たった一字に深い意味を秘めている文字は、世界でも漢字だけです。
そこには、人のこころを豊かにする言霊が宿っています。
その意味を知れば、さらに、こころは豊かになるでしょう。
今回ご紹介するハートフル・キーワードは、「速」です。




ビル・ゲイツには『思考スピードの経営』という著書がありますが、彼のスピード思想は日本にも輸入され、多くのチルドレンを生みました。いわゆるネット企業の経営者たちです。最近の日本経済を振り返ってみると、彼らの活躍ばかりが目立つ気がします。2004年、プロ野球の再編を強力に押し進めたのも彼らでした。ライブドア近鉄買収に名乗りを挙げたことがきっかけになり、巨人の前オーナーらが画策していた「一リーグ制」は潰れ、東北に楽天という新球団が誕生し、九州ではダイエーに替わってソフトバンクが球団経営に乗り出したのです。



事の是非や好き・嫌いは横に置いておきます。わたしが何より驚いたのは、これらネット企業の行動の速さでした。特に、ソフトバンク福岡ホークスを買収した素早さは、あれよあれよという印象だったことを記憶しています。まさに、ハヤテのように現われて、獲物をくわえ、ハヤテのように去ってゆくスピード感でした。その後、ライブドアニッポン放送買収に乗り出して大騒ぎとなり、その仲裁に入ったのも、やはりネット企業のソフトバンク・インベストメントSBI)でした。



ネット産業で成功した経営者の多くは、上場企業の大株主かつ経営者です。
ソフトバンク孫正義社長、楽天三木谷浩史社長、ライブドア堀江貴文元社長らが、あれだけ大胆な決定を次から次へと繰り出せたのは、自社の大株主だからでした。プロバイダー会社ゼロの社長だった西久保慎一氏は、倒産寸前であったスカイマークエアラインズに出資を求められたとき、わずか5分で決断し、自己資金30億円を投じて社長に就任、同社の建て直しに成功しました。まるで信長の「桶狭間の戦い」や秀吉の「中国大返し」を連想させるスピード決断ですが、この機動性が戦時の経営には重要なのです。



わが社の経営理念の1つには「スピード・トゥー・マーケット〜市場への迅速な対応」があり、さまざまな方策を試みています。かつて1972年に沖縄が本土復帰したとき、すぐさま翌年の73年に参入し、冠婚葬祭互助会を設立しました。その結果、あの創価学会でさえ会員普及に苦労した独自の信仰と風俗を持つ「守礼の邦」において互助会会員を増やし、冠婚葬祭で40年以上もシェアトップを続けています。これも創業者である当時の社長が即断即決したおかげですが、沖縄というスローライフの聖地に当社はスピードで挑んだわけです。
なお、「行」については、『龍馬とカエサル』(三五館)に詳しく書きました。


龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2016年2月28日 佐久間庸和