまう可能性をもつのです。歴史はそうやってつくられるのだとドラッカーは言います。歴史とは、ビジョンを持つ1人ひとりの起業家がつくっていくものだというのです。
最後に、わたしは「みなさんが未来を創ってください!」と訴えました。


学生さんからの質問を受けました



特別講義終了後は、学生さんからの質問を受けました。「ドラッカー自己実現についての考えに興味を持ちました。ところで、仕事は何のためにするのでしょうか? お金のためでしょうか? それとも、お金以外の目的があるのでしょうか?」という質問がありました。わたしは、「仕事はミッション(使命)と深く関わっています。自らの仕事にミッションを感じることのできる人は、自分の仕事に誇りを持てる人です。そして、そういう人こそ真に幸福な人です。仕事の誇りが人生の幸福に関わっているのです」とお答えました。また、わたしは「すべての経営者が『人が主役』と考えて人間尊重の経営を行い、すべての労働者が知識労働者として自分の仕事に誇りを抱けるような社会を目指していたのだと思います」とも述べました。


質問には真摯にお答えしました



最後に、わたしは「今日のわたしの講義は広大なドラッカーの世界のほんの一部、ほんの上澄み液に過ぎません。ぜひ、わたしの話を聴いて『ドラッカーって凄い!』と興味を持たれたら、ドラッカーの著作を手に取って下さい。彼の考え方は、必ずやあなた方の人生を豊かにすると思います」と述べました。最後は、盛大な拍手を頂戴して感激しました。
見ると、学生さんたちの顔が心なしか紅潮しているかのように見えました。
講義が終わると、すぐさま小倉の松柏園ホテルに向かいました。この夜、北九州商工会議所の観光・サービス部会の会議、および望年会が開催されるのですが、わたしは同部会の副部会長を務めているのです。翌日からは東京に出張し、副座長を務める「アジア冠婚葬祭業国際交流研究会」に出席し、そのまま沖縄に入ります。「天下布礼」に休みなし!



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2016年12月13日 佐久間庸和