名画座の喜寿祝い


東京に来ています。6日は、全互協の会議に出席します。
サンデー毎日」2016年9月18日号が出ました。
わたしは、同誌にコラム「一条真也の人生の四季」を連載しています。
じつは今月末で連載開始からちょうど1年となり、終了の予定でした。
しかし、非常に好評とのことで連載継続が決定しました。ありがたいことです。
これからも、日本人が幸せになる「こころ」と「かたち」について書いていきます。
第46回目のタイトルは「名画座喜寿祝い」です。


サンデー毎日」9月18日号



「北九州の台所」と呼ばれる小倉の旦過市場の横に映画館があります。
創業77周年の名画座「小倉昭和館」です。「風と共に去りぬ」もリアルタイムで上映したという名門です。かの松本清張が愛したことで知られ、イラストレーター・俳優のリリー・フランキー氏や芥川賞作家の田中慎弥氏なども通いつめたといいます。



かくいうわたしも、この名画座には高校時代から大変お世話になってきました。
2館並んでいて、それぞれ2本立て。現在は、洋画・邦画、そしてヨーロッパ・アジアのミニシアター系作品が上映されています。



この映画館には舞台があります。昭和の初期、片岡千恵蔵阪東妻三郎長谷川一夫らの芝居が行われていたのです。時は流れて映画が主流になりましたが情緒はそのまま、設備は近代化されて「小倉昭和館ここにあり」といった存在感を漂わせています。



作家の原田マハ氏の名作『キネマの神様』(文春文庫)には、「イタリアの感動名画 豪華2本立て」として「ニュー・シネマ・パラダイス」と「ライフ・イズ・ビューティフル」を併映するような名画座が登場しますが、小倉昭和館もまさにそんな感じ。



館主の樋口智巳氏は三代目です。物心ついたときから映画をたくさん観て、幼稚園のときには日活の青春映画のセリフを憶えていたといいます。また、映画館のレジで数字を憶え、いくら怒られても何度も映写室に入ったそうです。まるで「ニュー・シネマ・パラダイス」を地で行くような人生ですが、樋口氏は「親・子・孫・ひ孫の四世代に愛される映画館を目指したいと願っています」と述べます。



昨年の夏、わたしは小倉昭和館で生まれて初めてのシネマトークを行いました。
「映画で学ぶ人生の修め方」というテーマで、イギリス・イタリア映画「おみおくりの作法」とメキシコ映画「マルタのことづけ」を観ながら、大いに語らせていただいたのです。
先日、小倉昭和館の「喜寿を祝う会」が盛大に開催されました。
これからも多くの名画を上映してほしいですね。


サンデー毎日」9月18日号の表紙



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2016年9月6日 佐久間庸和