さよなら、スナック佐藤

28日の午後、東京からスターフライヤーで北九州へ戻りました。そのままサンレー本社へ行って、いくつかの打ち合わせを行いました。
Windows10のダウングレードも行ってもらいました(苦笑)。とにかく生まれて初めて、ダウングレードというやつを経験しました。


「スナック佐藤」が入る三国屋ビル



「何でも新しければいいってもんじゃない。古いものがいいこともあるんだ」と思いながら、その夜、わたしは小倉の繁華街である紺屋町に向かいました。
行き先は、三国屋ビルの2階に入っている「佐藤」というスナックです。「小倉の止まり木」ことスナック「レパード」の後を受けた店で、2011年9月30日に「レパード」が31年の幕を閉じた後にオープン、4年と2ヵ月にわたって営業されました。


スナック「佐藤」の入口看板



ママの佐藤麻衣子さんから「佐藤」閉店のお知らせの手紙を受け取り、なんとか最終日に訪れることができました。じつは「レパード」のマスターだった西山富士夫さんに少し前にお会いしたのですが、「スナックの時代はもう終わり」と言っていました。今の若い人は、他の客のカラオケを聴くなどという行為が信じられないそうです。カラオケならカラオケボックスに行くというのです。他人とコミュニケーションできないなんて、まったく寂しい時代です。


ママの佐藤麻衣子さん



「佐藤」は「レパード」と同じく、価格もリーズナブルで、とにかく心休まる店でした。ママのお母さんが作る煮物やポテトサラダの突出しが絶品でした。会社の行事や忘年会の二次会などでもよく利用させていただきました。店全体を貸し切り、最後は佐野元春の「SOMEDAY」を合唱しました。とにかく、この店には思い出が詰まっています。このブログ記事を読んで、寂しく感じたサンレー社員も多いはずです。


ママ、お疲れ様でした!



ブログ「スナック ふれあい」でも紹介したように、「無縁社会に生きる人々の絆をつなぐ。それがスナック。繁華街で、住宅地で、農山漁村で、被災地で、今夜もともるネオンは、ふれあいの証し」です。編集者・写真家の都築響一さんが、「スナックというのはすごくユニークな店舗形態なんです。日本全国どこでも、3千円から5千円くらいで飲める。銀座の一等地でも、地方の過疎地でも変わらない。インテリアや食べもの、置いてある酒も大差ない。特に『売り』がないのに、ママとかマスターの人柄だけで何十年も続いている店がある。人格で売る商売なのがすごい」と語っています。スナックという商売を「人格で売る」と表現したのは素晴らしいですね。たしかに、わたしが通うスナックは、どれもマスターやママの人柄が最大の魅力になっています。

都築さんによれば、スナックに3回も行けば立派な常連だそうです。いわばもう1つ「家」が増えるようなものだとして、次のように述べます。
「自分の家では妻も愚痴を聞いてくれないけれど、こっちの『家』では聞いてくれる。会社では上司と部下の板挟みになっていても、こっちでは仕事に関係ない話で盛り上がれる。社会的な肩書を捨てられる場所なんですね。行きつけのスナックを2、3軒もっていると、すごく心の健康にいいと思いますよ」
どの国にも、それぞれそういう居場所があります。
フランスならカフェ、イギリスならパブ、アメリカならバー。そして日本では、スナックというわけですね。

浅草キッド玉ちゃんのスナック案内

浅草キッド玉ちゃんのスナック案内

浅草キッド」の玉袋筋太郎さんは、こう語ります。
「スナックではママの虫の居どころが悪い時だってある。変な客と同席する時もあるんだ。そこで、どう臨機応変にコミュニケーションを取るか。全国どこへ行っても同じメニュー、接客じゃつまんない。かび臭いトイレ、ママが水道水で洗ったおしぼり。それもまたいいんだ」
「初めての店では、まずカウンターに座って店の潮目を読む。隣で石原裕次郎歌ってるのに、EXILEなんかダメだよ。店の雰囲気に合わせなきゃ。知らないお客さんの聞きたくもない歌だって半身で振り返って拍手すれば『おっ、仲間だな』と、心を開いてくれる。それがコミュニケーションってやつだろ」
カラオケボックスで仲間うちで盛り上がってるから、若い人は知らない人とのコミュニケーションが苦手なんだ。おれは新入社員の研修をスナックでやればいいと思ってる。他人とのコミュニケーションを学ぶ絶好の場だぜ」
いやあ、いちいち名言ですね! 玉袋さんは、スナックは今、日本の地域社会のコミュニティーを担っていると断言します。でも、誰も気づいてないというのです。そして最後に、「素晴らしい日本の文化。残しとかなきゃ子どもたちが可哀想だ」と語るのでした。


帰ってこいよ」を熱唱しました♪



今夜は、万感の想いをこめて、わたしは松村和子の「帰ってこいよ」を歌いました。
ブログ「佐久間会長傘寿を祝う会&サンレー50周年キックオフパーティー」で紹介したように、今月18日にわたしは三味線を弾きながら「帰ってこいよ」を歌いました。この夜は、「スナックの時代、帰ってこいよ!」という想いで歌いました。


さよなら、スナック「佐藤」



それにしても、通い慣れた店がなくなるのは悲しいことです。どうか、「東京の止まり木」こと赤坂見附のカラオケスナック「DAN」には、全国のスナック文化の殿堂として、いつまでも頑張っていただきたいと思います。さよなら、スナック「佐藤」。麻衣子ママ、お疲れ様でした! 



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2015年11月29日 佐久間庸和