たった一字に深い意味を秘めている文字は、世界でも漢字だけです。
そこには、人のこころを豊かにする言霊が宿っています。
その意味を知れば、さらに、こころは豊かになるでしょう。
今回ご紹介するハートフル・キーワードは、「知」です。



ピーター・ドラッカーといえば、ウィーン生まれで、アメリカのクレアモント大学院の教授を勤めました。世界最高の経営学者として知られ、「マネジメント」という考え方そのものを発明し、ビジネス界に最も影響力を持つ思想家でもあります。
そのドラッカーが幾多の著書で一貫して唱えたのが「知識社会」の到来でした。
7000年前、人類は技能を発見しました。その後、技能が道具を生み、才能のない普通の者に優れた仕事をさせ、世代を超えていく進歩を可能にしました。技能が労働の分業をもたらし、経済的な成果を可能にしたのです。



紀元前2000年には、地中海東部の灌漑文明が、社会、政治、経済のための機関と、職業と、つい200年前までそのまま使い続けることになった道具のほとんどを生み出しました。まさに技能の発見が文明をつくり出したのです。そして今日、再び人類は大きな発展を遂げました。仕事に知識を使いはじめたのです。ドラッカーは、仕事の基盤が知識に移ったと述べています。ここで言う知識とは、仕事の基になる専門知識のことです。専門知識の上に成り立つ職業といえば、医師や弁護士や公認会計士やコンピュータ・プログラマーなどがすぐ思い浮か
びますが、じつは冠婚葬祭業であるわが社も知識産業であると思っています。



例えば、厚生労働省認定の1級葬祭ディレクター。この試験用に使う『葬儀概論』という電話帳のように分厚いテキストを通読してみて驚きました。想像以上に内容が高度で、かつ範囲が広いのです。仏教の各宗派の教義・作法はもちろん、宗教全般、儀礼全般に医療、法律、税務といった分野まで含まれているのです。これは、もう大変な知識産業です。
その1級ディレクターの人数および合格率において、わが社は日本でトップクラスということで、非常に誇りに思っています。
1級葬祭ディレクターほどの難易度は現在のところありませんが、ブライダル・プロデューサーにも同じことが言えます。さらには、料理、衣装、写真、司会::と当社のあらゆる仕事は高度な専門知識に基づく知識産業であると認識しています。



ドラッカーも、「いかなる知識も、他の知識より上位にあることはない。知識の位置づけは、それぞれの知識に固有の優位性や劣位性によってではなく、共通の任務に対する貢献によって決定される。『哲学は科学の女王』と言う。だが腎臓結石の除去には、論理学者よりも泌尿器専門医を必要とする」と述べています。
なお、「知」については、『龍馬とカエサル』(三五館)に詳しく書きました。


龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2016年2月5日 佐久間庸和