京都こころ会議シンポジウム

12日の土曜日、小倉駅から「のぞみ14号」に乗って京都へ・・・・・・。
13日の日曜日、朝から京都ホテルオークラで開催された第1回京都こころ会議シンポジウム「こころと歴史性」に参加しました。わたしは「京都大学こころの未来研究センター」連携研究員を務めているのですが、同センターの主催イベントです。



京都大学公式HPには以下のように「京都こころ会議」について説明されています。
「科学技術の進歩や経済のグローバル化は、人類がこれまで体験したことのない大きな変化をもたらしています。2015年4月に発足した「京都こころ会議」では、複雑化した問題に直面している人間の「こころ」に焦点をあて、「こころ」という日本語に含まれる広がりや深いニュアンスを大切にしながら、豊かなこころがはぐくまれる社会のあり方について議論します。そして、今世紀を生きる人間のあるべき姿が明確になることをめざし、こころの新しい理解をKyoto Kokoro Initiativeとして世界に向けて発信します。
第1回『京都こころ会議シンポジウム』では、こころの歴史性に焦点を当て、人類がこれまでに世界と向き合ってきた『こころ』についての理解を踏まえつつ、これからの社会において『こころ』に求められるものに迫っていきたいと思います」


都ホテルオークラにて

「京都こころ会議」の看板前で

開始前の会場にて

鎌田先生に稲盛理事長を紹介していただきました



400名定員の席はすぐに予約でいっぱいとなり、京都ホテルオークラの大宴会場が1つの空席もなく埋まりました。すごい熱気です。「知」への情熱を感じます。開会前に鎌田東二先生から、公益財団法人・稲盛財団稲盛和夫理事長を紹介していただきました。私淑している稲盛理事長にお会いするのは初めてでしたので、非常に感激いたしました。


祝辞を述べる稲盛理事長



9時30分に「開会の言葉」として、 吉川左紀子(こころの未来研究センター長)、稲盛和夫(公益財団法人稲盛財団理事長)、牛尾則文(文部科学省研究振興局学術機関課長)のお三方から祝辞が述べられました。


講演する中沢新一



9時50分からは講演(1)として、中沢新一明治大学野生の科学研究所長)氏が「こころの構造と歴史」を講演されました。中沢氏は「『ニューロ系』と『こころ系』をつなぐbricolageの概念」「『ニューロ系』と『こころ系』に通底する『ホモロジー』の構造」「『こころ系』にセットされた『アナロジー構造』」「キリスト教的『三元論』とユング曼荼羅的『四元論』はともに『こころ系』の基本構造をしめす」などのお話をパワーポイントなしで話されました。中沢氏のお話を聴くのはずいぶん久しぶりですが、相変わらずシャープな頭脳の持ち主であると感じました。


京都こころ会議シンポジウムのようす



その後、講演(2)として、河合俊雄(こころの未来研究センター教授)氏による「こころの歴史的内面化とインターフェイス」、休憩をはさんで、講演(3)として、広井良典千葉大学政経学部教授)「ポスト成長時代の『こころ』と社会構想」。講演(4)として、下條信輔カリフォルニア工科大学生物・生物工学部教授)氏による「こころの潜在過程と『来歴』――知覚、進化、社会脳」。講演(5)として、京都大学の山極壽一総長による「こころの起源−共感から倫理へ」が行われました。どの講演も内容が深く、大変勉強になりました。わたしの専門である儀式についいての言及も多く、次回作である『儀式論』(仮題、弘文堂)のヒントをたくさん貰いました。


総合討論のようす



16時40分からは「総合討論」として、中沢新一、河合俊雄、広井良典下條信輔、山極壽一の各氏が語り合われました。ここでは「超人類」とか「地球を超えたコミニュティ」といったSFを連想させるような壮大なテーマをはじめ、「グローバリズムナショナリズム」「差別と人間の本性」「ネアンデルタール人の歌」「黄金律と世界の閉鎖」などの興味深いテーマが次から次へ、まるでマンダラのように語られました。
特に印象的だったのは、中沢新一氏の発言です。中沢氏は「capital」を「資本」と訳した西周の先見性を讃え、資本の「資」とは「次の貝」と書く。つまり、貨幣としての貝が増殖することが資本であると述べました。一方で「富」という言葉があります。これは「家の中に発酵するものがあって、微生物がモノを生成させること」という意味です。「資」とは死んだ貝であり、「富」とは生きた酵母菌なのです。死んだ貝としての「資」は国境も性別も一切を超越しますが、酵母菌による生成は閉じます。わたしはこの中沢発言を聴いて、「死によって、あらゆるものが超えられる」「死=超越性」ではないかと思いました。


鎌田東二氏による総括

「リンゴの唄」のエピソードが素晴らしかった!



17時50分からは「総括」として、鎌田東二(こころの未来研究センター教授)氏が登壇され、戦後最初の流行歌である「リンゴの唄」とアニミズムを関連づけた素晴らしいお話をされました。すべての日本人の「こころ」の琴線に触れるようなお話でした。鎌田氏の総括が終わると、満員の会場から割れるような拍手が起こり、義兄弟であるわたしも感動しました。わたしは「Tonyさん、やったね!」と思いました。
最後は京都大学の理事・副学長の湊長博氏が「閉会の辞」を述べられました。


中沢新一先生と

広井良典先生と

カール・ベッカー先生と

鎌田東二先生・京都大学の山極壽一総長と



18時15分からは懇親会も開催され、わたしも参加させていただきました。
日本を代表する「知」のフロントランナーのみなさんと意見交換させていただきました。
日本におけるアカデミズムの聖地である京都大学が総力をあげて開催したシンポジウムの余韻に浸りながら、さまざまな先生方と意見交換をさせていただき、非常に有意義な一日となりました。翌日は東京に向かいます。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2015年9月14日 佐久間庸和