たった一字に深い意味を秘めている文字は、世界でも漢字だけです。
そこには、人のこころを豊かにする言霊が宿っています。
その意味を知れば、さらに、こころは豊かになるでしょう。
今回ご紹介するハートフル・キーワードは、「愉」です。



わたしは、マネジメントの核心とは、いかに人生を心ゆたかに過ごすかということと密接に関わっていると思っています。そして、それにはいかに仕事を愉しむかが大事なポイントになります。あなたが1日何時間ぐらい職場にいるか、人生の時間のうちでどれくらい仕事に費やしているかを考えれば、仕事を愉しまなかったら、これは明らかに不幸です。よく会社や仕事に対してグチばかり言う人がいますが、こういう人は例外なく仕事ができません。なぜなら、「成功した人間」にグチが多い人は1人としていないからです。



グチが多いのは、成功していない、評価されていないことへの不満が表われているだけなのです。堀場製作所社長の堀場雅夫氏は、グチをこぼすような人間は絶対に評価されないと言います。堀場氏によれば、そのような人はグチをこぼすことが「趣味」になってしまっているというのです。上司に見る目がないとグチり、給料が安いとグチり、夏の暑さをグチり、冬の寒さをグチる。現実を甘受する謙虚さもなければ、建設的な反省もない。これでは仕事ができるわけがないというわけですね。



たしかにストレスの影響は大きいでしょう。
では、なぜストレスがたまるのでしょうか。ストレス解消法という対症療法ではなく、ストレスがたまる根本原因を考える必要があります。そのヒントは、人間は遊びではストレスはたまらないということにあります。ゴルフにしろ、釣りにしろ、旅行にしろ、遊びでやっていることにストレスは無縁です。自分の意思で、自分が好きでやっているからです。



ならば、仕事も好きになれば、ストレスはたまらないことになります。
そして、『論語』に「之(これ)を知る者は之を好む者に如かず。之を好む者は之を楽しむ者に如かず」とあるように、仕事を愉しむことができれば、ストレスがたまらないどころか、愉しいから仕事のレベルもアップして、人生そのものがバラ色になるのです。
こんなうまい話を逃す手はないではありませんか!



堀場氏は、「人間死ぬときにダイヤモンドやお札をたくさん棺桶に入れていっても、何もいいことないやないか」と語り、「おもしろおかしく」をテーマにしています。ソニー井深大氏は「愉快なる工場」をめざすと言いました。ともに日本が戦争に負けて、食べるものもない時代に起こした会社です。人の心も荒んでいたはずですが、そこには爽快なポジティブ・シンキングがありました。なお、「愉」については、『龍馬とカエサル』(三五館)に詳しく書きました。


龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2015年9月6日 佐久間庸和