『古事記』


天下布礼」に休みなし! 27日の夜、小さな飛行機で北陸から九州に戻りました。
28日、これから山口県山口市に向かいます。曹洞宗の講演会に呼ばれ、「儀式」と「グリーフケア」について話すのです。明日は、「大人のハロウィン」という「小倉昭和館」のイベントで、女優の秋吉久美子さんにお会いします。名作「異人たちとの夏」も鑑賞します。楽しみ!
さて、「朝日新聞」朝刊に第10回目の「こころの世界遺産」が掲載されました。
今回は、わたしたち日本人の神話である『古事記』を紹介しました。


朝日新聞」10月28日朝刊



古事記』は、『日本書紀』と並んで、日本人にとって最も重要な書物です。
ともに日本の神話が記されており、両書を総称して「記紀(きき)」といい、その神話を総称して記紀神話と呼びます。『古事記』は日本最古の歴史書であり、『日本書紀』は最古の官撰の正史とされます。記紀では、神話が歴史の中に含められ、神々が姿を現して日本の国を整え、やがて人の歴史へと続く流れが一連の出来事として記載されています。



そんな日本神話がなぜ「こころの世界遺産」なのか。
それは、日本神話には世界中の神話の断片が詰まっているからです。
20世紀を代表する文化人類学者のレヴィ・ストロースは、世界各地に散在する神話の断片が『古事記』や『日本書紀』に網羅され集成されている点に注目しました。
構造人類学を提唱した彼は、他の地域ではバラバラの断片になった形でしか見られないさまざまな神話的要素が記紀ほどしっかりと組み上げられ、完璧な総合を示している例はないというのです。いわば、世界の神話の集大成が日本神話であると述べているわけです。



国学者本居宣長は、大著『古事記伝』によって、『古事記』の再評価を図りました。宣長は、漢文によって書かれたがゆえに、さかしらな「漢意(からごころ)」に満ちた書として『日本書紀』を低く評価し、逆に『古事記』を「やまとごころ」の書として絶賛しました。
宣長以降で、『古事記』を生き生きと描き直したのは宗教哲学者の鎌田東二氏による
超訳 古事記』でしょう。来年1月28日、サンレー創立50周年記念に、同書を原作とした、東京ノーヴィレパートリーシアターによる「古事記」の舞台を北九州芸術劇場で上演します。芸術監督は、ロシア功労芸術家のレオニード・アニシモフです。ご期待あれ!



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2016年10月28日 佐久間庸和