経理責任者会議

9月18日、小倉ロータリークラブの例会が終了すると、わたしはリーガロイヤルホテル小倉からサンレー本社へと急ぎました。今日は、サンレーグループ全国経理責任者会議が開催されるのです。会社に到着すると、そのまま会議室に向かい、恒例の社長訓話をしました。


全国経理責任者会議のようす



最初にわたしはブログ「宮田支店長、また逢う日まで!」に書いたように、日本銀行北九州支店の宮田支店長の思い出について語りました。それから、最新刊『墓じまい・墓じたくの作法』(青春新書インテリジェンス)の内容などを紹介しました。


「墓じまい」について話しました



まず、わたしは「『墓じまい』について、どのように思っていますか?」と問いました。
どうも、お墓を撤去し、処分することだと思っている人が多いようです。これは「しまい」という言葉に、それで終わりという意味を感じているからです。墓じまいは決して「そのお墓をおしまいにする」という意味ではありません。墓じまいとは、墓の処分とは違います。
お墓の中には、ご両親をはじめとしたご先祖様の遺骨がお墓が入っています。お墓を処分するということは、そういう遺骨を処分することになります。ですから、墓じまいとは、そうした遺骨の移動、次の納骨先を見つけることなのです。墓じまいでまず考えていただきたいのが、「遺骨の行き先」です。


「墓じまい」について話しました



行き先にはいろいろあります。今人気の納骨堂、あるいは、自然葬で土に帰す、海に帰すという道もあるでしょう。お墓が参りが手間だから、お墓を守ってくれる継承者がいないから、という理由で墓じまいを考えるのは仕方がありません。でも、お墓はご先祖様たちの居場所であるということを忘れていけません。「墓じまい」とは「古いお墓の撤去+遺骨の移動」のことです。少子高齢化が進む中で「空き家」が問題化してきています。終の棲家であるお墓は「空き家」とは異なり「ご先祖」という住人がいるだけに、わたしたち日本人が全体で考えていくべき大きな課題ではないでしょうか。その1つの解決法が「墓じまい」です。


墓じまいは、墓の処分ではない!



繰り返しますが、墓じまいとは決して墓の処分ではありません。それは、お墓を大切にする想いをかたちにする行為なのです。正直にいうと、わたしは「墓じまい」という言葉に違和感を持っています。なぜなら、「墓じまい」をしようと思っている人は、「お墓」をやめたいのではなくて、実際は「家」をどう継いでいくべきかを考えている人だからです。


「墓じまい」について話しました



お墓の大切さ、その役割の重要さをよくわかっている人が「墓じまい」を考えているわけで、それを表現できるような、ふさわしい言葉を見つけるべきだと思っています。「墓じまい」とは、無縁墓にならないように、墓守がいないなら、あるいは子孫に迷惑をかけたくないなら、それなりに工夫してお墓を大事にしていこうという行為です。わたしは墓じまいをもっと積極的にやっていくべきだと思います。合祀したお墓で合同で供養するのもありです。あるいはインターネット上での供養なども今後は登場するかもしれません。要は、先祖を思う気持ちが大切なわけで、ぜひそれを続けるために、みなさんが納得のいく「墓じまい」をしていただきたいです。


「無縁墓」について話しました



無縁墓にしない方法のひとつが「改葬」です。改葬とはお墓の引っ越しのことです。わたしの周囲の同世代に訊ねてみると、改葬を考えている人が意外と多いことがわかりました。
「故郷が遠方のため、今後お墓を守ってくれる人が途絶えてしまう可能性がある」という理由だけでなく、「一人っ子同士の結婚のため、奥さんの実家が継承者不在になってしまう」ので、今のうちにお墓を現在の住所近くに移動しておきたいと思っているのです。しかし、いざ改葬しようとすると、住まいを転居するように簡単にはいきません。



