たった一字に深い意味を秘めている文字は、世界でも漢字だけです。
そこには、人のこころを豊かにする言霊が宿っています。
その意味を知れば、さらに、こころは豊かになるでしょう。
今回ご紹介するハートフル・キーワードは、「強」です。



いま、日本企業は大きな変革を迫られています。取り巻く環境が変化すれば、当然ながら企業も変わらなければなりません。日本企業にとって必要なのは、まずは過去を振り返り、自らの強さがどこにあるかを再確認することです。このような日本企業の重要な強さを説明するのに、「コア・コンピタンス」という言葉がよく使われます。



コア・コンピタンスとは、G・ハメルとC・K・プラハードの著書『コア・コンピタンス経営』によって広められた概念で、他社に真似できない核となる能力のことです。コア・コンピタンスの視点がないリストラやダウンサイジングによる効率化は、かえって企業の競争力を手放すことにほかなりません。



不連続に変化する未来において強い競争力を保ち続けるためには、コア・コンピタンスを全社的に認識し、その強みから成果を生み出す取り組みが大切になります。精密な分析を行い、綿密な計画を立てることよりも、立案された計画を全社員が正しく理解し、情熱と知的エネルギーを持って未来に挑戦することのほうが成功を生み出す原動力となります。核となる能力を磨き上げるために組織全体で学習を繰り返すことで、環境変化にも柔軟かつ大胆に対応できるのです。



もともと「強み」の思想は、ピーター・ドラッカーが長年訴えてきたものです。ドラッカーは、「わが社が強みとするものは何か、うまくやれるものは何か、いかなる強みが競争力になっているか、何にそれを使うかを問わなければならない」と述べていますが、わたしは2001年に社長に就任したとき、まず当社の強みについて徹底的に考え抜きました。



そして、過去にTQC活動の導入、ISO9001の取得、プライバシーマーク取得などがいずれも業界初であり、厚生労働省が認定する1級葬祭ディレクター試験の合格者数も全国で1・2位を争う実績にあることを知り、教育や資格を取得するといった知的方面における強みを発見。これをさらに強化する方針を打ち出した結果、当社の姿勢がお客様にも評価され、業績も格段に向上したのです。



「不得手なことの改善にあまり時間を使ってはならない。自らの強みに集中すべきである。無能を並みの水準にするには、一流を超一流にするよりも、はるかに多くのエネルギーと努力を必要とする」これも、ドラッカーの至言です。会社のみならず、わたし個人の生き方にも「自らの強みに集中せよ」という彼のアドヴァイスをいつも頭に置いています。
なお、「強」については、『龍馬とカエサル』(三五館)に詳しく書きました。


龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2015年10月4日 佐久間庸和