『超訳 古事記』

連載100回達成記念に、過去の「ハートフル・ブックス」をご紹介しています。
第21回目は、「サンデー新聞」2009年10月17日号に掲載されました。
わたしは、『超訳 古事記鎌田東二著(ミシマ社)を紹介しました。


サンデー新聞」2009年11月21日号



2012年に編纂1300周年を迎える『古事記』は、『日本書紀』と並んで、日本人にとって最も重要な書物です。ともに日本の神話が記されており、両書を総称して「記紀(きき)」といい、その神話を総称して記紀神話と呼びます。神話には、宇宙と自然の中における人間の位置や人生の意味が説かれています。真理を追求する哲学という営みも神話の中から誕生したとされています。



古事記』は日本最古の歴史書であり、『日本書紀』は官撰による最古の歴史書とされます。記紀においては、神話が歴史の中に含められ、神々が姿を現して日本の国を整え、やがて人の歴史へと続く流れを一連の出来事として記載されています。



20世紀を代表する文化人類学者のレヴィ・ストロースは、世界各地に散在する神話の断片が『古事記』や『日本書紀』に網羅され集成されている点に注目しています。構造人類学を提唱した彼は、他の地域ではバラバラの断片になった形でしか見られないさまざまな神話的要素が日本ほどしっかりと組み上げられ、完璧な総合を示している例はないというのです。いわば、世界の神話の集大成が日本神話であると述べているわけです。


本書は、その『古事記』を、まったく新しい方法で超訳した本です。
とても読みやすいというか、不思議な言語感覚の上質のファンタジー作品を読んだような気がしました。たとえば、最初の「体をもったふたりの神」の頁は次のようにはじまります。「しゅうう...ふぅう...しゅう...ふぅう...しゅうう...ふぅう...しゅうう...ふぅう...風が吹く 風が吹く 天が 宙が 風を 吹く」



まるで、宮沢賢治の『風の又三郎』に出てくる「どっどど どどうど どどうど どどう」を思わせるダイナミックな風の響きに魅了されます。
著者は、京都大学こころの未来研究センターの教授(当時)で、わが国を代表する宗教哲学者として知られています。日本人の「こころ」を知るためにも、ぜひ、お読み下さい。


本書を舞台化したものがブログ「古事記〜天と地といのちの架け橋〜」で紹介した、東京ノーヴィレパートリーシアターによる演劇です。「東京ノーヴィレパートリーシアターは、東京・下北沢を拠点として活動している、レパートリー・シアター劇団です。芸術監督は、ロシア功労芸術家のレオニード・アニシモフで、アントン・チェーホフマクシム・ゴーリキーなどのロシアの戯曲を主要レパートリーとしますが、最近は日本の作品にも意欲的に取り組んでいます。



先月、東京ノーヴィレパートリーシアターはロシア公演を行い、「古事記天と地といのちの架け橋〜」を上演しました。「言語や民族を超えた普遍性がある」として、超満員の大観衆から絶賛を受けました。その話題の舞台が、サンレー創立50周年記念として、来年1月28日(土)、リバーウォーク北九州北九州芸術劇場で上演されます。



サンレー創立50周年記念
古事記天と地といのちの架け橋」
原 作:鎌田東二超訳 古事記
演 出:レオニード・アニシモフ



開催日:2017年1月28日(土)
開 場:15:00
開 演:15:30
会 場:北九州芸術劇場 中劇場
料 金:5,000円(全席指定席)
劇 団:東京ノーヴィレパートリーシアター
主 催:株式会社サンレー 
後 援:朝日新聞社西日本新聞社毎日新聞社、読売新聞西部本社(50音順)


アフター・トーク
宗教哲学者・『超訳古事記』作者 鎌田東二
ロシア功労芸術家 レオニード・アニシモフ
株式会社サンレー代表取締役 佐久間庸和



東京ノーヴィレパートリーシアター
ロシア功労芸術家レオニード・アニシモフを芸術監督に迎え、2004年より「魂の糧となる演劇」の創造を目的に、スタニスラフスキーシステムに基づいた公演活動を続いています。
NOVYI(ノーヴイ)とはロシア語で「新しい」を意味し、「200年後の未来のために、今演劇で出来ること」を合い言葉に、国際シンポジウムや、芸術家育成のためのアカデミーを運営。



わたしたちは、どこから来て、何をめざすのか?
日本人の心のルーツである物語・古事記
その太古から口づてに伝承された神話を
いま、生きた感情で、現代の「儀式」としてよみがえらせます。
古事記 上巻より「天地のはじめ」「国生み」「神生み」「黄泉の国」「天の岩屋戸」を描きます。



STAFF
演出/レオニード・アニシモフ
翻訳/遠坂創三
上演台本/東京ノーヴィレパートリーシアター
衣装デザイン/時広真吾(リリック)
ヘアメイク/佐藤圭
音楽/町田育弥、後藤浩明
マイム指導/山本光洋
演出助手/アルチョム・アニシモフ
出演/東京ノーヴィレパートリーシアター



(チケットに関するお問い合わせ)
サンレー 「古事記」公演事務局
TEL093-551-9950[平日10:00〜17:00]
北九州芸術劇場
〒803-0812
北九州市小倉北区室町1丁目1-1-11 リバーウォーク北九州6F
TEL093-562-2655 FAX093-562-2588
http://www.kitakyushu-performingartscenter.or.jp
【J R】小倉駅より徒歩10分、西小倉駅より徒歩3分
【バ ス】室町・リバーウォーク(リバーウォーク北九州)下車
【乗用車】北九州都市高速小倉駅北ランプから車で5分
【空 港】北九州空港よりエアポートバスで小倉駅まで約40分
リバーウォーク北九州(30分¥150)ほか周辺の駐車場をご利用ください。
公演時は劇場ロビーにてリバーウォーク北九州割引駐車場を販売しています。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2016年10月7日 佐久間庸和