『論語』

インドから帰国して以来ずっと体調が優れなかったのですが、少しだけ回復してきました。
といっても完全復活には程遠く、「健康が一番!」と痛感しています。今日の「朝日新聞」朝刊に第2回目の「こころの世界遺産」が掲載されました。今回は『論語』を紹介しました。


朝日新聞」2月24日朝刊



わたしは、紀元前551年に生まれた孔子を人類史上で最も尊敬しています。ブッダやイエスも偉大ですが、孔子ほど「社会の中で人間がどう幸せに生きるか」を考えた人はいないと思います。その孔子とその門人の言行録が『論語』です。よく、『論語』を孔子の著書と誤解している人がいますが、あくまで孔子の言葉や行動を弟子たちが記録したものなのです。



論語』は、千数百年にわたって読み継がれてきました。特に、日本人の心に大きな影響を与えてきました。江戸時代になって徳川幕府儒学を奨励するようになると、必読文献として、武士階級のみならず、庶民の間にも広く普及しました。



わたしが40歳になる直前のことです。不惑の年を迎えるにあたり、何をすべきかと色々考えました。そして、「不惑」が『論語』に由来することから、『論語』の精読を決意しました。その少し前に冠婚葬祭を業とする会社の社長になったこともあり、儀礼の根本思想である「礼」を学び直したいという考えもありました。



学生時代以来久しぶりに接する『論語』でしたが、一読して目から鱗が落ちる思いがしました。当時の自分が抱えていた、さまざまな問題の答えがすべて書いてあるように思えたのです。そして、『論語』を読むことによって、わたしは実際に「不惑」を手に入れたのでした。伊藤仁斎は「宇宙第一の書」と呼び、安岡正篤は「最も古くして且つ新しい本」と呼びましたが、本当に『論語』一冊あれば、他の書物は不要とさえ思いました。



わたしは大学の客員教授として、多くの学生たちに『論語』を教えてきました。『世界一わかりやすい「論語」の授業』(PHP文庫)も上梓しました。その功績により、2012年に第2回「孔子文化賞」を尊敬する稲盛和夫氏と同時受賞できたのは望外の喜びでした。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2016年2月24日 佐久間庸和