九国大の孔子講義

天下布礼」に休みなし! わたしは、九州国際大学九国大、KIU)の客員教授として「教養特殊講義」を担当しているのですが、その講義が26日の16時20分から行われました。


九州国際大学のキャンパスで

野村副学長からプロフィールを紹介していただきました



この日は、学年を超えた受講希望者を対象に「孔子からのメッセージ」と題する講義を行いました。なかなか面構えの良い学生さんたちが受講してくれました。
冒頭、野村政彦副学長によるプロフィール紹介がありました。
過分なご紹介を受けて恐縮しつつ、わたしは講義を開始しました。


みなさん、はじめまして!

「世界の四大聖人」について



わたしは、パワーポイントを使って講演しました。
まず、孔子の人物紹介や世界史的位置づけから説明しました。
孔子は、紀元前551年に中国の山東省で生まれました。
ブッダとほぼ同時期で、ソクラテスよりは八十数年早い誕生でした。
孔子ブッダソクラテスにイエスを加えて、世界の「四大聖人」です。
孔子は学問に励み、政治の道を志しましたが、それなりのポストに就いたのは50歳を過ぎてからでした。試みた行政改革が失敗に終わって、「徳治主義」という自らの政治的理想を実現してくれる君主を求めて、諸国を流浪したのです。
春秋戦国時代の末期であった当時は、古代中国社会の変動期でした。
つねに「天」を意識して生きた孔子は、混乱した社会秩序を回復するために「礼」の必要性を痛感し、個人の社会的道徳としての「仁」が求められると考えました。
多くの弟子を教えた孔子は、74歳で没します。
死後、彼の言行録を弟子たちがまとめたものが『論語』です。
そして、なぜ孔子を学ぶのか、その理由を説明しました。


学生さんたちの熱気がムンムンでした

孔子を学ぶ理由



それから現代日本に話題を移し、「無縁社会」の話をしました。年間に3万2000人が無縁死し、3万人が自殺する社会に日本がなってしまった大きな原因は、血縁と地縁が弱まったことです。そして、その結果、あらゆる人間関係が希薄化しました。
わたしたちが生きる社会において、最大のキーワードは「人間関係」だと思います。
社会とは、つまるところ人間の集まりです。そこでは「人間」よりも「人間関係」が重要な問題になってきます。そもそも「人間」という字が、人は一人では生きてゆけない存在だということを示しています。人と人との間にあるから「人間」なのです。
だからこそ、人間関係の問題は一生つきまといます。 


現代日本の問題点

人間と人間学



わたしは、人類が生んだあらゆる人物の中で孔子をもっとも尊敬しています。
孔子こそは、人間が社会の中でどう生きるかを考え抜いた最大の「人間通」であると確信しています。その孔子が開いた儒教とは、ある意味で壮大な「人間関係学」です。


五倫五常について

孔子からのメッセージ



孔子は「仁」「義」「礼」「智」といった人間の心にまつわるコンセプト群の偉大な編集者でした。彼の言行録である『論語』は千数百年にわたって、わたしたちの先祖に読みつがれてきました。意識するしないにかかわらず、これほど日本人の心に大きな影響を与えてきた書物は存在しません。特に江戸時代になって徳川幕府儒学を奨励するようになると、教養の中心となりました。そうして儒学は、武士階級のみならず、庶民の間にも普及したのですそして江戸時代の日本において、『論語』で孔子が述べた思想をエンターテインメントとして見事に表現した小説が誕生しました。滝沢馬琴が書いた『南総里見八犬伝』です。江戸の大ベストセラーになりました。その中に登場する八犬士が持っていた玉には、それぞれ「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」の文字が浮かび上がりました。この8つの文字こそ、孔子儒教思想のエッセンスとしてまとめたコンセプト群であり、わたしたち日本人が最も大切にした「人の道」のキーワードでした。


「仁」について語りました

「礼」について語りました

「智」について語りました

「信」とは何かを具体的に説明



わたしは、「仁」「義」「礼」「智」「忠」「信」「孝」「悌」についての話をしました。
「仁」の項目では、結局は「思いやり」の心が最も大切であると言いました。
「礼」の項目では、孔子は高貴な人にだけでなく、障害者や高齢者などをはじめ、あらゆる人に礼を尽くしたことを述べました。そして、「礼」とは「人間尊重」であると訴えました。
「智」の項目では、善悪の区別を知ることが重要であると訴えました。
「信」の項目では、「信がなければ人は動かない」と述べました。


学生さんから質問を受けました

質問には真摯にお答えしました



講義の後は、質疑応答です。最前列に座っていた学生さんから「8つのメッセージの中で現代日本人に最も欠けているものは何ですか?」と質問され、わたしは「すべてが欠けているが、あえて1つ挙げるとすれば、礼でしょうね」と答え、今の日本人がいかに他人を尊重しないかについて語りました。また、「孔子の教えが届いていないことによって、現代日本にどのような弊害が生まれているか?」という質問も受けました。わたしは「孔子は敬老思想を説いた。それを日本の徳川家康が生かして、江戸幕府の長期政権下に成功した。高齢者を敬う社会は安定し、長続きします。しかし、今の高齢者は『下流老人』とか『老人犯罪』といった言葉に代表されるように必ずしも幸福ではありません。そこには敬老思想の不在が一因としてあるように思う」と答えました。他にも質問がありましたが、わたしは、それらの問いのひとつひとつに真摯に答えさせていただきました。


やはりLIVEは最高です!



今日の講義でも、学生さんは真剣そのものでした。
終了すると、教室から盛大な拍手が巻き起こって、感激しました。今日の講義が、彼らがこれから生きるうえで何かのヒントになれば嬉しいです。久しぶりに教壇に立ちましたが、いいものですね。本やコラムやブログを書くのもいいですが、やはりLIVEは最高です。どうか、孔子からのメッセージが学生さんたちの人生を豊かにしてくれますように・・・・・・


同級生から送られたホワイトコーンを持って・・・



講義の終了後、わたしは小倉まで出て、鍛冶町の日本料理店で食事をしました。
この日の講義の内容や学生さんたちの熱気を思い出しながらお酒を飲みましたが、途中でお店にクール宅急便が届きました。その送り主を聞いて、ビックリ! わたしの中学の同級生である大手スーパーHのK社長でした。K社長は北海道からホワイトスイートコーンを送ってきました。お店の大将が生のまま食べさせてくれましたが、その甘いことといったら! まるでコーンというよりもフルーツのようでした。思わぬところで同級生から送られたホワイトスイートコーンを口にすることになり、わたしは「やっぱり、この世は有縁社会だなあ」としみじみと思いました。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2016年9月26日 佐久間庸和