葬式ごっこ許すな!

20日(日)の日曜日の昼下がり、わたしのケータイが鳴りました。見ると知らない番号だったので取るまいかとも思いましたが、一応出てみると、相手は埼玉県に本社を置く冠婚葬祭互助会(株)セレモニーの志賀司社長でした。志賀社長は全互連の関東甲信越ブロック長であり、全互協の広報渉外委員でもあります。彼は18日の参院本会議での山本太郎議員の葬式パフォーマンスに激怒していました。まさに怒髪天を衝くがごときで、最初はわたしが怒られているのかと勘違いして、思わず身構えたほどです。


喪服で牛歩戦術を行う山本議員(写真:時事通信社



生活の党と山本太郎となかまたち」の山本太郎共同代表は18日の参院本会議で、安倍晋三首相の問責決議案の記名投票に際し、議場をゆっくり歩く「牛歩」戦術で議事進行を遅らせました。しかも投票直前には焼香のしぐさを見せるパフォーマンスを行ったのです。
山本氏は17日の参院平和安全法制特別委員会で、安全保障関連法案の採決時に「自民党が死んだ日」と書かれたプラカードを掲示していました。18日の参院本会議では喪服に身を包み審議に臨んでいた。「最初から負け戦」と考えて喪服を用意していたのでしょうか。だいたい、あの日は「自民党が死んだ日」ではなくて「野党が死んだ日」でしょう!


数珠を持ったまま投票する山本議員(写真:時事通信社



山本氏の遅延行為を見かねた山崎正昭議長は早く投票するよう注意しました。さらに同党の主浜了氏からたしなめられても牛歩を続けました。壇上では議席を振り向き、安倍晋三首相に向かって焼香するふりを数回繰り返しました。議場は山本氏の一連の行動を批判する激しいヤジに包まれましたが、これがとんでもない行為であることは明らかです。
生きている人間に対して焼香の仕草をしたわけです。こんなことが学校などで流行したら、どうするのでしょうか。自分の考えにそぐわない者、気に食わない者に対して焼香・合掌のパフォーマンスを行うことが流行したら、どうなりますか。多くの人たちは、かつて自殺者を生み、大きな社会問題にもなった悪名高き「葬式ごっこ」を連想したのでは?


くだんの志賀社長は互助会の経営者として日々多くの葬儀のお世話をしています。その彼が「わたしたちは、葬儀の場でいかに遺された方々が悲しんでおられるかを知っています。その人たちがあの焼香パフォーマンスを見れば、どう思うでしょうか。絶対に許すことはできません!」と憤っていました。もっともです。「そんな遺族の心情も配慮できないような人間は即刻、国会議員などやめるべき」とも言っていました。同感です。もともと山本太郎という人物の品性のなさには呆れていましたが、ここまで最低とは思いませんでした。
喪服の黒ネクタイもだらしなく結んでいるし、これはもう日本人の恥です!


安倍首相に向かって合掌する山本議員(写真:時事通信社



それにしても、喪服に数珠での牛歩戦術など笑止千万です。
喪服とは故人に弔意を示すための服装であって、議会での政治的パフォーマンス用の衣装ではありません。まったく日本人も地に落ちたものだと情けなくなります。先の戦争で尊い命を散らせた英霊たちも、さぞ嘆かれたことでしょう。
ブログ「終戦70周年の日」で紹介したように、わたしは70回目の「終戦の日」が訪れた8月15日、わたしは東京の靖国神社を参拝し、心からの祈りを捧げました。



「日本のいちばん長い日」といわれた昭和天皇玉音放送がラジオで流れた日から70年。日本はどのように変貌したでしょうか。細かい点を挙げればキリがありませんが、大きな変化として、死者を軽んじる国になったような気がしてなりません。現代日本では通夜も告別式も行わずに遺体を火葬場に直行させて焼却する「直葬」が流行し、さらには遺体を焼却後、遺灰を持ち帰らずに捨ててしまう「0葬」などというものまでが登場しました。その一連の「死者を軽んじる」流れの先には、今回の喪服での焼香パフォーマンスがあったわけです。死者を軽んじる民族は滅びます。今回の暴挙は本当にショックです。



本来はこのような暴挙があれば、マスコミも批判報道するはずです。しかし、山本氏が採決の際に牛歩をしたことはテレビでも報道されていましたが、「喪服を着る」「焼香をあげる」という非礼については取り上げられませんでした。国民が投票した結果として国会議員になった人間が、1日で億単位の費用がかかる国会の本会議の場で非常識な服装をし、あろうことか一国の首相に向かって焼香パフォーマンスをしたことをなぜ取り上げないのか。安保関連法案の反対キャンペーンを張ってきた手前、「山本太郎は1人で体を張った」などと持ち上げる媒体まであり、まことに情けない限りです。



安倍首相は19日、公邸で産経新聞の単独インタビューに応じましたが、一部メディアなどによる安保関連法案反対キャンペーンに対し「『徴兵制』や『戦争に巻き込まれる』といった批判が広範に広がった」と分析し、「デマゴーグ(扇動)であるということはしっかり国民に説明していきたい」と述べ、引き続き国民の理解を得る努力を行う考えを強調しました。また、憲法改正に向け「新しい憲法のあり方について、国民の中でより広く深い議論がなされるよう努力を重ねていきたい」と改めて意欲を示しました。一刻も早く、憲法改正が実現することを願っています。「いじめ」につながる葬式ごっこをした山本太郎氏は即刻議員を辞職するべきであると思います。彼に国会議員の資格などありません!



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2015年9月20日 佐久間庸和