ハリウッド大学院大学講義

東京に来ています。7日の夕方、ハリウッド大学院大学で講義をしました。
監査役を務めている互助会保証株式会社との御縁で、講師を依頼されたのです。
まずは16時前に神谷町の互助会保証株を訪れ、簡単な打ち合わせをしました。
そこから六本木ヒルズのハリウッドプラザにあるハリウッド大学院大学に移動しました。


六本木ヒルズ前で

みなさん、こんばんは!



ハリウッド大学院大学は、ハリウッドビューティ専門学校を運営する学校法人メイ・ウシヤマ学園により、ビューティビジネス専門職大学院として2008年に設立されました。
ビューティビジネスマネジメントにおける高度な知識・スキルを学び、ビューティビジネス修士号を取得することを目的としています。今年から互助会保証とコラボを組み、「フューネラルビジネス講座」が開講されています。先日は、わたしの弟である佐久間康弘も講師を務めました。この講座は外国人の受講生も多いので、わたしは冒頭に「こんばんは。ハロー。ニイハオ。カムサハムニダ!」と言いました。


自己紹介として動画を流しました

決定版 おもてなし入門』を紹介



わたしは、「冠婚葬祭におけるホスピタリティ(おもてなし)」というテーマで講義を行いました。最初に自己紹介としてTV番組に取り上げられた動画を流しました。それから、拙著『決定版 おもてなし入門』(実業之日本社)の内容を中心にお話しました。
2020年のオリンピック開催地が東京に決定したとき、日本中が大きな喜びに包まれました。さまざまな人が行った東京招致のプレゼンテーションの映像も繰り返しテレビなどで流され、ネットでも再生されました。その中で、一番印象に残ったのが、滝川クリステルさんのプレゼンでした。アルゼンチン・ブエノスアイレスのIOC(国際オリンピック委員会)総会で東京がプレゼンテーションを行った際、滝川さんがIOC委員に東京招致を訴えました。流暢なフランス語と、ナチュラルな笑顔・・・・・・これ以上ない適役でした。


講義のようす



滝川さんは以下のように述べました。
「皆様を私どもでしかできないお迎え方をいたします。
それは日本語ではたった一言で表現できます。『お・も・て・な・し』。
それは訪れる人を心から慈しみ、お迎えするという深い意味があります。
先祖代々受け継がれてまいりました。以来、現代日本の先端文化にもしっかりと根付いているのです。その『おもてなし』の心があるからこそ、日本人がこれほどまでに互いを思いやり、客人に心配りをするのです」


サービスとホスピタリティ



さらに、彼女は次のような具体例を挙げました。
「皆様が何か落し物をしても、きっとそれは戻ってきます。
お金の入ったお財布でも、昨年1年間だけでも3000万ドル以上も現金が落し物として警察に届けられました。世界各国の旅行者7万5000人への最新のアンケートでも、東京は世界一安全な街とされました。他にも言われることは、公共交通機関も世界一しっかりしていて、街中が清潔で、タクシーの運転手さんも世界一親切だということです。
その生活の質の高さはどこででも感じていただけます。
また、最高の文化にも浸っていただけます。
世界最高峰のレストラン、ミシュランガイドでは星の数が多い東京。
それらすべてが未来を感じられる街を彩っています。
訪れたすべての方に、生涯忘れ得ない思い出を残すことでしょう」 


サービスとホスピタリティ



この滝川さんのスピーチを聞きながら、「おもてなし」という言葉を再認識した方が多かったのではないでしょうか。いわゆる「サービス」とも「ホスピタリティ」とも違った、日本独特の世界が「おもてなし」です。彼女が「お・も・て・な・し」と一字ずつ印を切るように発声してから、最後に合掌しながら「おもてなし」と言い直した場面には感動しました。彼女が合掌している姿に、IOC委員たちは「理想の日本人」を見たのではないでしょうか。東京の治安が良いこととか、公共交通機関が充実しているとか、街が清潔であるとか、そういった現実的な問題ももちろん大事です。でも、「おもてなし」という言葉、そして合掌する姿が日本をこれ以上ないほど輝かせてくれました。


本日の講義のようす



さて、わたしは創業70周年を超える小倉の松柏園ホテルの三代目として生まれ、幼少の頃はホテル内に住んでいました。ですから、「おもてなし」という言葉は物心ついたときから耳にしていました。
いま、わたしは株式会社サンレーという冠婚葬祭の会社を経営しています。冠婚葬祭の根本をなすのは「礼」の精神です。では、「礼」とは何でしょうか。それは、2500年前に中国で孔子が説いた大いなる教えです。平たくいえば、「人間尊重」ということです。


「おもてなし」のルーツとは・・・



わが社では、「人間尊重」をミッションにしています。本業がホスピタリティ・サービスの提供ですので、わが社では、お客様を大切にする“こころ”はもちろん、それを“かたち”にすることを何よりも重んじています。こうした接客サービス業としては当たり前のことが、一般の方々の「おもてなし」においても、きっと何かのヒントになるのではないかと思います。
日本人の“こころ”は、神道・仏教・儒教の三つの宗教によって支えられており、「おもてなし」にもそれらの教えが入り込んでいます。「おもてなし」は、日本文化そのものです。かつての日本は、黄金の国として「ジパング」と称されました。これからは、おもてなしの心で「こころのジパング」を目指したいものですね。


