『生きるって人とつながることだ!』

連載100回達成記念に、過去の「ハートフル・ブックス」をご紹介しています。
第27回目は、「サンデー新聞」2010年6月11日号に掲載されました。
わたしは、『生きるって人とつながることだ!』 福島智著(素朴社)を紹介しました。


サンデー新聞」2010年5月1日号



本書は、目も耳も不自由な「全盲ろう」の東大教授・福島智からの現代人へのメッセージです。1994年にテレビ番組「徹子の部屋」に出演したとき、著者は黒柳徹子さんの「あなたのような盲ろうの方は、日本にどのくらいいらっしゃいますか?」という質問に対して、「推計2万人。でも、そのほとんどがひっそりと家に閉じこもっておられると思います。ヘレン・ケラーは有名ですが、みなさんの身近にも盲ろう者がいることを、ぜひ知っていただきたいですね」と答えています。




なんと、日本に2万人もの目も耳も不自由な方々がいたとは!わたしは、まったく知りませんでした。それにしても、著者ほど人間関係が豊かな人はいないと思うほど、たくさんの人が周りに集まってきます。その最大の原因は、著者がユーモアに富んだ人であることでした。本書の至るところにも、ダジャレを含めて著者のユーモアが満ち溢れています。
そして、究極の人間関係が夫婦であるとするなら、著者はまことに良き伴侶を得ました。奥さんは、もともとボランティア関係の仕事をしていましたが、盲ろう者である著者と結婚するにあたり、心配する両親や親族を根気強く説得して、見事に愛を実らせました。



著者は、奥さんに対して、「私が住むこのコンディションの悪い『ホームグラウンド』での一緒のプレー(人生)を、あなたがエンジョイしてくれていることは、いつもさりげなく伝わってきます。少なくとも私にとっては、それがどれほど嬉しいことかわかりません」という言葉を贈っています。お互いに思いやりを忘れてしまった、すべての夫婦が噛みしめたい言葉ですね。



そして、東大の「学術博士」の学位を授与された論文において、「人の存在が深い孤独に根ざしながらも、同時に他者により支えられている」という認識にたどりついた著者は、「一方で生存に伴う根元的な孤独の深さがあり、他方でそれと同じくらい強く他者の存在を『憧れる』というダイナミックな関係性がそこにはある。そして、孤独の生を生き抜くためには、他者の存在とそれを確信するためのコミュニケーションが不可欠と結論づけた」と述べます。



そう、生きるって人とつながることなんですね!
著者は、“盲ろう”という世界をリアルにわたしたちにレポートするとともに、人間にとって他者の存在が不可欠であるという真理を教えてくれます。


生きるって人とつながることだ!

生きるって人とつながることだ!


*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2016年11月12日 佐久間庸和