改葬には、いくつかの方法があります。まず、お墓全体、つまり墓石と遺骨(骨壺)を一緒に移動する。これが理想かもしれませんが、移送費用が高くつくことや引っ越し先の霊園が墓石の形を制限している場合があるため、改葬全体の約2割程度に留まっています。一番多い(約7割)のは遺骨の入っている骨壷だけを取り出して移動させる方法です。残り1割が「分骨」といって遺骨を分割して一部を引っ越すケースで改葬とは手続きが違ってきます。



いざ改葬をやるとなると、費用も頭の痛い問題です。「毎日新聞」(2008年6月22日くらしナビ)によれば、現在のお墓の撤去、移転先墓地の使用料、墓地の工事など合わせると200万〜300万円程度かかるとのこと。かなりの負担です。
業者によっては法外な金額を請求してくるところもあるようですから、複数の業者から合い見積もりを取って適切な金額がどの程度か確認する必要があります。実際に改葬をすると、閉眼供養料、開眼供養料、離檀料など、聞いたことのない出費もあります。
閉眼供養は、引っ越し前の墓石に宿った仏様の魂を抜く儀式で「御魂抜き」ともいわれています。費用の目安は5000円から1万円です。


「墓じたく」についても話しました



「墓じまい」に続いて「墓じたく」についても話しました。
墓じたくとは、お墓のない人の問題ではありません。墓じまいをすれば、同時に墓じたくを考えなければなりません。墓じたくで重要なことは、継承者がいるかどうか。いわゆる墓守です。お墓が建てられる場所は法律で決まっています。墓地とは以下のとおりです。
(1)村落共同型墓地:村や部落の住民が皆で一定の場所を墓地として使用する形態の墓地
(2)寺院境内型墓地:寺院が境内などの所有地をその壇信徒に対して墓地としての使用を認めている形態の墓地(寺院の壇信徒になることが前提になっているのが通常)
(3)民間霊園型墓地:宗教法人公益法人が経営する形態の墓地
(4)公営墓地:国または地方公共団体が経営する形態の墓地


墓地とは・・・・・・



つまりお墓を持つということは、こうした墓地にお墓を建てていいという権利を買うことです。家墓として、墓石に「○○家の墓」「○○家の先祖代々の墓」と刻まれ、家族単位のお墓を持つことになります。でも少子化が進む現在、墓地にお墓を持つ権利を買ったとして、それを継承してくれる人がいなければ、はじめから無縁墓になることを前提して購入することになります。
いま海洋葬や樹木葬といった「自然葬」に人気があるのも、こうした継承者の問題が背景にあるからです。また、「永代供養墓」というものが登場しています。納骨堂などです。また、お墓を持たずにペンダントなどの「手元供養」という形にする人も増えています。お墓は、後継者がいなくなれば、「無縁仏」として合祀されてしまう運命にあります。


墓地について・・・・・・



お盆・お彼岸シーズンになると、墓地や霊園の区画を販売する折り込み広告や新聞広告が目につきます。「墓じたく」という視点で、墓選びをからその取得を考えてみましょう。
お墓は、墓地、あるいは霊園にしか建てることはできません。まず購入する前に、墓地や霊園の使用規則をしっかり読みましょう。使用規則とは、墓地の経営者と使用者との間の契約書にあたるので、取得前に読んでおく必要があります。お墓の使用者だからといって勝手にお墓を建てられるわけではありません。まず、お墓を建てる期限・墓石などの制限を把握しましょう。実際に現地に出向くことが大切です。感覚的には家選びと同じです。使用契約書などもそこできちんと目を通しましょう。



交通の便も重要です。お墓参りの問題があるからです。運営会社の経営はしっかりしているのかも重要です。古いお墓がたくさんあるところならまず安心していいでしょう。
墓地として大切なのは、明るく清潔な感じです。日当たり・風通し・水はけがいいかなども重要なポイントになってきます。水はけの良し悪しは雨の日に見学すると確認できます。また平坦地であるかも重要です。災害の際に傾斜地で造成がしっかりしていないと、地盤が崩れる可能性もあります。共有部分の管理状態もしっかりチェックします。使用権の承継、埋葬、改葬、分骨などは、必要になった際に使用契約書を読むということでもかまいません。