混ざり合った日本人のこころ



ジャパニーズ・ホスピタリティとしての「おもてなし」こそは、人類が21世紀において平和で幸福な社会をつくるための最大のキーワードであると言えるでしょう。そして、その中心的役割を担うのは日本人であるあなたかもしれません。わが社は「礼業」であることを目指していますが、「礼」を最も重視した人が孔子です。わたしは、孔子こそは「人間が社会の中でどう生きるか」を考え抜いた最大の「人間通」であると確信しています。その孔子が開いた儒教とは、ある意味で壮大な「人間関係学」と言えるでしょう。


「おもてなし」の意味

「禮」について



それから、「おもてなし」の意味について話しました。
「おもてなし」という言葉には2つの意味があるとされています。
基本的には茶事や懐石料理における「おもてなし」ですが、次の2つです。
1.モノを持って成し遂げる → お客様を待遇すること
2.表裏なし → 表裏のないココロでお客様をお迎えすること
この場合のモノとは、季節感のある生花、お客様に合わせた掛け軸、絵、茶器などです。ココロとは、言葉や表情や仕草に表れます。つまりは、「おもてなし」とは、相手を思いやり、相手を喜ばそうという気持ちの表現なのです。


「禮」とは何か?

神社についての動画を流しました



もともと「おもてなし」の心は、言葉を交さなくても相手の気持ちを「察する」ことにあり、そのルーツは神道の「神祭」にあります。ブログ『本当はすごい神道』で紹介した本では、神道研究家の山村明義氏が以下のように述べています。 
「『神祭(しんさい)』は、自然の厳かな雰囲気など目に見えない貴いとされる神々、あるいは太古の昔から人々に畏れられた自然の脅威や、その自然からの恵みを大切に敬う精神性に基づいています。そもそもは、その人がもっとも大切だと思うものに何かを差し上げることが『まつり』の意味のひとつなのです。その場合には、神聖な場所において魂と心を込めて作った食べ物や、『幣帛(へいはく)』という絹布などを神様に差し上げるための『神祭』が執り行われます。これが日本人の『おもてなし』の原型にあるのです」 
なるほど、「おもてなし」の心は、「まつり」から生まれたわけですね。ならば2020年、オリンピックという「地球まつり」において、日本人がそのような「おもてなし」を世界に示すのか。それを考えると、今からワクワクしてしまいます。


「おもてなし」の三位一体について

礼の心でおもてなし


また、「おもてなし」には三位一体としての「もてなし」「しつらい」「ふるまい」があります。
「もてなし」とは、わざわざ足を運んでいただいたお客様に、できるだけ満足して帰っていただくための迎える側の心構えです。また、「しつらい」とは。季節や趣向に合わせて、部屋を調度や花などの飾り付けで整えることで、「室礼」とも書きます。そして、「ふるまい」とは、TPOや趣向にふさわしい身のこなしをすることです。


「ホスピタリティ」と「礼」

小笠原流礼法を動画で紹介

「礼法」についても説明しました

冠婚葬祭は文化の核

冠婚葬祭互助会が提供するもの

互助会の重要性を説く



そして、わたしは小倉ゆかりの小笠原流礼法の話をしました。
小笠原流礼法は、「思いやりの心」「うやまいの心」「つつしみの心」という3つの心に支えられています。礼法とは「人間関係の潤滑油」にして「最強の護身術」でもあります。
相手のことを思いやる「こころ」のエネルギーを「かたち」にして、現実の人間関係に変化を及ぼす「魔法」でもあります。そのルーツは、古代中国で孔子が説いた「礼」にあります。
そんなことを説明した後、「相手の身になって行動する」として、具体的な「おもてなしエピソード」を色々お話しました。


ご清聴ありがとうございました!

講義後は質問を受けました

質問には真摯にお答えました

冠婚葬祭とは人生を肯定すること

寺坂社長にまとめていただきました

わたし自身、良い経験になりました



90分の講義を終えると、質問を受けました。
問題の核心を衝く鋭い質問が相次ぎましたが、その1つ1つに真摯に答えさせていただきました。最後は「おもてなし業は実践心理学であり、冠婚葬祭とは人生を肯定すること」と訴えました。わたしが質問に答え終わると、この日のコーディネーターを務めていただいた(株)冠婚葬祭総合研究所の寺坂社長が総括して下さいました。わたし自身、大変良い勉強になった講義でした。盛大な拍手を頂戴して、感激いたしました。
その後、山中理事長、老舗・承継経営研究所の横澤所長らハリウッド大学院大学の最高経営陣の方々と懇談させていただきましたが、みなさん早稲田の政経の大先輩とわかって感激いたしました。先輩方、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。素晴らしい機会を与えていただいた互助会保証のみなさまには心より感謝いたします。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2016年12月8日 佐久間庸和