冠婚葬祭互助会が乗り出した「孤独死対策」

日経ビジネスオンライン」でサンレーの取り組みが紹介されました。
仏教界の予見者」こと「日経ビジネス」の鵜飼秀徳記者の記事です。
鵜飼記者は、ブログ『寺院消滅』で紹介した話題の書の著者でもあります。


冠婚葬祭互助会が乗り出した『孤独死対策』



記事は「冠婚葬祭互助会が乗り出した『孤独死対策』」のタイトルで、「寺院とコラボして『無縁社会』を『有縁社会』に」のサブタイトルがついています。
鵜飼氏は冠婚葬祭互助会について、「会員から積立金を集めて、葬式や結婚式などの多額の出費に備えるための組織だ。全国に葬祭ホールや結婚式場などを多数抱え、時が来れば、会員は施設を利用することができる」と説明。
「世界でも珍しい縁組織」の小見出しで、以下のように書かれています。
「互助会は終戦直後の1948年、神奈川県横須賀市でスタートした。
互助会は七五三、成人式、結婚式、葬式などの各種セレモニーを担ってきた。人生儀礼を大切にする日本人の文化風習に根差した組織と言える。
これら人生儀礼を執り行う際、「縁」の存在が欠かせない。例えば葬式では『地縁(隣組)』と『血縁(親族)』が取り仕切る。互助会もまた、ひとつの『縁組織』である。
互助会のような、相互扶助の精神で儀礼を担う縁組織は、世界でも類を見ないものだ」



鵜飼氏は、以下のように互助会が抱える問題についても書かれています。
「互助会は発足から70年近くを経て前受金が2兆円、会員数が2000万件を超える巨大ネットワークに成長した。だが、近年は葬儀の簡素化、地方都市の衰退などによって、伸び率が頭打ちになりつつある。互助会数も1986年の415社をピークに、現在は292社(2012年)にまで減ってきている。互助会は、寺院と同じように、存続問題を抱えているのだ」



ブログ「『寺院消滅』講演会」で紹介したように、10月22日に鵜飼氏の講演会に参加しました。そのときのようすを鵜飼氏は「寺院と互助会がコラボ」の小見出しで書かれています。
セミナー会場の最前列には、全国冠婚葬祭互助会連盟会長で、作家・一条真也としても活躍されている佐久間庸和氏の姿があった。
佐久間氏からは、『寺院と互助会の仕組みはとても似ている。例えば互助会では高齢化社会に向けた様々な取り組みを実施し、地域と互助会の両方の活性化につなげている』との意見があった。具体的に話を聞いていくと、佐久間氏の試みは示唆に富むものだった」


冠婚葬祭互助会が乗り出した『孤独死対策』



さらに、鵜飼氏は以下のようにサンレーの取り組みについて書いて下さいました。
「佐久間氏が代表を務める互助会大手サンレーがある北九州市で、その取り組みは始まっている。北九州市は、全国20政令指定都市の中で高齢化率が最も高い(28.2%)という。北九州市は高度成長期までは、八幡製鉄所を中心に『鉄都』として発展した。だが70年代以降は、産業構造の転換とともに、『鉄冷え』がおこり、人口が流出した。現在、独居老人や孤独死などの問題に直面している。この無縁社会こそ、互助会が向き合うべき課題――。
そこで佐久間氏率いるサンレーが始めたのが「隣人祭り」だ」



隣人祭り」については以下のように説明されています。
隣人祭りは1999年、フランスで発祥した。パリのアパートの一室で老婆が孤独死体となって発見。このことにショックを受けたパリ17区の助役が『もう少し住民の触れ合いがあれば、悲劇は起こらなかったのではないか』と考え、アパートの中庭でパーティを開くことを考案した。隣人祭りで出会った若い男女が結婚するという新しい縁も生まれた。
この輪は欧州全土にまで広がり、2008年には世界同時開催され、日本ではサンレーが主体となって実施した。以来、年に2回のペースで大規模な隣人祭りを行っているという」


サンレーの「隣人祭り」を写真付きで紹介



続けて、鵜飼氏は「互助会の強みを生かし、孤独死をなくす」の小見出しで、以下のようにわたしの発言を紹介して下さっています。
「佐久間氏は言う。『孤独死を生むような無縁社会を、互助会が中心となって、有縁社会へと再生させていければと考えている。隣人祭り以外にも、孤独死をなくすアイデアがある。例えば互助会は高齢者の自宅を訪問する営業スタッフを多く抱えており、安否確認することができる』。互助会が高齢化社会問題の解決に一役買う。制度疲労を起しつつある互助会組織の内部にも新しい風を取り入れることができる」



「互助会では『箱もの』の老朽化問題にも直面しているという。葬祭会館を計画していたが反対運動などで頓挫したままになっている土地や、老朽化した結婚式場などを抱えているところも多く、物件の有効活用を図る時期にきているという。サンレーでは、そうした結婚式場の敷地の一角に有料老人ホームを建て、安価で提供している。
佐久間氏は言う。『互助会と寺院がコラボできることはあると思う』」



最後に、鵜飼氏はこの記事を、「寺院の場合、後継者が見つからず、空き寺の数は既に2万カ寺を超える。こうした空き寺の活用法も見出せていない。互助会のアイデアは寺院再生においても、十分通用すると思う。『無縁社会』を『有縁社会』に。寺院と互助会が目指す方向は、意外にも同じなのかもしれない」と、締め括っておられます。
ビジネス界に多大な影響力を持つ「日経ビジネスオンライン」の記事だけに、大きな反響が予想されます。わが社の取り組みが、冠婚葬祭互助会の意義と可能性を少しでも示すことができたなら、こんなに嬉しいことはありません。



それにしても、「徳は孤ならず必ず隣あり」という『論語』里仁篇の言葉を連想しました。
鵜飼記者とわたしは、ある意味で同志ではないかと思います。
鵜飼さん、素晴らしい記事を書いていただき、ありがとうございました。
これからも「寺院消滅」や「無縁社会」を防ぐ方策について、ぜひ情報交換および意見交換をさせて下さい。またお会いできるのを心より楽しみにしています!


寺院消滅

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隣人の時代―有縁社会のつくり方

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2015年12月2日 佐久間庸和