『慈経』


インドから帰国して、もう1ヵ月以上が経過しました。
まだ心は天竺に置いてきたような気分ですが、今日の「朝日新聞」朝刊に第3回目の「こころの世界遺産」が掲載されました。今回は『慈経』を紹介しました。


朝日新聞」3月23日朝刊



先日、わたしは生まれて初めてインドに行きました。現地では、聖なるガンジス河をはじめ、サルナート、ブッダガヤ、ラージギルなどの一連の仏教聖地を巡りました。その道中、わたしのバッグには『慈経 自由訳』(三五館)という本がいつも入っていました。ブッダの最初の教えとされるお経をわたしが自由に訳したもので、帯には「親から子へ、そして孫へと伝えたい『こころの世界遺産』」と大きく書かれています。



わが社では、北九州市門司港にある日本唯一のミャンマー式寺院である「世界平和パゴダ」の支援をさせていただいています。そのご縁で、2012年8月、わたしはミャンマー仏教界の最高位にあるダッタンダ・エンダパラ大僧正とお会いし、1冊の本を手渡されました。それは、『テーラワーダ仏教が伝える 慈経』という本でした。



テーラワーダ仏教とは「上座仏教」のことで、ブッダの本心に最も近いとされる仏教です。
大乗仏教の「般若心経」に相当する上座仏教における根本経典の「慈経」のメッセージに魅了されたわたしは、それを自分の心のままに訳すことを決意しました。そして、2014年3月に上梓することができました。



「慈経」で説かれているメッセージには仏教という枠を超え、「論語」や「新約聖書」にも通じるものがあります。つまりは普遍的な教えだということでしょう。ブッダが説いた「慈しみ」の心は人間のみならず、あらゆる生きとし生けるものへと注がれます。生命のつながりを洞察したブッダは、人間が浄らかな心を得るために、すべての生命の安楽を念じる「慈しみ」の心を重視しました。そして、すべての人にある「慈しみ」の心を育てるために、「安らかであれ、幸せであれ」という「慈経」のメッセージを残したのです。


慈経 自由訳

慈経 自由訳


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2016年3月23日 佐久間庸和