お墓はいつ建てるべきでしょうか。
結論からいえば、健墓の期限さえ守ればいつ建ててもかまいません。しかし、「墓地使用規約」にお墓の使用権利取得後○年以内に建てなければならないなどと明記されていれば、その期限を守る必要があります。お墓を取得するのは、生前にお墓を建てた場合を除き、家族の死に直面してからです。ばたばたと葬儀を終え、従来の生活に戻った時に「お墓をどうするか」ということが問題になってきます。


全国経理責任者会議のようす



お墓を建てるということはお金がかかります。経済的状況を考慮することも重要です。また、心の整理が付ける必要もあります。すぐに建てなければならないということでもありません。無理をせず、経済的問題、心の整理ができてから建てればいいでしょう。また段階的に建てるという手段もあります。一度に完成させず、少しずつ建てていくのです。門柱を建てた後、墓石を建てるといったことでもかまいません。ただ、一周忌までに建てるのが一般的です。仏式では納骨は忌明けにするのが目安です。忌明けは一般的に49日または35日になります。神式では、50日祭などに納骨したり、キリスト教では、月命日・一年目の命日に納骨するのが一般的です。



納骨に間に合うように、お墓を建てたり、カロート(お墓で、遺骨を納める納骨室部分のこと)を作ります。いざ、お墓を建てようと思っても手順がわからないと困惑します。
寺院墓地の場合は、お墓の開眼法要や納骨の儀式をお願いすることになります。お墓を建てることや時期について事前に相談します。一番重要なことは、予算決めです。どれだけの費用をお墓に掛けられるかによって、お墓選びは違ってくるからです。


お墓の費用について



一般的にお墓の取得にかかる費用は、永代使用料、工事費を含めた墓石代などです。墓石の大きさは予算によって変わります。その上で自分がどんな形にするかを決めます。基本的なのは和型です。横幅が広く薄い洋型もあります。この他にもオリジナルの形も選べます。しかし石材業者が決められている場合も多いので、最終的には業者が扱える範囲内で建てることになります。お墓の開眼法要にもよりますが、納骨のための費用が別途かかる場合もあるので、しっかり予算に加えておきましょう。といわけで「お墓」の話といっても「お金」にまつわる話が多く、その意味では経理責任者会議にふさわしい訓話となりました。参加者は目をランランと輝かせながら、こちらが怖ろしくなるくらいの気を放っていました。


「資本」と「富」について



最後に質疑応答の時間にしたところ、沖縄の久保田課長が「結局、お墓の問題もお金に行き着くのですね」と言いました。それで、わたしはブログ「京都こころ会議シンポジウム」で聴いた宗教人類学者の中沢新一氏の話を紹介しました。中沢氏は「capital」を「資本」と訳した西周の先見性を讃え、資本の「資」とは「次の貝」と書く。つまり、貨幣としての貝が増殖することが資本であると述べました。一方で「富」という言葉があります。これは「家の中に発酵するものがあって、微生物がモノを生成させること」という意味です。「資」とは死んだ貝であり、「富」とは生きた酵母菌なのです。死んだ貝としての「資」は国境も性別も一切を超越しますが、酵母菌による生成は閉じます。わたしはこの中沢発言を聴いて、「死によって、あらゆるものが超えられる」「死=超越性」ではないかと思いました。


ホワイトボードに書かれた内容

最後は一同礼で!



わたしの話が終了し、最後は一同礼をしました。
社長訓話の後は、松柏園ホテルに場所を移し、懇親会が開かれました。


末広がりの五本締め」で宴を閉じる



懇親会では、最初に中野取締役の音頭で乾杯しました。1時間喋りっぱなしで乾いた喉に冷えたビールが心地良かったです。ふだん真面目に会社の経理を担当してくれるみなさんと一緒に大いに飲み、大いに語り合いました。
最後は、経営管理部の槙部長の音頭によるサンレー名物の「末広がりの五本締め」で宴を閉じました。松柏園のラウンジで二次会も開かれ、大いに語り合った熱い夜となりました。


これがサンレー流コンパだ!!



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2015年9月19日 佐久間庸和